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MARVEL MEMORY  作者: りつか
2/4

1-1


「……い、あい、藍!!」

「っ!!」


 肩を揺らし机に突っ伏していた顔を内巻に綺麗に巻かれた肩までの髪が乱れるほどの勢いで思いきり上げた。

 

「あ、芽衣……あれ?授業は?」


 藍、と呼ばれた子はまだ寝ぼけていて頭が覚醒していないのか目頭をきゅっと掴み自分の記憶を呼び起こす。

 先ほどまでは授業中、だったはず……と目を開けて自分を起こした女の子、芽衣を見つめて首を傾げた。


「終わりました。つーか、寝癖。どんだけ爆睡してたの、ほんと」


 眉毛の少し下で横に流している藍こだわりの前髪がぐしゃぐしゃになっていることに気づき芽衣は、あきれたように藍を見つめそれでも前髪をいつもの定位置になおしてあげる。


「いや、なんかすっごい寝てた!びっくり。あ、ありがと」

「はいはい、どーいたしまして」


藍の前髪を直し終わり目の前の空いてる席に座り長い髪を耳にかけなおすと芽衣は携帯を触り始める。


「ねー、今化粧品どれ買おうか悩んでんだけど、なんかいいのない??」


 机に両肘を付き、スマホの画面を指が滑る。藍と見たいのか芽衣がスマホを傾けた時、


「つか聞いて。あたし小さい頃の夢見た」

「はあ?」


 画面を手のひらで抑えずいっと前のめりになる。


「聞いてた?化粧品の話」

「うん、でもちょっと聞いて!」


「あたしさ、小さい頃に変な人に逢ったんだ。」

「はぁ!?何?」


ポケットに携帯を収め芽衣は眉間に皺を寄せ首を傾げる。急にそんなことを言われれば、誰しも芽衣と同じ反応を示すだろう。


「あたしが5歳とかそれくらいの時だったんだけどホントに格好いい人だったんだ!しかも背中に白と黒の羽があったの」

「……なにそれ?気持ち悪っ。コスプレか何か?え?なんか思春期こじらせてる系のなんか??羽生えてる人間居たら見たいっての」

「違う!あれは絶対本物だった」

「ふっ」


 このお馬鹿さん、とでもいうかのように鼻で笑い冷ややかな目を向ける芽衣に、藍は地団太を踏み、地を這うような声で告げる。



「まあ、一応聞いあげる!で、その人がなんかあるわけ?」

「えっと……確か18になったら迎えにくるとかなんとか……」


小さい頃の記憶で、今まで忘れてた話なので本当にあんまり詳しくは覚えてない様子の藍。


「18?あんた18の誕生日3日後じゃん!彼氏に祝ってもらうんでしょ?私の彼氏ほしい……!!」


芽衣は羨ましいと嘆く。


藍には最近できた彼氏、一樹がいる。付き合って初めてのイベントが誕生日で藍はここ1か月ほど毎日その日を心待ちにしている。


「そ!誕生日はデート!誕生日楽しみにしてたのに変な夢のせいで思い出しちゃったんだよねー……まじでいままで忘れてた」

「今まで忘れてたんならそんなに大したことじゃないってことだよ!ま、もしそいつに会えたら見せてよ!」


 吹き出しそうなのをこらえている芽衣。彼女はまったく信じていない。そして藍も半信半疑である。


そんな時次の授業をはじめるチャイムが鳴り響く。芽衣同様にクラス中が自分の遺跡にばたばたと急ぐ。

芽衣に手を振り、勉強をしているように見せるためにシャーペンを手に取り、一つの文字をノートに書き記す。


 “シェイド”


「あれは……そう、シェイド」


 名を呟いた途端忘れていた光景がぱっと鮮明に思い出される。

『逢いに行くよ』

 その言葉が藍の胸にすとんと落ちた。


「……いや、そんなまさかね」


自嘲気味に笑うと小さく頭を振り黒板へと目を向けた。



藍の誕生日まで、後3日……




◇◇◇




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