第三章 Ⅲ
瞬く間に一週間は過ぎ去った。討論会の効果か、一也は注目を集める様になった。その視線も、入学間もなくの頃の様な異物に向けられる冷ややかなものから、様々な興味を込めたものへと。競技会もさることながら、やはり志摩や茉菜の発言によるものなのだろう。もちろんそれらを気にする一也ではなく、何事もなかった様に日々を過ごした。水曜日には学期末考査の結果発表があり、麻寿美は一つ順位を上げ一也は十位をキープ、またしても飛鳥のトップ10入りを阻止した。澄玲は上位三分の一、亜矢も上位三分の二にランクインした。そして終業式がやってきた。
討論会の時と同様、静かに着席した生徒達を前に、演壇に立つ諒平はよく通る声で話し始めた。
「さて、全校生徒の皆さん、今日で早くも一学期が終了します。さて、思い返してみれば今学期は異例な出来事がありました.創立以来初の男子生徒を、途中編入で当校の一員として迎える事となったのです。この件に関しては生徒会選挙候補討論会の席で、現副会長が名演説をぶった様なので重ねる事はしませんが」
言って、下手の方へ視線を送る。視線を送られた志摩は照れた様に頭を下げた。生徒達から笑い声がちらほらと上がる。
「…さて、演説にもあった通り、当校が更に男子生徒を受け入れる様な時代が来た時、共学としての真価が問われる事となるでしょう。B.E.について我々が全てを知っているとは言い難いのが現状で、一人なら例外でも増加してゆけばそれは常態となる訳です。制度にせよ意識にせよ、私達は変化を求められるでしょう。どうか皆さんはより良い方向へと、私達と共に進んで行きましょう。私達教師教官一同は、その為にあらゆる努力を惜しむ事はありません」
一礼すると、拍手が沸き起こる。この様にして、終業式は粛々と進んでいった。
終業式の式次第が一通り終了すると、教師は生徒会に演壇を明け渡した。生徒会選挙の結果発表だった。可奈多が演壇の前に立つ。
「さて、現生徒会会長最後の仕事の時間となりました。これから舞台の壁に、投票結果が表示されます。もし得票数が同一だった場合、籤を引き決するものとします。それでは」
演壇上のコンソールを操作すると、天井から吊り下げられたプロジェクターが光を放つ。壁は赤と青に塗り分けられ、赤には志摩達の、青にはすずな達の名が表示される。それらの下に白抜きの『0』が現れ、カウントアップを開始した。青側の数字が止まっても、赤側はまだ暫くカウントを続け。
「結果は御覧の通り、桐山志摩、千倉茉菜二百二十三票、山下すずな、田中愛香八十一票。よって次期会長、副会長は桐山さん、千倉さんに決しました」
万雷の拍手のなか、可奈多から視線を送られ、二人が演壇に向かって来る。
「当選おめでとう。何か一言をお願いします」
場所を譲られ、志摩は演壇の前に立った。
「えー、まずは支持してくれた皆さん、有難うと言わせてもらいます。新生生徒会は九月上旬から始動しますが、書記のポストが空くので希望する方はどうぞ、気兼ねなく生徒会室のドアを叩いて下さい。まずは面接から始めましょう」
言ってチラリ、一年生の方へ視線をやると退いた。ひどく改まった口調に、生徒達がざわつきだす。今にも吹き出しそうな可奈多が、再び演壇の前に立つよう促す。千倉からも勧められ、志摩はうなじをかいた。また演壇へと進み出る。
「実はさ、現会長からのアドバイスでああいうスピーチしたんだよね。これから一年間生徒会長を務めるんだから、一応固めのスピーチは出来るってところを見せとかないと、ってさ。けど、あー、やっぱり何かこそばゆいね。とにかく、一年間宜しく!」
笑い声交じりの拍手が沸き起こった。志摩は茉菜に場所を譲った。
「皆さん、ご指示を有難う御座いました。生徒会はこれからも良い所を残しながら前進してゆくと思います。皆さんもご協力をお願いします」
再びの拍手。ひとしきり止むと、再び可奈多が登壇する。
「これにて生徒会選挙は終了です。二学期になっても、皆さん元気な姿でお会いしましょう」
三度目の拍手。それは累が退場の指示を出すまで続いた。




