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閑話2 長兄の古い記憶

ハザマハーラの外へ修行中の長兄のお話



あれは 俺が7歳くらいの時の事だ 


俺とアルはちょくちょく じいちゃん()で 正確には

じいちゃんちの畑で過ごしていた


揃いの(というか まあ 集落中がお揃いと言えばお揃いだけど)

グレーのシャツに黒のつりずぼんで 麦わら帽子をかぶって 

最初は仲良く手伝っていたのだろうが そのうちに

二人が気に入っている大きなバケツを取り合ってのケンカになった


力では叶わないアルが 俺の頬をひっかいたから 

俺はカッとなった


「アルなんて 片目のくせに!!!!」


言ってから しまったと思った 

これは絶対に 

絶対に言ってはいけない言葉だと分っていたのに

言ってしまった

焦った俺は それを打ち消すように慌てて


「のうりょくだって 無いくせに!!!」


っと さらに追い打ちをかけるようなことを言ってしまった



バケツを抱え込んで はっとしたように俺の顔を一度見たアルは

そのまま 声を殺して泣き出した

「く~」


という かすかな声を聞きながら 俺はどうしていい分らずに逃げ出した

途中で麦わら帽子を落としたから 慌てて拾って でも もう被ることはなく

じいちゃんちの物置まで逃げた


かくれんぼの時に使う物置の隅のよくわからない物の影に隠れて

俺は怒っていた

アルが悪い っと思った アルがひっかいたのに

アルのせいで叱られるんだ


でも


いつもならわーんと大声で泣くアルの声を立てないで泣く姿を

思い出して


自分がしたことがアルを傷つけたのだとわかって


自分が絶対に言ってはいけない言葉を

それも ふたつも言ってしまったのだと思うと

どうしていいかわからなかった


どうしていいのわからないから 泣きだした

泣いているうちに寝てしまったらしい



ばあちゃんに揺り起こされた

ふわりとしたスカートのばあちゃんは 俺の顔を覗き込んで


「アルがひっかいたんだって? かわいそうに 見せてごらん」

ばあちゃんは俺の頬をなぜて 慰めてくれた



アルは俺に言われたことを じいちゃんにも ばあちゃんにも言っていなかった

俺は怒られることは無かった



アルは俺のしたことを言いつけなかった 

それとも 

俺の言った事を 自分の口で言うことさえ 嫌だったのか



とにかく 俺はまだ学校へも行っていない小さい弟をひどく傷つけたのだ



俺はその時に決めたんだ

絶対に 絶対に もうアルを傷つけない あんな泣き方はさせない


俺はもちろん 他の誰にも させない




こうしてアルは 周りから遮断されてしまうのでした。


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