11アルは故郷での僕
今までのお話 すっかり仲良くなったアルは僕に彼の見せたくない姿を見せてくれました 僕にとっては「大したことない」けれど アル自身にとっては… アルの生き辛さの原因が分かりました アルの気持ち僕には良くわかるから 何とかしてあげたいんだけれど…
アルは今 狭い世界の中で一人だけ辛いところに置かれている気がしているんだろう と思う
まだ 子供だもんな 中学生だもんなあ 話はここまでかなあ
アルのお腹の上で ゴロンと体の向きを変えて起き上がる
アルも顏からハンカチをとって起き上がる
「アルの火 本当にいいなあ」
「それ ロウソクがなくなったら勝手に消えるからおいていくよ おやすみ」
アルがそう言って ロウソクを残して部屋を出て行った
大分 短くなったロウソクが ジジジっと音を立て 大きく揺らめく
その炎を見つめながら アルの不安そうな声を思い出す もっと幸せでいていいのに 子供でいていいのに
バっと音がして 火が消えた
一瞬 暗くなったように感じたけれど 窓の方を見れば月の光で十分に明るい
本だって読めそうな明るさ
本。。。そうだ 本 本は僕を救ってくれた
歩いて旅をすることは出来なかったけれど 本を通じて僕は旅していた
日本中 世界中 時代も超えたし 地球以外の異世界にだって行った
その中に 赤い月や月が二つ出る世界 ハザマハーラもあったのかも
しれない
でも ここは本や紙はずいぶん貴重に見える
学校へ持っていくのは石板だし この部屋の本だって多くない
んんん アルにとっての本と 僕にとっての本は違う
赤い月は 綺麗だし明るいけれど ちょっと落ち着かない気分になる
月の光を避けて布団を敷いて 潜り込む
頭の中を整理する
『他人と自分を大事にできれば 助けてもらえる』という言葉を本で読んだことを思い出した アルは僕を大事にしてくれるし 自分の事も大事にできている 少し守りすぎているくらいだ
自分で作った火と同じように 自分の能力も自慢に思っている ただ 視野が狭い これは目が片方だからという意味じゃないけど「視野が狭い」なんて言われたら 落ち込んで悲しんで 怒る
それはアル自身がこだわりすぎているからだ
視野とか視界って言葉は避けた方がいいな
アルを傷つけるかもしれないから アルの世界を広げたい そうしたら 自分の幸せに気が付けるかもしれない
そう思いながら 眼を閉じる
アルは故郷にいたときの僕だ 僕は一度 大人になっている 僕の役割は「子供」だと言われたけれど 子供だからアルに出来る事があるはずだ
自分のたりないものにばかり目が行ってしまって
目が行くから 余計に足りないことが気になって 実はそんなことは気にしていない他の人の目まで気になる 気になるから腹が立つ 腹が立つとますます視野が狭くなる
僕がそうだった
大人になった時に タイムマシンがあって あの頃の僕に会ったら
「もっと 周りをよく見て 俯瞰してみて」
と言ってやりたい と思ったのは 自分が世界の広さに気が付いたからだったな
なんで 世界の広さに気が付いたのだろうか?
本?テレビ?インターネット?
ここには それらは無い うーーーん
アルは僕に似ているけれど 環境が違いすぎるよ
似てるだけ?
僕の壁はあるほどは厚くも 高くもなかった 怒る余裕がなかったのかな 甘える時間もあまりなかったかな
人より時間がかかるから しなければならないことや 知りたい事が沢山あったからね
あーやっぱり まずは世界を広げないとダメだなあ 世界を知りたいって思うにはどうしたらいいのかな?
アルが今 望んでいる事は 普通になりたいってこと 普通になりたいって気持ちわかるよ
僕がここに来て 何度も泣いた、泣くほどうれしいと思った「願うこと」さえしなかった沢山の事は
普通の人には「願う価値」さえない 当たり前の 些細な事だからね
いくつかは 願えばかなったのかな? 友達と温泉に行きたい とか?
願えば叶う というものね
今 願うよ アルの世界が広がることを
明日 学校へ行ったら アルの世界を一緒に見てみよう そんなことを考えながら寝てしまったようだ
毎日 少しずつ。。。




