10.アルの密秘
ご縁を頂きありがとうございます
もう一度 しっかりアルの灯を見たら いろいろな思いで胸がいっぱいになって
涙がこぼれそうになる
僕の顔を見ることなく アルの堅い声が言った
「もっと 驚かせてやろうか?!」
けっこう 今 僕 いっぱいいっぱい ちょっと落ち着かせて欲しくて
「まだ これ以上 驚くことがあるの? ちょっと 待って」
と言ったけど
「待たない いいか? ほら! 見ろ!!」
火の横の良く見える場所でアルが右手を広げる
その上に乗っているのは 目玉??
「な 驚いたろ これ おれの右目な 気持ち悪いだろう」
うつむいたまま 震える声でアルが言う
ああ これか っと 驚くよりも 腑に落ちた
アルの不安 人に近づかない原因
時折 感じる 君と家族との間のぎこちなさ
君が今 僕を試そうとしているのなら
君が安心するのなら
僕は何だってするのに
君が望むなら
僕の両手でこの目を包み込んでキスしてもいい
アルにどう応えようかと思った時に 記憶の中から
一つの風景が沸き上がってきた その微笑ましい風景をアルに教えよう
「ごめん 驚かない」
アルが僕を見る
多分 右目は窪んでいるのだろうが 髪に隠れてよく見えない
「僕の父さんもソレを持ってたんだけどさ 目玉外した父さん見て
ちびっ子が へえ 目玉って外れるんだねえって 感心して
言ってたよ 義眼なんて珍しくもなんともないんだよなあ」
ゆっくりとアルに言う
その時にちびっ子は 「取れるのは歯だけじゃないんだねえ」とも言ったけれど
ハザマハーラに入れ歯がなかったら驚かせるだけだから言わないでおいた
「なんだよ せっかく驚かそうと思ったのに!!」
気が抜けような 安心したような声でアルが言う
アル 大丈夫だよ 僕はアルの事怖がったり 嫌ったりしないよ
心の中で言いながら アルの顔をしっかり見た
「驚かないけど 痛くない? 辛くなかった?」
心は痛くなかったか? 身体は痛くなかったか?
気になるのはそれだけだ
「いつもの顔も 今の顔も僕の友達のアルだから 大好きだよ」
なんて 恥ずかしさをこらえて伝える そして もう一つ
「アルの家族だって アルの事大好きだと思うよ」
アルが泣き出した 仰向けに寝転がって 顔を両手で隠している
「ヒデの泣き虫が 伝染った~」
アルの顔にハンカチをかぶせてやる
僕が泣いている時に アルが隠してくれた時のおかえしだ
じっと顏を見られるのも嫌だろうなあっと思ったから
アルのお腹を枕に寝転がってみる
あ・・・なんか 気持ちいい
こんなの 初めてだ アルがグスって鼻をすするとお腹が動く
重いかな?って思う頃にアルが言った
「体の足りない部分を能力が補ってくれるんだ って言われている
俺は目が片方無い代わりに 火を生み出すことができる」
「うん」
「あの大きな紅葉の木 植えたり 育てたりした人は 両目が見えなくて でも
植物を育てるのがとっても上手だったから 植物を育てる超能力者だったって言われてる
天気をあてる能力のある人もいたらしいし 怪力の人とか 風を操る人とかもいるけど
やっぱり 身体的にどこかかけているんだよな」
「うん」
ちょっと羨ましいと思ってしまった 僕くらい足りない身体だったら どんな超能力が
僕を助けてくれたか―という思考を遮ってアルが言う
「俺の火は 綺麗だろう しかも 人の役にも立っている」
「うん」
「でも 俺は普通がいいんだよ
変な覚悟しなくても 普通に人に顏をさらして生きたいんだよ
父さんや母さんに俺に謝らせたくないんだよ」
アルがまた 大きく息を吸ってすすり泣くのを感じる
あっ そうだ 僕だって アルと同じように 誰よりも普通に憧れていた
身体をよじってアルの顔の方を見るけれど 表情は分からない
「うん 分かる 僕は故郷ではアル以上に普通じゃなかったって自信を
持って言えるからね」
アルの慰めになるかわからないけれど 言ってみる
自分より悪い状態の人を見て 安心したり優越感に浸るようなアルじゃないのに
記憶を拾い出しながら言う
「僕も 普通に生まれたかったって思ったよ
故郷で僕は成長するにつれて身体が動かなくなっていったんだ
もともとも丈夫じゃなかったけど 今の僕たちよりもうちょっと
成長したころから 気が付くと 少し前よりもできない事が増えて
行ったんだ 足を引きずりながらなら歩けたのに
杖を突かないと歩けなくなって その杖も一本じゃあ
足りなくなって。。。。」
「ヒデ ごめん そんな話 したくないよね?」
今は記憶を拾いながら 思い出しながら言葉にしているだけだし
今の僕は 自由な身体を手に入れているから 語ることで心が
痛いとは思わないけれど アルはどうだろう?
「アルが聞きたくないならやめるけど?」
「分からない。。。」
「うん じゃあ 今日はここまでね ただ 僕もだけれど
普通に憧れている 普通じゃない人は アルだけじゃないって
覚えておいてね」
聞きたくない心に 聞きたくない言葉をねじ込まれる事は辛いだけ
だから
今日はもう 終わりにしよう




