2.紅葉の木の下で
僕たちは 今 紅葉の木の根元のベンチに隣り合って座っている
ハンカチ(よかったポケットに入っていて)で涙を拭いて顔を
あげると 目の前には畑 その下にさっきまでいた広場が見える
深く息をしたら アルが僕の方に意識を向けてきたから
「もう大丈夫 ありがとう
改めまして 僕はヒデって言います よろしくお願いします」
っと手を差し出したら アルもふざけたのか同じ調子で
「ボクはアルっていいます よろしくおねがいします」
と言うので 握手しながら 吹きだしちゃったよ
さっきまで 俺って言ってたのに?
アルは前髪が長すぎて目を合わせるのは難しいけれど
父親に似て穏やかな顔つきをしている
僕を引いていっただけあって 体つきもしっかりしているけれど
父親のような明るさは感じられない
「家族のコトとか 故郷のコトとか 話してあげられたらいいんだけど
今 思い出せないんだ
でも あの使者は 僕の父さんに雰囲気が似ている気がする」
と言ったら アルは「あの使者は無表情すぎてちょっと苦手」だって
僕はあの人のコト好きになっていたから ちょっとガッカリしたけれど
それが通じたのか
「苦手なだけだからな 嫌いじゃないぞ 旅人は年に何回か来るから 使者も沢山いるんだ
えっと ああ 俺の父さんは 元は「旅人」だったんだぜ その時の使者は
使者? あ ――」
っと言いかけたアルが 言葉を止めて ああ!って顔をする
「ヒデのこと 使者に何も言わずに連れ出しちゃったぞ。。。 ん 戻る?
ヒデ 歩くの久しぶりなんだろ? 足 大丈夫か? 戻れそうか?
それとも 俺だけ行ってこようか?」
「ああ 僕も行かないと 僕のことだから」
っとあわあわと二人で立ちあがって 道に戻ろうとして アルに押し倒される
僕がグズグズしていたからだ
「ごめん!!!アル!」
「大丈夫 こっちこそ ゴメン」
散らかった記憶から一つ蘇って来たのは 友達に腕を引っ張られたら
脱臼した記憶 痛かったなあ ――
あれ以来 友達が僕の腕を引っ張るってこと無くなったから
友達に助け起こされるって ちょっと憧れていたなあ
あ。。。涙腺が。。。
慌てて うつむいて 服についた草や泥を落とすことにする
「アル!」
大きな声が飛んできた
レイさんが女の子と一緒にこっちに向かって来ている
「ごめんなさい」
ああ、だまって 来てしまったことを怒っているんだっと
二人で目くばせしあって 声をそろえて謝る
声がそろったことがなんだか嬉しくて鼻がムズムズする
ヤバイ また泣けてくる 泣きすぎですよ 僕
勝手に広場を抜け出してしまったけれど
僕もアルも何か言われることは無く
使者も また迎えに来ると伝言を残して
行ってしまったらしい
質実剛健? 必要なコトのみするタイプの人なんだろうか?
やっぱり僕の父親に似ている
「お前に悪気がないのは分かるけれど その早とちりと
怒りっぽい性格はなんとかしないとね」
レイさんに言われたアルは 顔をそらしている
反抗期か? 微笑ましいし 羨ましい
散らかった記憶の中に反抗期は見当たらない
ちょとやってみたかったくらいだ 小さいころから身体は弱かったから
アルくらいの歳のころには なんとなく一人では生きていけない予感がしていた
その予感は当たる んだけどさ
レイさんが女の子を紹介してくれる
「アルとは紹介しあったのかな? この子はトロワ
アルより2つ年下だよ」
カールした黒い髪を後ろで一つにまとめてスッキリと顔を出した女の子 トロワは僕の顔をしっかり見てからピョコンと頭を下げた
家に向かって みんなで歩き出した
「ヒデの荷物がきっと届いているよ 旅人に必要なものは使者が用意してくれるからね」
赤い屋根 白い壁 窓がたくさんある二階建ての家 が見えてきた
「あれが うちよ!!」
トロワの声に 自然と4人が速足になる
「ただいま!」
トロワが家に駆けこんで声をあげる
「おかえりなさい いらっしゃい!」
と言いながら出てきた女性は アルとトロワの母親なんだろうなと思っていると
「うちの母さんです フィーって言うの」
トロワが紹介してくれる
フィーさんが 少し苦笑して
「よろしくね さあ 上がってちょうだい」
と促してくれるので 靴をぬいで上がる
「お邪魔します」
で いいんだろうな と思いながら その挨拶を口にする
本当に 故郷によく似ている生活様式のようだ
紅葉の木の下から見た景色も 知っている景色のようで違和感がない
僕はあまり 故郷の「生」の世界を知らないけれど
ここは まるで知っている場所の様だ
散らかった記憶を また 一つ一つキチンとタグをつけて引き出しにしまって
行ったら こことそっくりな景色をどこで見たのかを
思い出せそうな気がするんだけどな
「ヒデ ヒデ? お茶をどうぞ」
声をかけられて 我に返る
思い出す事に夢中になって 周りが見えなくなっていたらしい
いつの間にか 椅子に座ってぼーっとしていたらしい。。。
変な子供だと思われちゃうね




