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23牧草地の木の上で語り合う二人

家の中は真っ暗だからと アルは部屋までついて来てくれて

その上 布団を敷くのも手伝ってくれた


暗闇で緊張していたのか 

布団の上に座ってやっとほっとできた


ふうっと息を吐く僕に アルがちょっと笑った


「んじゃ オヤスミ  あ 一人だと怖いか?」

「アルの灯があるから大丈夫だよ 安心できる

 ねえ アル ハトは凄いけど アルも凄いよ」

「何が?」

「アルは 世界を知ろうと動き出しているでしょ?」

「え?」

「アルは 世界を知らなかったってことに気が付いたでしょ

 学校の生徒のことを知らなかったって気づいて 気づこうって

 思って 行動しているでしょ これってすごい事なんだよ

 僕の友達のアルって凄いんだよ」


アルは 返事に困ったように俯いて小さい声でゴニョゴヨ言って部屋を出ていく

「気づいてくれるヒデが凄い というか 気づかれて 恥ずかしい…」

恥ずかしがることじゃないのにね



***


布団の中で 頬杖をついてアルの火を見つめながら

なんか僕 今すごく幸せだなあってしみじみと思う

こんな幸せがあるなんて思わなかったよ


それから 故郷の僕の両親の事を思い出す

僕の為に本当に苦労して 僕の為に何でもしてくれた

歩けない僕の為に あの町で一番最初のエレベーターを

つけてくれた 町役場よりも先だったんだって後で聞いたよ


ずいぶん贅沢だと 申し訳ないって思っちゃったけど 

それよりも 

もっと感謝して それを両親に伝えればよかった

僕の事をそんなに大事にしてくれる両親をもっと自慢に

思えばよかったなあ っと今さらながら残念に思う

ごめんなさいっとは思わないでおこう


多分 故郷で生まれた あの僕だったから 今の僕が

あって こんなに幸せなんだと思うから


記憶の整理をして 気持ちを思い出すと

故郷での僕ってけっこう大変だったな と思うけど

だから 今の幸せがあるって思えるから

故郷で出会った人たちに感謝する


ふわふわする気持ちを抱いて

眠りについた


***


翌朝は快晴だった


いつものように窓を押し開けて 集落の方へ目を向ける

昨日は集落中全体が早く眠りについたのだろう

朝から時間から集落もアルの家族も活気づいている気がする

月無ってある意味 強制リセットだよね

寝るしかないんだから 


人間の体にとってはいいのかもしれないな



アルが 牧草地の向こうの灯ろうが消えているか確認しに行く

というから 一緒に家を出る


朝まで火が灯っていたことは今まで一度もないけれど 

アルが灯すようになる以前からの決まりだという

やっぱり 森に近いし 人が通らないから念のため

なんだろうね


いつも通りに火が消えていることを確認して 

牧草地沿いの道を歩いていく いつもの木が見えてきた時に


「木登り するか?」

アルが言ってくれて 草地の木で木登りに再挑戦することにした


靴を脱いで アルにお尻を持ち上げてもらって この前の枝まで行きつけた

もう ここは僕の枝って名付けたい!

枝にまたがって 安定する場所を探しながら幹に寄りかかる

あ、ここいいなあ ずっと座っていられそう 

僕 座っているのならプロだよ 故郷では一日12時間くらい座ってたからね


アルは一つ上の枝に一度登って そこから 上手に僕の隣に下りてきて

枝にまたがって座る

アルはおサルさんみたいだね 一番上まで登ったこともあるんだろうな


木を見上げてアルに聞く

「ねえ アル 練習したら この木のてっぺんまで登れるかな?」


アルが答える

「ヒデは細すぎるんだよ もうちょっと筋肉つけないとなあ。。。

 逆上がりだって筋肉つけたら 出来るようになると思うぜ」


「うん 筋肉つけたらできるようになるよね 頑張ろう」



ふと 一つの風景を思い出して 思い出したままにアルに語る

「ねえ アル 自分でなんともできないことを 言われるのって辛いよね

 両親が泣いているのを見たことがあるんだ

 今の僕より もうちょっと小さいころ 大きな病院へ行った後だったなあ 

 行く前は 多分 両親も期待していたんだと思う 

 原因が分かればもっと元気な子に なるんじゃないかって でも 分かったのは

 どんどん悪くなるってこと」


昨日 あれほど 今の幸せは過去があるからって思ったのに

やっぱり 辛くなって 泣きそうになる

アルが初めて火を見せてくれた夜のこと 

僕がレイさんを責めた夜のことを思い出しながら言う


 「”ごめんね”って言われたんだ 謝られても どうにもならないのにね」


アルが言う

「俺の父さんや母さんも言うんだよ

 ちゃんと眼を二つあげられなくてごめんねって

 俺こそゴメンって思うんだ こんな風に生まれちゃって 謝らせて ごめんって」


アルと僕は同じ気持ちを持っている 分かっていたから レイさんとあんな話をした


「ねえ アル 君も僕も 親に それから周りの人にゴメンナサイって思う必要は

 無いんだよね

 ゴメンナサイ じゃなくて 言う言葉はありがとう なんじゃないかな

 しかも アルはあんなにきれいな火が出せるんだから ゴメンナサイって

 言う必要も 言われる必要もないんだからね」


アルの顔をしっかり見ながら言う 

前髪をどけてあげたいけれど 木の上で手を動かすなんてまだ出来ないから

視線に力を籠める


それから 木を見上げて 空の一番遠くまで視線を飛ばして言う


「ねえ アル ここは いいよね  すごく平等だよ 身体の足りないところを  

 能力で補ってくれるんだよ 僕がここに生まれていたら すごい能力者

 になってそうじゃない?少しずつ失われていく身体の機能に対して 使える

 能力がどんどん増えて 空の一番遠くまで飛べるようになったかもしれない

 そしたら 身体の機能が失われるのが楽しみに なったかも」


これは ほとんど冗談だけど ちょっとだけ本気

だって 魔法使いになれたかもしれないんだよ?


手足が使えなくても 空中を飛んで移動したり 

視線でも物を動かしたりできたかもしれないよね



小さいころって一日が長くて濃かったなあって思います

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