1.ここはハザマハーラ
彼らが待っていたのは 僕らだったようだ
大概 髪も眼も黒くて 僕の故郷の人たちと同じようだ
ここは日本のどこかだと言われても信じるだろう
服装も色合いは黒や紺やベージュと地味だが シャツにサスペンダーのズボンは、
どちらかと言うと 外国の開拓民を思いださせる
大人達が使者と僕の周りを取り囲むように集まり僕の頭ごしに会話が始まる
いつも座って生活していたから 立っている人の顔を見上げるのは慣れていた けれど 僕が立っていると思うと 今 本当に子供になっているんだなあっと実感する
手も足も小さくて細いけれど 自由に動いて 本当に調子がいい手足だと意味もなく手を開いたり閉じたりしては ほおが緩むのを止められない
使者の隣で話の中心になっている男性
大きくてがっちりした体つきで それだけ見ると怖いけれど 眼が垂れているせいか
顔立ちは穏やかで優しく見える
彼の後ろには 中学生くらいの細身の子供
肩まで届くまっすぐな黒髪と長い前髪に隠れて顏はよく見えないけど 男の子かなあ
長い前髪越しに チラチラと僕の様子を伺っている
「ヒデ 道草の間は ハザマハーラーの長の家で世話になるよ」
使者がつないでいた手を放して そのオジサンの前に僕を押し出す
「俺は ここの長 レイ ここの子供たちからは長と呼ばれているよ
よろしくな」
「こちらこそよろしくお願いします。」
挨拶は大事だ っと父親に言われていたことを思い出す
「ヒデ この子がうちの子でアル ヒデより一つ上の13歳になったところだ
アル ヒデだよ 役割は”子供” だそうだ
あっちにいる子供たちに紹介してやってくれ」
ああ?僕12歳なんですね
その情報初めて知りました
アル 同級生でしょうか? 大きいですね などと思いながら アルに
「よろしくお願いします」と頭を下げる
僕が頭を下げると アルは僕の手を引いて 大人達の輪から出て子供たちが集まっている方へ僕を連れて行ってくれる
握った手の力強さと 引いて歩く速さに男の子だと確信する
子供たちが遊ぶのをやめて 集まってきた
アルの手が冷たい
アルは 集まった子供たちを一瞥して
「旅人のヒデを―― 」
とそこまで言っただけで そこら中の子供が集まってきた
男の子はやっぱりシャツにサスペンダーズボン 女の子は黒や紺のワンピースにエプロン うんやっぱり開拓民っぽい
「ヒデっていうの?」
「旅人でしょ?」
「旅人の子供だよね?」
「何しに来たの?」
「ヒデの前いたところってどんなところ?」
なんか、、、懐かしい、、、、僕 小学校は行けたんだよなあ
途中で転校したときがこんな雰囲気だったよなあ
しみじみしていたから 涙腺が緩んできた 涙が盛り上がるのが分かる
恥ずかしい。。。。
アルが 僕をかばうよう 子供たちと僕の間に立つ
「うちで 世話するんだからな」
と あっけにとられる子供たちにかまわず 僕の手を引いて歩き出した
速足でどんどん歩く
使者とはゆっくり歩いていたけれど 速足も気持ちいい
ちょっと躓きかけたけれど転ぶことなく立て直す
おお~!すごいぞ僕
自分でも頬を緩んでいるのが分かる 同時になぜか涙も流れてくる
嬉しくて泣いてるのか 驚いて泣いてるのか 自分でもわからない
ちょっと立ち止まりたいけど それももったいないような気がするから
つながれてない方の手で涙をぬぐいながら ひっぱられるようにして歩いていく
アルが立ち止まった
大きな紅葉の木 大木って言っていいと思う その下のベンチに座るように
アルに言われて腰掛ける
さっきの広場が見える もう子供たちは僕たちの事なんて忘れたのか
追いかけっこをしている
「ごめん うまく紹介できなくて って お前?なんで泣いてるんだ?
何か 言われたか?」
「大丈夫だよ 泣いてないよ」
「誤魔化すなよ 目の周り 赤いぞ?」
アルは左手で前髪を書き上げて僕の顔を覗き込んできた
レイさんと同じ ちょっと垂れた優しそうな眼が 片目だけ僕の眼と合う
あ。。。誤解しちゃってるよね 僕が何か言われて泣かされたとか
傷つけられたとか思われてる?
ここに来て起きた瞬間からずっと泣き続けているような気がする
でも 今の涙は 歩いていたことの驚きと感動の涙だよな
どうやってこの状況を説明しようか?
「ここに来てから 嬉しいことばっかりで 泣いてばかりだったんだ
僕 ここに来る前は 歩くことも 自由に手を動かすこともできなくて。。。歩くのなんてホントに久しぶりだし 家から外に出るなんてこともなかったんだ。
だから 自分で歩けるってだけで嬉しくて泣いちゃって ここに来た
ばっかの時なんて 手が動くっ てだけでもう大感動しちゃったくらい
自分でも嫌なんだけど 涙が抑えられないんだ
さっきも 同じ年ごろの子供たちと話ができるってことに なんだか 感動しちゃったみたいで だから 君に誤解させちゃって ごめんね」
慌てたからか 早口になったうえに言わなくてもいいコトまで言ってしまった
簡単に言えば「目が赤いのは、、君にあう前から 泣いてばっかりいたからです すいません 泣き虫で」ってことなんだけど。。。ずいぶん 説明っぽく
言い訳じみた事を言ってしまった 。。。子供っぽい自分にあきれながら
やっぱり子供になってる事にまた納得する
あんまり 支離滅裂な説明じみたセリフに アルは驚いたんだろう
目を丸くして 言った
「歩くのが久しぶりなのか?ちょっと休むか?あ~家に急いで帰った方が
よかった?疲れてないか?」
僕の言葉がどのくらい伝わったかわからないけれど とりあえず 僕が病弱らしい という解釈をしたらしい
「アリガト」
僕の「前」の事よりも 「今」疲れていないか を気にしてくれるなんて?
なんだか嬉しい 。。。また 泣いてしまうところだった
ここで涙なんて流したら 目の前にいる男の子はどんな反応をしてくれるん
だろうか?僕の為に慌ててくれるのかな?
でも 「泣き虫」認定はちょっとされたくないなあ
だって 故郷では 絶対に泣かなかった それが親の為だったし
誰にも邪魔されない 唯一最後まで自由でいられる僕自身の精神を
守ることだったから。。。
親?故郷?
だんだん 大人だったころ 故郷の記憶が薄れてきている?
整理してあった記憶が ごちゃごちゃになって投げ出されているような?
探すしだすのが大変で
思い出そうとすると 眠くなるような。。。?
記憶の整理は得意だったはずなんだけど。。。
2000字くらいを1話で語っていきたいと思っています




