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僕と醤油の一斗缶   作者: たまごはん
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第5話 飛び散る醤油と俺の希望

第5話

2日後のことだ。そう、小指をぶつけて頭もぶつけて己の馬鹿さ加減を思い知ったあの朝?昼?から2日だったあとの話だ。私は1つ強い思いを抱いていた。



めっっっっっっっちゃくちゃ邪魔なんですけど‼️ほんとに邪魔!なんでお前いるの?ほんとに邪魔!毎回毎回足ガンガンぶつけるし重いから移動させるのもめんどくさいし、前回表情は人間だけの元ではないとか言ったけどもし表情があるとすればお前の顔を苦悶の顔にしてやる!何が銀の友だ!俺感情不安定すぎじゃね?



そんな俺の名前は深宮司である。ここでも自己紹介を忘れないいい男…じゃなくて!

ほんとにどうしよう。明らかに部屋に違和感をもたらしている。本来醤油の一斗缶なんて大学生の家に絶対無いはずのものだ。違和感を覚えて当然といえば当然なのだが。



とりあえずどうしよう。俺はしばし醤油の一斗缶を見つめた。なんせでかい。そして重い。18キロといえば大したことないように見えるが、片手1本で持つ、しかも取っ手が細くていたい。くい込みまくって鬱血痕つきまくりだ。ダンベルとは訳が違う。



えっ、ほんとにどうしよう。だんだんと後悔の念が強まった。俺は出された食事は絶対に食べきる主義だ。それを他人に強要はしないが、その分自分はその掟を守っているつもりだ。食べ物を粗末にすると化けて出てくる。そんなおばあちゃんの教えか幼少時の脅しみたいなものをしっかり守っているためか、1度もそんな霊は見たことがない。



なんせ18Lあるのだ。水ならまだわかる。9日間で飲み切れはするのだが、醤油となるとそうはいかない。そもそも飲めないからどうしようもない。なにかの料理に使うしか減らす方法はない。



そうだ!最近引っ越してきた友達がいたな!このコロナ禍だ。例年と違いいつ上京してきても何もおかしくはない。そいつにあげるのはどうか?ちょっと聞いてみよう。これで断られたら、ワンチャン飲めるチャレンジでもして減らすしかない。



よっしゃ!醤油欲しいって言ってくれてよかった〜死ぬかと思った〜ていうか死ぬところだった!ワンチャンもクソもあるか!醤油なんて飲もうもんなら多分即死だ!知らんけど。



2リットル欲しいって言ってたな。丁度2リットルのミネラルウォーターのペットボトルが空いたからこれでいいだろう。となれば、早速詰める作業に入るのだが…



ここからは地獄だった。後悔、怒り、不甲斐なさ、それらを含めた様々な感情が自身の体を巡った。なんでこんなことに、ちくしょう。今はこの言葉しか言えない。



まず醤油の一斗缶の栓を開けた。少し特殊な栓だったため悩んだがまぁなんとか開けることが出来た。指を切りはしたが。そこから持ち上げた瞬間だった。ぐぽんっという音と共に醤油が飛び散った。おかしいよな。一斗缶の箱よりも上に醤油の塊が浮いていたんだ。走馬灯なのかよく分からないが、やたらスローモーションに見えた。



飛び散った醤油は言うまでもない。床や家具や寝具に至るまで全て醤油まみれ。慌てて一斗缶を下ろすと「がぉぉんどぷっ」とまた謎の音を出して醤油が再び飛び散った。部屋の中の惨状と言ったら言葉にできない。言葉でしか表せないここで言うのもなんだが、本当にそうなのだ。これがもし血液だったら、2時間サスペンスの始まりだろう。被害者は俺か、自分の中身をこぼされた一斗缶の方なのか。



こぼれた醤油を全て拭き取り、ベットシートも全部洗ってほして、友達に分けようと思ったのがもう1時間前のことだ。どうしてこんなことに。俺はただ、醤油を友達にあげようとしただけなのに。



そうだ!風呂場に持っていこう!あそこなら多少こぼれたとてシャワーで流せばなんとかなる!これだ!勝った!俺が勝者だー!



全然勝ってないわ。むしろもう1回負けた感はある。漏斗を使ってペットボトルに入れようとしたが、上手くコントロールが行かずにかなりこぼれた。心のなかで泣いた。風呂場が醤油で汚れまくっている。俺はこれをリビングでやろうとしていたのが恐ろしく思えた。おそらく、今回の醤油が跳ねた程度では無いだろう。



そうこうしてるうちにようやく、2リットルのペットボトルに醤油を詰め終えた。こんなに達成感を感じたのは久しぶりだ。息も絶え絶え、腕ももう上がらない。たかが醤油を詰め替えるだけでこんなに手間どるとは思ってもみなかった。これも新しい発見だな。



醤油を使うたび一斗缶を持ち上げていたら筋肉も着くだろうな!夢のマッチョも目指せるかもしれない!もし成功したら一斗缶ダイエットとでも名付けよう!そう思いネットを見たら一斗缶の中のものを簡単に取り出せるポンプのようなものがすぐ近くで帰るとの事だった。



静かにスマホを閉じ虚空を見つめしばし考えたあと、先程思いついた一斗缶ダイエットを完全に記憶から屠り、ポンプを買いに出かけた。あぁ、これだから人間は…いや俺か。


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