表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/36

24アルからのプレゼント 


「あのさあ えっとさあ 故郷でいろいろ失くしてきたヒデに  

 見合わないかもしれないけど いろいろ失ってもがんばってきたからヒデに

 えっと 足りないけど その ヒデがなくした代わりが俺って駄目かな?

 俺がもっとここで楽しい事 沢山させてやる 逆上がりだってこれからだし

 牛だって見に行こう もっと暑くなったら泉に行こう それからえっと―」


思いがけない提案に 嬉しくて 僕は盛大に泣き出した

涙を拭きながらバランスをとる自信はないから もう

涙が流れるままに 泣いた


アルが アルをくれるって言うんだよ

欲しかったものはほとんど手に入ったと思ったハザマハーラでの

最高 最大のプレゼントの提案!


アルが慌てて 僕の後ろにギュっと入り込んで 落ちないように

僕をギュっと抱きしめて言葉を続けた


「俺だけじゃあ だめか? でも ずっと一緒に居ようぜ」



僕は昨日 故郷でのあの僕だったから ここでのこんな幸せがあるって

すごく満足して眠ったのに

さらに 故郷で頑張ったご褒美に アルまで貰えるなんて

あの年月が全部 報われて おつりまで来るよ ありがとう 


今のこの瞬間に感謝

この瞬間を与えてくれた全てに感謝

ありがとう ありがとう ありがとう


「アル ありがとう 

 故郷での僕だって 決して不幸ではなかったんだよ 

 不自由だなあ 不便だなあって思うことは

 沢山あって やりたい事も沢山あったけれど 

 幸せですか?って聞かれたら はい って

 答えられるくらい幸せだったんだよ 

 でも 友達はもう手に入らないと思っていた 

 うーん 違うな 友達がいなかったわけじゃない

 けど 遠慮なく話ができる友達 

 自分を差し出してくれるような友達はアルしかいない

 ありがとう すごく嬉しい」


アルが僕をギュっとして 

「ヒデはすごく大事な友達」

って小さい声で言ってから そっと立って

一つ上の枝に移ってその枝に寝そべる

ホントにアルはおサルさんだね


僕とアルでは身長差があるけれど アルが木に寝そべったから

視線がとても近くなる


「昨日 母さんに叱られなくて残念だったな」

アルがニッと笑って言う 

「え?わかっちゃってた」

「うん 俺はよかったって思ってヒデの方見たら

 ヒデは 残念って顔してたからなあ

 次は 確実に怒られるようなコトしようぜ

 でも あんまり迷惑かけるのはダメだしなあ

 母さんが叱らなくても 多分 トロワが怒り狂う」


あートロワが怖い顏するのが目に浮かぶようだ

アルに一番厳しいのはトロワかもね

寝そべったまま 何やら考えているアルを眺める

あー幸せ

あー平和

あー涙が出る


感情や記憶のほとんどがもう整理された気がする

今 思い出せない記憶はもう不要なんだ

片付けや 整理には捨てる事も大事

(あ!これももアルに伝える事かな アルの部屋 散らかし放題だもんな)

タグもちゃんと付いた

だから 

もう 道草は終わりなんだろうな 多分


もっと ここに居たいけど 

アルに会えたから気持ちが整理できて

出発できる

でも

アルに会えたから 出発したくない


僕は旅を続けるべきなんだろうな

ずっと 道草していたいけど

ハーラへ行かないとね


あーまた 涙が出る

涙に色があったら さっきと違う色の涙



滂沱の涙ってこれだな

涙くらい拭けるように 木登り上手くなりたいなあ

ふと 我に返る


「なあ ヒデってば 全然聞いてないだろ」

っと アルが呆れたような怒ったような声で言っていた


「これからの計画だってば 暑くなったら泉に行こうとかさあ

 秋になったら稲刈りだってあるし 庭の果物だって次々に実って来るぜ」


アルからの提案は 本当に素敵だ でも 

僕は 木から落ちないように用心しながらシャツの袖で涙を拭う

チビたちに褒められた かわいい笑顔になっているといいなと思いながら

笑顔を作って言う


「本当にありがとう でも ずっと一緒に楽しむことは出来ないかなあ」


アルがとがった声で言う

「ヒデは 使者が来たら 行くのか? 行きたいの?」


行きたいわけじゃない 行かなくちゃなんないんだよって

言わなくちゃ と思うのに言葉が出ないで 首を振った

また涙が出てきたから 拭かなくちゃっと思った その時に

アルが僕の枝に飛び移ってきて 突然 しなった枝の揺れに

僕はどうしていいのかわからなくて アルにしがみついて

一緒に落ちた


僕がアルと引きずり落したのに 

下に落ちたときは アルの上に僕が乗っていた

慌ててアルの上から下りようとしたのに アルが僕をギュっと抱きしめる

手と目が 「大丈夫?」って言っている


「大丈夫だよ アルが守ってくれたね」

それから謝る

「ごめんね アル」


ごめんね 下敷きにしちゃって 背中痛いよね?


ごめんね アル 行かないって言えないで


僕は旅人だから … 旅をしない旅人なんていないでしょ?


本当にごめんね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ