表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/15

No.4 絶滅危惧種

「待っててくれ白雪……!今逢いに行く!」



 アスフィーの大鎌ーーデスサイズを強引に奪い、逃げ込むように異世界へのゲートを潜り抜けた。


 そして自らの目的ーー白雪あかねともう一度出会う為、俺は異世界へと足を踏み入れる。



 アスフィーのいる場所を繋ぐゲートは、俺が斬って消滅させ、それを作り出せる唯一のアイテムーーデスサイズは俺が握っている。



「デスサイズはこっちにあるし……アスフィーはこっちに来られない。で……あってるよな?」



 右も左も分からない。


 正解も誰かが応えてくれるはずもない。



ーー俺に何故か好意を寄せてくれているアスフィー……あいつには悪いけれど、どうしても白雪に会わなくちゃいけないんだ……!



 首を傾げながら、とりあえず周囲を見渡した。



……ゴホゴホ。埃っぽい。



 少し薄暗い場所だったが、天井に幾つか空いた隙間から差し込めていた陽の光が、この場を明るく照らしてた。



 木箱や樽がかなり乱雑に置かれ、その上に埃が白く掛かっていた。


 

「……倉庫みたいだな。ほんとにここは異世界なのか?」



 とにかく外に出て確認しないとーー


 散らかった足場だったが、物を掻き分けて前に進む。

 壁沿いに出口を探すと、すぐに古い木の扉を発見した。



「……異世界。果たしてこの世界は、どう俺を受け入れてくれるのかなーー」



 重い扉を引きずるように開き、眩い陽の光が俺の視界を覆うが、ゆっくりと目を開く。

 するとそこには、現実とは思えない光景が広がっていた。



「うわぁ……すげぇ……!」



 ファンタジーRPGでよくあるような、西洋を舞台とした城下町。


 レンガでできた壁や地面。

 街の奥には、何やら大きな城がそびえ立っているのが見える。


 様々な市場や商店がずらっと立ち並び、それぞれが和気あいあいと賑やかな盛り上がりを見せていた。



 先ず真っ先に目に飛び込んで来るのが、そこらで動いて喋る住民の姿だ。


 どれも二足歩行の人型で、普通に通じる言葉を話しているのだが、明らかに俺と大きく違う点があった。



「すげぇほんと……!」



 見渡す全ての人が、アニメやゲームで登場しそうな獣人のような姿をしていた。


 犬や猫の顔をした商人や、鳥の顔をした兵隊などーー


 

 ここが正真正銘異世界であると、この光景を見て疑う者はいない。



「ほんとにここは異世界なんだな……!」



 賑やかに並ぶ商店と、街の彼方に大きく聳え立つ城のような建物。

 そして店の殆どが、剣や盾をはじめとした、冒険に必要な装備品を店頭に揃えている。



ーーどうやらここは、ゲーム始めたての初心者用チュートリアルと言った最初の街で、装備をしっかり買い揃えろって事か……しかしーー



 俺は忘れていたが、異世界に部屋着の無地のスウェット姿で、着替える間もなくそのままここに来た。


 当然小銭すら手持ちが無い。



ーーそもそもこういう世界では、円もドルも通用しない……まぁどんなクソゲーでも、スウェット姿の主人公を、急に草むらダンジョンに放り出すなんて事はしないだろう……



 右手に握る死神の鎌ーーデスサイズをマジマジと見つめ、思わず大きな溜息を吐きこぼす。



ーースウェットに大鎌って、どんな組み合わせの装備だよ……!スウェットってそもそも有り得ないだろ!こんな服装じゃコンビニに行くなら未だしも、ダンジョンに出た瞬間、即ゲームオーバー間違いなしじゃねぇか……!



 キャラクターのステータスパロメーターにおいて、DEF(防御力)という数値は無視出来ない、最重要項目であると俺は問いたい。


 ”攻撃こそ最大の防御”と唱える者も多いが、敵に此方の一撃を仮に躱され、許してしまった反撃で倒されてしまっては元も子も無い。



ーースウェットで魔法や斬撃を受け耐える自信がない……



 適当な店に立ち寄り、俺はキメ顔で右手の物を差し出しながらこう言った。



「すいませーん。この鎌売ってお金に変えたいんですけどー」

 


ーー死神から奪った盗品を質屋に入れる主人公なんて、もしかして俺が世界初なんじゃないか?



 屋台で商売をしていた店主ーー白と黒の縞模様の毛並みをした、猫族を思わせる人型の猫男が、仕事の手を止めて笑顔で此方を振り返った。



「いらっしゃい!うちはいいのが揃ってるよ!」



 服を着た二足歩行の大きな猫が、低く渋い声で接客をやっているーー


 耳や尻尾まで見える。

 着ぐるみとは思えない、リアルな毛並みと動きをしている。


 猫耳というか、猫そのものである。



 いざファンタジーの住人を目の当たりにすると、やはり夢の中にいるかのような錯覚に陥ってしまう。



 周りを見渡すと、右も左も動物人間だらけーー


 人間はーー



 俺はそこでふと気がついたが、まるでお祭りかのようにごった返す街の中、人間と呼べる人種が俺の他に見当たらなかった。


 この異世界では、人間の俺の方が異端なのか?



 すると俺の顔を見た猫の店主は、物珍しそうに声を上げた。



「人間のお客様じゃないか!これは珍しい!」



ーー俺からしてみれば、あんた達の方がよっぽど珍しいが……!



「珍しいのか……?」

 


「そりゃそうさ!この街が人間で賑わっていたのは昔の話!最近じゃすっかり絶滅危惧種の仲間入りだ!」



「は!?絶滅危惧種!?」



 主にそのワードは、人間が他種族に使う事はあっても、自分達に当てはめて言ったことは無い。


 猫の店主はしみじみと過去を思い浮かべながら、俺の顔を見て話し出す。



「時々見かけるがね。けれどもうこの世界に、あんたのような人間はどれだけ生き残っているか……」



「……俺の思い浮かべていた異世界と違うのか?」



「あんた人間なのにどうして知らないんだ?」



 どうしてと言われても、俺は先程この異世界に転生して来たばかりだ。



 魔法や剣で戦いながら、心踊る冒険に明け暮れてーー国の勇者となって可愛いお姫様と結婚する……そんな一般的なファンタジー全開のイメージを持っていたのだが。


 まぁ、俺には白雪あかねに会うという目的があるのだが。



 それにしても絶滅危惧種とはどういうことだろうかーー



 本来絶滅危惧種となる種族は、様々な理由があるが、他種族からの天敵が主な原因とされている。


 特に食物連鎖が大きく狂うと、食われる側の種族は激減し、たちまち生き残りを失っていく。


 間接的ではあるが、人間が環境を変化させ、絶滅していった種族も多数いる。



 しかしこの異世界では、我々人間がその絶滅危惧種というから驚きだ。



 もしこの話が本当なら、白雪はおろかーー俺以外の人間に逢えることすら絶望的なのか……!



「……もしかして、人間が軒並み何かに喰われてる……とか?」



 俺はじーっと、目の前の喋る猫を睨み付けた。


 すると焦ったように、猫の店主は弁解を言い出した。



「ち、違う違う!少なくとも猫は人間なんか食べない!」



 必死に取り乱すように否定した。


 どうやら”嘘”は言ってない。

 もしこれが嘘なら、無知の俺に危機感を持たせるような真似はしない。


 危機感は警戒心に代わる。

 こいつは俺を狩る獲物ではないーー



「冗談だよ。でも人間が何者かに喰われてるって言う部分は否定しないんだな?」



 俺がそこまで言ったところで、何者かが俺の後ろからーースウェットの袖を掴んで来た。



 くいっ。



 すぐに振り返るとそれは、俺の目線の落としたはるか下でーー



「お兄ちゃん……こんな所にいたらーー」



 幼く可愛らしい人間の女の子がーー上目遣いでこちらを見つめ、キョトンした表情を浮かべて立っていた。


次回第5話は11/9投稿予定です!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ