第1話 小指ぶつけるとまじで痛い
第1話
朝起きたら手が痛かった。いや、手だけではない。右手から右腕、右肩から首に至るまで主に体の右側が異常に痛い。これは筋肉痛というものだろうか。
なぜだ?何故こんなにも、最近は運動なんて一切しない。筋トレなんてもってのほかである。新型コロナウィルスの影響で緊急事態宣言が発生したことをいいことに、毎日ゴロゴロとしている普通の大学2年生だ。
そんな俺がどうして今体の右半分を痛めているのか。朝11時、寝起きの頭を何とか回転させながら、催した尿意を処理しにトイレに立ち上がった。どんよりした雲のおかげで部屋の中が薄暗いが灯りをつけることさえ面倒くさい。
6畳半の狭い一人暮らし用の物件だ。トイレに行くと言っても数歩歩けばユニットバスにたどり着く。たどり着くはずだった。
ガゴンッ!右足の小指に激痛が走る。今までの眠気が全て吹き飛び形容しがたい痛みが全身を駆け巡る。目覚ましにしてはあんまりではないか?どうして体の右側だけにダメージを受けねばならぬのか!軽く興奮状態になり痛みが落ち着いたところで、二度寝を阻止した憎き物体に目を向ける。するとそこには
醤油の一斗缶があった。
私は目を疑った。なぜ我が家に一斗缶があるのだ。しかも醤油だ。いや、この再中身はどうでもいいだろう。問題は、どうしても一斗缶が引きこもり大学生のユニットバスの前にあるのかということだ。
この問題を考えるには、まずはトイレを済ませてからだと英断を下した俺、深宮司は狭いユニットバスでしゃがみ、考える人のようなポーズをとった。そんな俺を軽く凹み銀色の睨みを利かしている醤油の一斗缶を横目に、なぜ一人暮らしの家に一切そぐわない物体が存在しているのかを思い出した。