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謎の女と唇

久々の続きです。待っている人がいてくれたら嬉しいな

「この女がソウシロウのことを「勇者か?」って言って襲いかかってきたのね?」


ゴスロリにドリルなツインテールのリナがソウシロウにたずねた。


「そうだ」


襲ってきた女を担いで教会の離れまで戻った総士郎は答えた。


申し訳ないが、非常事態なので寝ているササリアとリナは起こさせてもらった。


女、背は高めで黒髪のストレートが背中の真ん中程まで伸びている、は総士郎の部屋のベッドに寝かされている。


「裸にボロ布しか身に付けてないんですね。所持品もなさそうです」


女を軽く改めながら長い金髪に碧眼の美少女、ササリアは言う。


総士郎が倒れこんできた女を抱き止めた時から女は裸にマントのようなボロ布を纏っただけの姿だった。


「首の後ろの方を見てくれ。たぶん普通の人間じゃない」


「首の後ろですか?」


ササリアは首の後ろを見る。


女の首の後の少し下の部分、肌の5センチ四方が銀色の金属になっていた。


「金属、ですね。、、、張り付いているわけではなく、肌自体が金属みたいです」


ササリアは確かめるように人差し指の先でその部分を叩く。


カツカツ、と中に何か詰まっているようなくぐもった金属の音がする。


「息も、、、してるけど、凄くゆっくりみたいね」


リナも女を観察しながら言う。


「一応気をつけろよ。俺は拳の1発で吹っ飛ばされたし」


総士郎は左腕を擦りながら言う。そこは紫色の大きなアザになっていた。


女の突きを受けた時、総士郎はとっさに左腕を体と拳の間に割り込ませていたのだ。


その為に受けたダメージも少なくその後も動けたのだが、まともに胴に受けていたら行動不能になっていた可能性は高い。


「先にそちらの治療をした方が良さそうですね。あちらの部屋へ行きましょう」


その様子を見たササリアは腕の治療を総士郎に勧めた。


「私はもう少し調べてみるわ」


リナは女のマント、ボロ布を軽く持ち上げて言う。


女の裸を検めるのか、脱がせたマントの方を詳しく調べるのか、とにかく総士郎がいると少しやりにくい場所を調べるのだろう。


「わかった。気をつけろよ」


「わかってる。なにかあればすぐに呼ぶわ」


リナの返事を背に総士郎とササリアは部屋を出た。




自分の部屋を出てリビング兼台所に置かれた椅子に座る。


「ソウシロウさんは「小さな手当」を使うのは始めてですよね?」


「そうだな。自分で使ったことも、人に使ってもらったこともないな」


ササリアに答える。


「では、魔法を使う前にケガの部分の骨が折れていないかを確認してください」


ササリアに言われ総士郎は左腕の紫色になっている部分を見る。


「一応、大丈夫そうだな」


左腕の紫色に変色した部分は痛みも強い。もしかしたら骨にヒビくらいは入っているかもしれない。


しかし、腕が変な方向に曲がったり歪んだりはしていないようだ。


「骨が折れていた場合、治癒の魔法を使うと曲がったままくっついてしまうことがありますので注意してくださいね」


「わかった」


ササリアの注意に頷く。


「「小さな手当」の呪文は覚えていますか?」


「ああ」


「では、患部に右手を当てて呪文を唱えてください」


「わかった。アンメシナ ミ、テン、エー、ニニ、ルソ、ジク」


総士郎は左腕の患部に右手を当てて呪文を唱える。


手を当てている患部に熱と僅かな振動のようなものを感じたがすぐに収まる。


見ると左腕の紫色になっていた部分は普段の肌色に戻っていた。


左手を軽く動かしてみるが先程まであった痛みは無くなっている。


「成功ですね。「小さな手当」の魔法は使う時に少し注意が必要な魔法なので後で少し勉強をしましょう」


その様子を見ていたササリアは微笑んで言った。


「小さな手当」の魔法は、たぶん、骨以外にも歪んだままなど好ましくない状態でくっついてしまったりすることがあるのだろう。


臓器に使った場合は変な臓器の癒着が起きたりする心配もありそうだ。あと、ケガのない状態で魔法を使ったらどうなるかなども聞いておきたい。


「そうだな、命に関わる魔法だからただ使えばいいってものでもなさそうだしな」


ササリアの言葉に頷いた。




「あの女性、何者なのでしょうか?ソウシロウさんを勇者だと見抜いて襲ってきたんでしょうか?」


ケガの治った左腕を擦りながら具合を確かめている総士郎にササリアが言う。


「わからん。勇者に敵対する勢力なら魔族とかになるけど額には何も無かったしなぁ」


総士郎が本で調べたところによると魔族は額に赤色の宝石、魔石カーバンクルを持つ人間によく似た種族らしい。


そして、そのほとんどは強力な魔法を使いこなす、と調べた本には書いてあった。


くだんの女の額には何もないし、襲ってきた時も魔法は使わなかった。


「それになんか、メカっぽいし」


総士郎は呟く。


首の後に着いた金属部分以外にも、倒れる前に「スリープ状態に移行します」とか言っていた。


「メカ?、、、ですか?」


「金属でできた動く仕組みのことだな。場合によっては人形ひとがただったりする」


総士郎はあまり正確ではないがこの場で必要な情報だけを説明をする。


「そういえばユアって名乗ってたな」


総士郎は女に襲われたときのことを思い出しながら言う。


「ユア、ですか?」


ササリアはそれを聞いて少し考える素振りをした後、続ける。


「勇者様が召喚されるよりも前の時代、世界創造の時代の双子の天使の名ですね。アイムと対になり、銀の男神おがみ様の使いのはずです」


総士郎がまだ知らない、この異世界創造の神話の登場人物の名らしい。


天使の名か。しかも、アイムと対になるって、、、。


総士郎は首を捻る。


ユアとアイム。もしかしなくても英語の「You are」と「I am」だろう。


もしそうだとすると、あまり疎かにできない異世界のイベントが発生しているのかもしれない。


そして、英語とメカっぽい施設、となると地下迷宮ダンジョンの祝福の泉の施設が思い浮かぶが、、、今のところは関連があるかはわからない。


しかし、何か繋がりがありそうな気がした。




「ちょっと来て」


隣の総士郎の部屋からリナの声が聞こえた。


「とりあえず、そこにあったソウシロウの服を着せたわ」


総士郎とササリアが隣の部屋に移動するとリナが告げた。


女は部屋を出る前と変わらずにベッドに横になっていたが薄茶色のシャツと緑のズボンを着ていた。ササリアが洗濯して置いておいてくれた総士郎の服だ。


「何かわかったか?」


「とりあえずは何も。ただ、何故か唇に触れると吸い付くわ」


「唇?吸い付く?」


「ええ」


総士郎の問いにリナは答えた。


「唇に、こうすると、こうなるわ」


リナはそう言いながら人差し指で女の唇に触れる。


すると女の口が僅かに開き、リナの指先を口に含んだ。


「こんなふうに唇にだけ何故か反応があるみたいね」


少ししてリナは女の唇から指を引き抜くとスカートのポケットから取り出したハンカチで拭った。


「それになんの意味が?」


「さあ?」


リナは総士郎の問いに肩をすくめながらハンカチを元のポケットに仕舞う。


「お腹がすいているのでしょうか?」


ササリアはそう言いながらリナと同じように人差し指で女の唇に触れた。


やはり女の口が僅かに開き、ササリアの指先を口に含む。


「ん?」


ササリアが顔を微妙にしかめた。


「なにか変な感じがしたような??」


ササリアは指を女の唇から引き抜き目の前にかざし、観察する。


女の唾液で僅かに濡れているようだが、それ以外は特に変わった所はないようだ。


「なんでしょう?一瞬ピリッとした感覚があったような気がしましたけど」


「ピリッとした感覚?私は特に何も無かったけど」


首を傾げるササリアにリナがハンカチを差し出しながら言う。


「気のせい、、、でしょうか?なにか変な感触があった気が気したのですが」


ササリアはハンカチを受け取り指を拭いながら首を傾げている。


その視線が総士郎に向き、また、リナの視線も総士郎を見ていた。


・・・


なんとなく、次は総士郎がやらなくてはならないような雰囲気がうまれる。


「俺もやるの?」


指チュパされて喜ぶ趣味はないんだが、、、


女性の口に指を含ませる、という行為に若干の躊躇もあり二人に確認する。


「そうですね」


「そうね。勇者ならなにかあるのかも」


微妙な表情の総士郎にササリアとリナが答えた。


やはり総士郎もやらないといけないらしい。


「わかった。やってみる」


総士郎はそう言って女の前に立つと指を女の唇に当てた。


唇が僅かに動き、総士郎の指が女の口内に僅かに入る。


・・・


女はそれ以上動かないし生温かい唇の感触以外、総士郎も別段に何かを感じたりはしなかった。


「何も起こらな」


ガシッ


そう言いかけた瞬間、女の両手が動き唇に触れている総士郎の手を掴んだ。


「な、なんだ?」


驚いて指を引き抜こうとするが強く腕を掴まれていて動けない。


総士郎の全身から女の唇に含まれている指に向かって何かが流れていく感覚。


何かが吸われている?


女の目が開く。その瞳は虹色に輝いていた。


「せいっ!」


気合と共にリナが女の顔面に突きを放つ。


女の右手が総士郎の腕から離れリナの拳を止める。


「ハッ!」


続けてササリアが女の胴に突きを放つが同じく女の左手によって止められた。


しかし、それにより女の両手が総士郎の腕から離れた。総士郎は即座に女の唇から指を引き抜き距離をとる。


リナとササリアも総士郎を庇うような体制で女から一歩距離をとった。


女から抑揚の少ない、しかし、はっきりとした声が発せられる。


「エル・エネルギー充填12%、起動限界値クリア、起動します」


そう言いながら女は上体を起こした。


その瞳の光が強く輝く。


見えている部分の肌、顔や腕、首に複雑な模様が瞳と同じ虹色で浮かぶ。


それは電気回路を思わせるような直線的で複雑、しかし、絡まることのない線の集まりだった。


「ユア・システム、一部破損。ネットワーク・アクセス・・・エラー。システムの修復・・・失敗。ディーイーモード・・・エラー。エヌブイモード・・・エラー。ディーディーモード・・・エラー。・・・・・・セーフモードで起動します」


女が言うと、肌に浮かんでいた模様の輝きが増し、瞳も強く輝く。


「な、なんだ?」


眩しい光


総士郎は光を手でさえぎるようにする。


リナもササリアも同じように手で光を覆い隠すようにしている。


「起動成功。ユア起動しました」


その言葉とともに光は消えていき、瞳の光も収まっていく。


女がこちらを向いた。


虹色に光っていた肌や瞳の光は完全に収まっていた。


「私はユア。銀の男神おがみ様の使徒、銀の槍のユアです」


こちらを向いた女が告げる。


「それと、次からはこのような絶世の美女が眠っていたら美男子のキスで起こすように要請します」

女、改めユアは右腕を自分の首の後ろに回し、その黒髪を広げてポーズをとりながら言った。



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