21スピンドルっと言えば眠り姫ですよね?
月無の夜は 少しでも明るいテラスで夕食を食べる
小さい焚火を作って それを囲むように座る
焚火の上では シチューが温められている
濡れた服は着替えたけれど 髪が濡れたままの僕には
焚火の熱さが気持ちいい
数日に一度の焚火は 慣れているはずのアルの家族も
いつもより寛いだ雰囲気だ
慣れていない。。。というか 初めて焚火を体験する
焚火の明るさも 暖かさも 匂いも 感じる事が出来る
沢山本を読んだけれど 当てはまる言葉が見つからない
泣こうか?笑おうか?
僕の心の中は感動の大嵐だ
「アル 月無の灯ろうは全部 灯してきたのかい?」
レイさんの確認にアルが頷いて答える
「月無の夜は いつも これを確認してから食事になるのよ」
小声でトロワが教えてくれる
僕は あまり家族で食事をした思い出が無い
朝から寝るまで 同じ机の前に居て 三食をそこで
食べていたから
アルの家は朝も夜も家族で一緒に食べる
でも 想像していたような「家族団らん」とは違う
アルは話しかけられれば答えるけれど 自分から
話をすることはなくて 想像したことしかないけど
「反抗期の子供のいるご家庭」の風景なのかな?
話のきっかけを作ってくれるのは大概トロワだ
「ヒデの故郷にも糸紡ぎはあるけれど
ヒデは今日 糸紡ぎを初めて見たんだって」
僕が応える
「本で見たことはあったけど やってみると 面白いですね
スピンドルも 眠り姫の話でしか知りませんでした」
「眠り姫ってお話があるの?」
「どんなお話?」
フィーさんとトロワが聞いてきた
女性はどこの世界でもお姫様に興味があるのかな?
どんな話だったかな? 思い出しながら話をする
「えーと たしか ある国でお姫様が生まれて
誕生会をするけれど その時に呼ばれていない魔女が
呪いをかけるんです 15歳の時にこの姫はスピンドルに
さされて死ぬ って。
それで他の魔女が 死ぬことはないけれど100年眠る
って呪いに変更するんです」
「ふーん 呪いは消せないから上書きで呪いをかけるのね」
トロワは呪いにも興味があるのかな?
「王様はその呪いが成就しないように 国中からスピンドルを
隠してしまうんだけど
15歳になった時に 姫は魔女が糸紬をしているのを見て
見たことがない道具に 興味をもって近づく そして
スピンドルに刺されて100年眠る事に なる って話かな?
多分」
この話 エンディングがいろいろあって
王子の母に姫が食べられる とか 食事中に相応しい話題でも無いし
けっこう怖いのを思い出したから これで終わりにする
尻切れトンボの終わり方に レイさんが思わず呟いた
「それで終わり?」
「その後の話はいろいろとあるんですけど…」
きまり悪げな僕をフォローしようと思ったのかアルとトロワが口を開いた
「この話って 危険を遠ざけたら
もっと危険になるって教訓なんじゃないか?」
「そうよね ピンドル隠さなければよかったのかしら?」
「スピンドル隠さないで いっそ 紡ぎ方まで教えてやれば
よかったんだよ」
そういう話だったかな?
と僕は思ったけれど なぜかフィーさんが
「そうなの? 遠ざけたらいけないの?」
っと 何か考えるようにして言って
焚火の上のシチューをよそい始めたので
眠り姫とスピンドルの話題は終わった
焚火が明るく感じるようになった頃 食事が終わった
焚火で温めたシチューは とっても美味しくて
僕はお代わりまでした
故郷では 小食だと心配されていたけれど ここにきてからは
ずいぶん食べるようになったと自分でも思う
レイさんが カンテラをいくつか持ってくる
今晩は それぞれがカンテラを持って過ごすらしい
アルが
「後で ヒデと紅葉の所に行きたいんだけど いいですか?」
っとレイさんに言うと レイさんは もう二つカンテラを
持ってきてくれた
「あ あれ 一番いいヤツ」
っとアルが嬉しそうにつぶやく
焚火からロウソクに火を移し
そのロウソクから アルが一番いいヤツと言った 二つのカンテラに
火を灯し
「これを ヒデとアルに」
と言って 僕たちのいる方へ置く
その二つのカンテラを アルと僕でそれぞれ持って
「行ってきます」
っと テラスからそのまま外に出る
太陽はもうすっかり山に隠れてしまったけれど 暗闇 というほどではない
それでも 走り出すのは怖くて 足元に気を付けながらゆっくりと紅葉の木に向かう
さっき灯した灯ろうの明かりが目印の様に輝いている
ナナメウエの娘〜 に眠り姫ネタ投稿します




