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反省と自信

それから2時間くらいかけて1つ目の樽が満杯になるまで濃縮された祝福の水を汲んだ。


濃縮はロナ級の「杯1杯の水」を使い、バケツの4分の1になるまで濃縮する方法を採用した。


ロナ級の「杯1杯の水」を3回かミエ級を1回で祝福の水を結晶化させ、緑の砂糖を得ることができたが、祝福の水を濃縮するほどに「杯1杯の水」の効率が落ちているらしいことと、さすがに魔力の消費が大き過ぎるのではないかと心配したササリアと相談し、この方法に落ち着いたのだった。




「魔力酔いは大丈夫ですか?」


1つ目の樽を満たした後、ササリアが聞いてきた。


「そろそろ少し気持ち悪くなってきたかな」


腹の奥に僅かだが違和感がある気がする。


ロナ級の「杯1杯の水」を100回以上は使っただろうか?いつもの、リン級の「風の戦斧」を1回使うよりはキツい。


「食事は取れそうですか?」


「腹は結構空いているな」


「なら、夕食をとりましょう」


夕食は普通のパンと干した肉、たぶんクジラ、が2種類、ゆで卵、それに干しブドウだった。


あとは水、お茶、エナドリが飲み放題だ。


干した肉は普通の塩味のものと、唐辛子で味付けされた辛いものがあった。唐辛子の方は少し辛味が強かったが総士郎好みの味だったので多めに食べてしまった。


魔法を使えば湯が沸かせるので簡単なスープを作ることくらいはできるが、それは翌朝にすることにして、今晩は携帯食的な簡単な食事で済ませた。


簡素な食事だったが、いかにも中世ファンタジーの冒険者っぽいことをしたような気がして総士郎は満足だった。




「続きは明日にして、寝ましょうか」


夕食を終えた後、ササリアはそう言うと絨毯の上の麻袋から灰色の毛布を2枚持ってきた。


「どうぞ」


1枚を総士郎に渡すと、そのままの距離、総士郎の近くで仰向けに横になる。


くっついているわけではないが手を伸ばせば届く距離だ。


近い、と思ったがこちらから距離を取るのも悪い気がする。


・・・


まぁ、いいか。


総士郎はササリアに背を向けて横になった。


この部屋の灯りを消すことはできないようで明るいままだったが、総士郎は目を閉じた。




今日はいろいろとヤバかった。


まず、2人だけでダンジョンに潜るのが無理がある気がする。2人だけだと、どちらかが動けなくなれば残った方の負担が倍以上になる。


これは3人で潜って1人が動けなくなった場合と段違いで危険だ。


次に、総士郎自身の経験不足。


大ムカデに最初に放った魔法が炎の矢なら一撃で大ムカデを撃退でき、ササリアも軽い動揺だけで済んだ可能性が高い。


魔法に対する耐性のようなものがあることをそもそも知らなかったし、大ムカデの特性、風の属性に対して耐性を持っていることも知らなかった。


あと、今回、とっさに放ったリン級の炎の矢は威力が大き過ぎてササリアにケガをさせてしまいそうになった。


魔法の威力がもう少し強いか、もう少し近くで魔法が発動していれば危なかった。


これは「ハインリッヒの法則」でいうところの「軽微な事故」にあたる。再発防止策が求められるレベルだ。


やはり威力の大きな魔法は最初の距離のあるうちに使いたいし、もっと魔法の威力や効果範囲に対する知識と経験が必要だ。


最後に、ササリアと大ムカデが組み合っているときに、とっさに行動を行うことができなかった。


例えば、魔法なら「死に至る」これは、右手で触れているものの命を奪う魔法らしい。使ったことがないので詳細はわからないが使えそうではある。後は「炎の槍」あたりも使えそうだ。


それに魔法でなくともメイスでぶん殴ればササリアから大ムカデを引き剥がせた可能性もあった。「攻撃は魔法」と思考が硬直化し過ぎていた。


少し考えただけでこれだけのミスがあった。


大ムカデが出てくることがかなり不運なイレギュラーだとしても、無事に生き残れたのはかなりの幸運だったと思うべきだ。




「はぁ」


ため息を付いた。


「ソウシロウさん」


ため息が聞こえたのか声をかけられた。


「ん?なんだ?」


ササリアの方を向くとササリアもこちらを向いていた。


「今日のいろいろは私が悪いです。ソウシロウさんはあまり気にしないでください」


・・・


「そうかなぁ?」


「そうです。ソウシロウさんに頼って、無理して2人だけでダンジョンに入ったのも、大ムカデが絶対に出ない訳ではないのに油断していたのも、私の責任です」


「、、、それがないとは言わないけど、もっと上手くやれたんじゃないかと思って、、、」


「ソウシロウさんは私の様子がおかしいとすぐに気が付いてくれましたし、私が泣いてしまった時も1番適切な方法で私を慰めてくれました。それはなかなかできることではないと思います。反省も、少しは、あるかもしれませんが、そこは自信を持ってもいいと思います」


ササリアはじっとこちらを見つめていた。


「自信を持っていい」か。


生前、仕事をしている時も「反省点はよく書けてるけど、上手く行った点が書けてない」と自己評価の書類で毎度毎度悩まされた覚えがある。


「それに嬉しかったですから。ソウシロウさんが頭を撫でてくれて、慰めてくれて」


ササリアは総士郎の手を取った。


「必死だっただけだよ。ササリアが早く復帰してくれないと魔物に襲われて死ぬと思ったし」


「それでもですよ。私は嬉しかったんです。ありがとうございました」


ササリアは微笑んでいた。




どれくらい寝たのだろうか?


疲れもだいぶ取れたし、魔力酔いも完全に治っている。


ただ、硬い床で寝たので体は少し痛い部分があった。


部屋の中はずっと明るいので正確なことはわからないが朝だと思う。


ササリアは、、、総士郎の方を向いて寝ている。と、言うか総士郎の手を握ったまま寝ていた。


昨日、あの後、総士郎の手を握ったまま「おやすみなさい」と告げて速攻で眠りに落ちたのだ。

いろいろと厄介な娘である。


それにしても珍しい。総士郎が起きるより遅くまで寝ていることは今までなかったはずだ。


ササリアもなんだかんだで疲れていたのかもしれない。


んじゃ、やりますかね。


握られていた手をゆっくり外し、あまり音を立てないように起き上がると、もう魔法の効果が切れて地に付いてしまっている絨毯へと向かった。




「ん、んんんんーーー」


ササリアが伸びをして上半身を起こした。


「いい匂いがしますー」


ササリアは呟いた。


「おう、おはよう」


「はいー、おはようございますー」


総士郎の挨拶に返事はしたがまだ寝ぼけてる感じがする。


「はい、冷たいお茶。目が覚めるぞ」


「いただきますー」


ササリアは渡された木のコップに入ったお茶を煽る。そして、動きが止まった。


・・・


「あれ?わ、私?ここは?」


「おはよう。目が覚めたか?」


「ソ、ソウシロウさん?お、おはようございます!」


床に座ったまま勢いよく頭を下げる。が、すぐに立ち上がる。


「わ、私、顔を洗ってきます」


しわくちゃの毛布をそのままに給水機の方へと行ってしまう。


そして、給水機のそばに置かれたバケツで給水機から水を汲んで顔と手を洗っていた。


ササリアの使っていた毛布を畳む。毛布を広げた一瞬、僅かだがいい匂いがした気がした。


総士郎は何も考えないようにしてその毛布を麻袋にしまった。


「また、お見苦しいところをお見せしてしまいました。ごめんなさい」


「まぁ、疲れてたんだろ。謝ることじゃないよ」


気にしてない。と示すように片手を上げて答えた。




朝食は、皿にはパン、薄切りにしてカリカリに焼いたクジラのベーコン、ゆで卵。木のコップには野菜のスープである。


持って来てあった材料的にはベーコンもスープに入れるっぽかったが、あえて変えてみた。代わりにスープには昨日の唐辛子味の干し肉を入れて少し辛めのスープにした。


「ソウシロウさんが作ったんですか?」


「ああ、材料は使わせてもらったけどな。味見もしたし悪くはないと思う。食べよう」


「わかりました。では、天に坐すおん女神様、今日も日の糧をお与え下さり感謝いたします、いただきます」


女神に祈りを捧げたササリアはスープに口を付けた。


「少し辛いスープなんですね。美味しいです」


「ありがとう」


「カリカリのベーコンもよく焼けてますね。火が使えないのにどうやったんですか?」


「「光の炎」を最弱で鍋の上から使ったらいい感じに焼けてくれた」


「へー、当たり前ですけどそんな使い方ができるなんて知りませんでした」


「まぁ、そうだろうな」


緩く会話をしながら朝食を片付けていく。


ササリアの表情も自然な感じだし、寝坊はしたようだが体調などは大丈夫そうだ。




「さて、続きをしましょうか」


「そうだな」


昨日の続きで、2つ目の樽にも祝福の水を汲んでいきたいのだがこちらの樽にはきれいな水が入っている。


「中の水は捨ててしまうのか?」


「そうですね。捨ててしまいましょう。でも、その前に髪を洗いたいです」


「髪?」


「ソ、ソウシロウさんに拭いていただきましたけど、まだ何かついてる気がして、、、」


大ムカデの体液が付いてしまった箇所か。


「こちらに来てください」


白い部屋の入り口から正面にある給水機、その左手の部屋の隅には直径30センチ程の穴が開いていた。く


「ここにイロイロなものを捨てることもできます」


ササリアは穴を指差して言った。


この休憩ポイントはごみ捨て場も完備しているらしい。


「あの、あまり見ないでくださいね」


そう言うとササリアはいつも着ているローブを脱いで下着姿になった。


「ちょっ」


総士郎はとっさに背を向けるが、


「樽から柄杓で水をすくって欲しいので、す、少しなら見てもいい、です」


と、ササリアから声がかけられた。


「な、なるほど。少し、ね」


総士郎は絨毯に上がり、柄杓を手に取る。


「頭の先の方にお願いしますね」


ササリアは頭を穴の方に向けている。白い背中と下着に覆われたお尻、それに太ももが眩しい。


「わ、わかった」


柄杓に汲んだ水を、体にはかからないように、少しずつ頭の先の方にかけていく。


「そんな感じで、何回か、お願いします」


「りょ、了解」


もう一度、柄杓に水を汲み、同じようにササリアの頭にかける。ササリアはその水を受けて髪を洗っていく。


それを10回ほど繰り返したころ


「はい、もう大丈夫です。ありがとうございました」


と言い、ササリアは顔を上げた。


水も滴るいい女?濡れた髪が官能的な雰囲気を際立たせる下着姿をバッチリ正面から見てしまった。


「イ、イベントCGげっと」


総士郎は桃色に染まる脳内にそう呟くことくらいしかできなかった。




その後、ササリアは髪を拭き、新しい服に着替えた。予備の服も用意していたようだ。


残った水で汚れた手ぬぐいなどを洗い、それでも余った水を捨てる。


それから2時間かけて2つ目の樽も濃縮した祝福の水で満杯にしたのだった。



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