26親の気持ち
そんな二人を見ながら フィーさんが笑う
水を継ぎ分けて 僕に渡してくれる
そして 少し考えてから 話し始めた
トロワも その隣で両手でコップを持って話を聞く
「ヒデ トロワ あなた方はまだ子供だから
わからないと思うけれど
親はね 子供が元気でいてくれたらいいのよ
いつでも 子供の笑顔を見たいと思っているの
子供の笑顔を見たら幸せだなあって思えるのよ
私はつい 過保護になって 子供たちを笑顔にできないんだけれど」
ここで トロワを見ると トロワがコクコクと頷いて
フィーさんが肩をすくめる そして 続ける
「子供は 何もしてくれなくていいの
親に誇りに思ってほしい
なんて考えなくていいのよ
まあ 私も子供の立場としては 私の親に自慢に思ってほしいなって
思ったりはするけどね」
レイさんとアルも コップを持ってフィーさんの話を聞いている
「私の子供はいるだけで凄いんだもの その存在だけでいいの
どんなに凄いのかは
私とレイだけが分かっていれば充分なの
アルは そのままでいいのよ
片目だって アルが笑ってくれればいい
火なんて作れなくったて 構わないのよ」
フィーさんがレイさんに呼びかける
「レイだって同じ気持ちでしょ?
レイがこの集落のために尽くしているのだって
本当は 子供たちの為よ
私たちが居なくなってからも この平和な生活が続くように
食べるのに困ったり 住む所や着る物に困る者がいない生活を
皆ができるようにって 頑張っているのは あなたたちの為よ」
レイさんが
「まあ 集落の皆には内緒だけどな」
っと言いながらニヤリと笑う
フィーさんが 僕の方を真っすぐに見て言う
「ヒデのご両親だって きっとそう思っているわよ
ヒデは 来たときよりも よく笑うし 子供らしくなったわ
子供としての役割
しっかりやり遂げたわよ
ヒデの笑顔を見たら ご両親はとっても喜ぶと思うわよ
もう ヒデは頑張らなくていいのよ
そのままで 十分よ」
フィーさんが僕の頭を撫でてくれて
僕の眼から涙があふれて
トロワが慌てて ハンカチを渡してくれて
涙を拭く僕の頭をフィーさんが撫で続けて
アルがコップを持って僕の隣に座った
「ありがと う ご ざい ます
フィーさ ん」
それだけやっと絞り出して
泣き続ける
ありがとうございます フィーさん
僕が子供らしくなったのは
笑えるようになったのは
子供の身体になったからだけでも
アルと過ごしたからだけでもなく
僕まで しっかりフィーさんに甘やかされたからだと
今 気が付いた
ありがとうございます フィーさん
そっかあ
僕の両親も
僕が生きているだけで喜んでいてくれたんだ
そっかあ
世界中の人が 僕の事を「かわいそう」って思っても
父さんと母さんは
そこにいるだけでいいよって思ってくれてたんだ
そっかあ
僕に居てほしいから
僕が笑えるように
出来る限りのことを全部やってくれたんだね
そっかあ
そっかあ
そっかあ
僕は いるだけで価値があったんだ
一度 大人になった僕だから
子供を経験した僕だから
大人の気持ちも 子供の気持ちも分るって思ってたけど
親になったことは無かったから
親の気持ちは分からなかった
ハザマハーラに来てよかった
フィーさんに会えてよかった
久しぶりに盛大に泣いた




