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銃とワイバーン

「撃てー!」


バンッババンッバンッ!


4発の発砲音。


発砲を受けた空飛ぶ巨体は体を縮こまらせる。それによりその巨体をささえる浮力を失い失速した。


そして、その巨体は発砲した集団、10人の人影を通り過ぎ100メートルほど離れた地面に激突する。


打ち付けられた巨体に砂煙が舞い、僅かだが地面の振動が発砲した集団まで届いた。


しかし、それもすぐに収まる。


その中央には体長15メートルは超えるであろう巨大な緑のトカゲが転がっていた。


「警戒を解くな!次の銃を構えろ!」


総士郎の声で長い筒、火縄銃を構えた格好のままだった4人が隣の者から新たな火縄銃を受け取り巨大な緑のトカゲの方に構える。


10秒、20秒、火薬の臭いと薄く立ち込める白い煙の中、そのまま時間が流れるが横たわった巨大なトカゲはピクリとも動かない。


「やったか?」


発砲を命じた総士郎は動かない巨大なトカゲ、ワイバーンの方を注視したまま呟く。


銃の威力から考えてワイバーンを即死させる事は難しい。


しかし、撃たれた後に50メートル以上の高さをその巨体で落下したのだ。普通に考えれば死んでいる可能性は高い。


しかし、この世界には魔法がある。


そもそもこんな巨大な生物が空を飛んでいる事など魔法無くしてはありえない。


中型のクジラほどもある、地球基準だと少なく見積もって20トン、多く見積もれば50トン程もある生物、ワイバーン。


それが空を飛び回るのが今の総士郎の住む世界だ。


そう考えながら警戒を解かないまま大空から堕ちたトカゲを注視する。


見つめる先、ワイバーンはこちらに頭と胴を向けた体勢で倒れている、というか転がっている。


100メートル程離れているのでその胸に開いたはずの銃の傷は見えない。


しかし、その胸は僅かにも動いていない、つまり呼吸をしていないように見える。


頭もまったく動かず開かれている目は瞬きもしていない。


そのまま2分程が過ぎたがワイバーンはまったく動かなかった。


「ユア、撃て」


総士郎の声に左手にいた火縄銃を持った者が頷いた。


バンっ


音と共に火薬の匂いが強くなるが目の前の光景に変化はない。


「喉に命中しました。動きません」


若い女性の声。


総士郎の目にワイバーンの様子にまったく変化は見つけられなかったが銃は喉に命中したらしい。やはりワイバーンはピクリとも動いていない。


「警戒体制のまま近づく!油断するな!接近戦も用意!」


その声に総士郎の周りの何人かは2メートルほどの槍を構えた。


ゆっくりと、普通に歩く半分ほどの速度で、ゆっくりと総士郎とその周りの人物たちはワイバーンに近づいていく。


慎重に、5分ほどかけて10メートル程まで距離を縮めても巨龍は動かない。


この距離になって総士郎にもその胸に3つの穴が開いているのがはっきりと見えた。


そして、そこからやや下の腹と言える位置にもう1つの穴が、首というよりも顎の下辺りにも1つ穴が開いている。出血は多くなく穴の大きさ、直径2センチ程と同じ幅で地面に向かって僅かに流れていた。


ワイバーンの目は完全に虚ろ、明後日の方向を向いたまま、近づいて来たこちらに一瞥もくれなかった。


落ち着いてよく見ると巨体の地面に着いている方は歪んでいる、と言うか潰れているし、腕と一体になった羽は折れて骨が一部むき出しになっているようだ。


思わず上げてしまった死亡フラグな声も効果は発揮されず、本当にワイバーンは絶命したらしい。


更にワイバーンを注視したまま槍がギリギリ届くくらいの距離、2メートル程に近づいていく。


「貸せ」


右隣で槍を構えている者から槍を取り、目の前の巨龍の体を槍でつつく。


やはりワイバーンは動かなかった。


そして、大きく息を吐き出し、


「警戒とけ!成功だ!」


喜色を隠せない声でそう言うと周りから歓声が上がった。


「やった!」「やったぞ!」「やりました!」


総士郎の周りを固めていた者達は口々に叫びながら両手を上げたり、脇に拳をあてガッツポーズをとった。

「ソウシロウ!やりました!」


総士郎の左にいた者が総士郎に飛びついた。


先程、ユアと呼ばれた女性だ。


「ああ」


総士郎は答えながらも横たわるワイバーンを見たままだった。


しかし、内心は達成感で満たされていた。


ワイバーンを倒せる銃を作ることができた。


これでようやく、この世界で人類が生存する道にようやくメドが着いたのだ、、、。


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― 新着の感想 ―
[一言] うわー、普通は無かったことにする銃の開発をメインに据えるというのはある意味斬新ですね。最近自分ではじめて書いてみた小説では当然、亜硝酸菌と硝酸菌は存在しないという事でと軽く流していたので目か…
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