12生まれて初めての逆上がりは。。。
今日は ちゃんとアルの様子を見ようと決めた
「戦に勝つには敵を知れ」だよね アルは敵じゃないけどさ
僕は靴を履くのが楽しい
かかとを地面にトントンと打ち付けて 靴のかかととしっかり合わせて
丁寧にヒモを編み上げていくのが嬉しい
故郷では 履いたことがなかったんだよね
靴を履いている横にトワレが来て聞いた
「今日も学校へ行くの?」
「うん?毎日行くんじゃないの?」
「うーん 上の兄さんはアル兄さんは学校で嫌な思いをするなら行かなくてもいいって言ってたから。。。アル兄さんはいかないこともあって。。。」
「トワレはどう思うの?」
「私は学校 楽しいから アル兄さんも一緒に行きたいと思うんだけど。。。
「そうかあ わかったよ 今日は僕も行きたいから行くよ」
「私は 牧場の子たちと行くから 先に行くね」
トワレの後ろ姿を見送りながら考える
アルの作っている壁は アルだけが作ったものじゃないのかもなあ うーん と考えているとアルがやって来た
「お待たせ!広場で灯ろうみてから行こうぜ」
「僕も言おうと思っていたんだ!」
坂道をを下って 広場の近くの道を入ったところが市場だとか 広場の前の大きな建物が月の女神の神殿だとか教えてもらう
そして ヒデの灯ろうの灯を確認する 大きなロウソクに小さな火が灯っている 小さいけれど綺麗な火
昨日作ってくれた火も綺麗だけど この火もとても綺麗だとアルに告げると なんだか照れていた
学校で黒板に名前を書いて
「ソロバンやってるとこ見に行くか?」
っとアルが聞いてくれたけど 今日はアルの得意な分野を見た方がいいかな?と考えて
「今日こそ 逆上がりが出来るようになりたいから鉄棒」
という 半分は本当だ 昨日の木の上からの景色の様に 逆上がりが出来たら新しい景色が見えるんじゃないかな?
鉄棒のところに行くと もう チビ達が鉄棒に群がっている 昨日 逆上がりが出来るようになった子に披露されて 他の子供たちもやってみたい ということになったらしい
ちょっとだけ 残念だけど アルがチビ達とどう接するのかを見るのもいいかな?っと思うので
「僕は アルが教えているのを見て覚えようかな」
というと
「やってみないとダメだと思うけどなあ?でも ヒデが楽しいならいいぜ」
って アルってあまり人に無理強いしないんだよね アルの両親もそうだなあ アルが嫌だと言ったら無理強いしないもんね 学校さえそうだったみたいだし うーん いいのかな?
とりあえず アルとチビ達を眺めることにする アルは優しく教えているし チビ達は嬉しそうだし なんだか幸せな気分になるなあ 癒される~ってコレかな?
アルがチビ達を支えたり 言葉で教えたりするのを見ている チビ達も真剣にアルの言葉を聞いている そして アルの言う通りにすると出来るから ますますアルに懐いていく
アル 学校嫌いみたいだったけど むしろ 先生とか向いてるんじゃないの?小さい子好きでしょ?とか思って眺めていたら
「ヒデはやらないの?」
っと チビに言われてしまった。。。。
「アルの言う通りにすればできたよ」
「僕 できた」
「がんばればできる」
「ヒデ がんばれ」
っと チビ達に励まされ 応援され 鉄棒を握って地面を蹴る けれど僕のお腹は鉄棒まで届かない
「おなかとてつぼうをくっつけるんだよ」
「せなかおしてあげよう」
「ぼくも!」
「わたしも!」
っと みんなで背中を押してくれることになった
もう 泣きそう。。。。。もちろん 嬉しくて
涙目で 危ないからダメだよと言ったけれど チビ達は何か勘違いしたらしく どうしても 僕に逆上がりをさせようと真剣だ
「じゃあ 一回だけ手伝ってくれる?」
っと 鉄棒を握って そうっと地面を蹴る僕にチビ達が群がって 背中を押したり 足を引っ張ったり。。。危ないよ~
っと みんなで鉄棒の下で砂だらけになっていた 誰も痛い事にはなっていないけれど あれ?って顔をした 沢山の顔がもう 可笑しくて 可笑しくて
沢山の顔も同じことを思ったらしく 一度 みんなで顏を見合わせたら ぷっと吹き出してゲラゲラと笑った 少し遅れて アルもゲラゲラと笑い出した
笑いって伝染するんだなあ 楽しいなあ 学校って楽しいんだなあ こんなにみんなでゲラゲラ笑って。。これ 昨日もやったやつじゃないか?
「何やってんだ?」
声に振り返ると ツバイともう一人ツバイと似た もうちょっと大きな少年がいた
「ヒデ 逆上がりしたいんだって」
「僕たち手伝おうとしたんだけどさあ」
「ヒデ 重いんだよ」
「落ちたんだよ」
「どさーって」
チビ達が口々に説明して 思い出して?またゲラゲラ笑った
「逆上がり できないのかあ?」
ツバイが僕に聞く まだ笑いが止まらないまま 頷くと アルが起こったような顔をして何か言おうとしたけれど その前に その少年が僕の手を引いて助け起こしてくれた
「ちょっとやってみ」
どうやら 逆上がりを教えてくれるらしい
笑いを引っ込めて 鉄棒を握って 思い切り地面を蹴る でも やっぱりお腹は鉄棒に届かない。。。っと思う間もなく 強引に鉄棒にくっつけさせられて ぐるん と回転する
え? なに? 今の僕 回ったの? え? 目をつぶっちゃったよ
驚いて 顔を手で覆。。。。
「ヒデ! 手を離しちゃダメ」
という声を聞いたのは 落ちてからだった
うわ~バカじゃない僕 でも 逆上がりできた というか させてもらったというか なんか 嬉しい どうしよう 涙出る でも 落ちるなんで よかった顎とか打たなくて いろいろ 考えたら 可笑しくなって 泣きながらゲラゲラと笑った
あっけにとられえたように見ていたチビ達も また ゲラゲラ笑った
しまった!!という顔をしてみていた アルとツバイと手伝ってくれた少年も とうとう つられて笑い出した
ああ楽しい~ でも 笑いすぎて苦しい お腹が痛い