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No.3 可愛い女の子の手で

ーーあぁ、なんだか凄く……気持ちがいい。



 ここは壁や天井が一切無い。

 不要な物が一切無い、俺達だけの特別な空間が広がっている。


 俺ーー照井悠也てるいゆうやと、美少女のアスフィア・リ・コンソラトゥールとの、2人だけの秘密の空間にいた。



 アスフィアことアスフィーは、火照った顔と荒い息遣いで、背中をビクンビクンと仰け反らせて言った。



「あっ、あぁん……やっ、そこ、は……ダメぇ、です……あぁ!」



 アスフィーは全身に電気が走ったように、まるで喘ぐような声を漏らしていた。



 そんな声を出されたら、俺はもうこれ以上理性を抑え込めなかった。


 息を呑み、両手を使って、無我夢中でアスフィーを攻めまくる。



「おい……さっきは散々俺を馬鹿にしてくれたよな?何をされても文句は言えねぇよな?」



「はっ、はい……!んっ……!あっ!すごいっ!!童貞くんすごいっ!こんなの始めてっ!!」

 


挿絵(By みてみん)



「へへっ!泣くまで許さねぇからな!」



 俺の指が容赦なく巧みに動く。


 するとアスフィーは余裕のない声を出し、遂に絶頂の声で終わりとなる。



「ひぁっ… んんぅぅうっ……ふぁああんっ!」



「これで終わりだ!!」



 指を激しく動かし、目の前のソレを終わらせた。



 光り輝く四角い画面ーー真ん中に大きく『YOUWIN(勝利)』の文字が現れた。


 俺は清く健全に、格闘ゲームで勝利を収めた。



ーーよしっ……って、そうじゃねぇ!!!



 汗をかいたアスフィーは、マントをパタパタと扇がせて、事後の様な表情でニコッと笑った。



「ふふっ、気持ちよかったですか?女の子と一緒に……”ゲーム”が出来て」



「そうじゃねぇ!!!なんで俺はお前とここでゲームしてるんだ!?ここは何処だ!?」



「それはですねぇ。引きこもり・ニート・童貞の男の子は、こういう願望じゃなかったんですかぁ?美少女と一緒にゲームって」



「いや、意味が分からない……!」



ーー自分で美少女って言っちゃうんだ……まぁ、悔しいけど否定出来ない。って……本当にそういうことじゃない




 アスフィーは笑ってコントローラを俺に見せながら、無邪気な子供のように笑って言った。



「貴方が毎日楽しそうにやっているこれ、私ずーっと気になってたんですよ。童貞くんはやっぱり強いですね」



「だから何で今ゲームしてんだよ!?しかもこれファミコンじゃねぇか!よくドット絵のゲームでアンアンハアハア言えるな……!」



 俺は今謎の空間に、このアスフィーと二人きりでいた。


 ゲーム類を除けば辺り一面何も無い、まるで海の底にいるかのような暗い無の世界。


 俺は一体いつからここにいるのだろうか。

 気がついたら俺は、この空間に立ち尽くしていた。


 

「ここは何処だ!?さっきまで俺の部屋にいたはずだろ!?」



「はいそうです。ですが先程、貴方は”死にました”」


 

「……え?死んだ?」



「はい。死にました」



「ちょ、ちょっと待て」



 アスフィーのあまりにさらっとした言い方に驚いた。


 屈託のない、弾けるような笑顔だった。



ーー逆に何でそんな笑顔なの?



 忘れるわけはない。

 俺の部屋での最後の記憶ーー


 アスフィーが俺に向けた、大きな黒い鎌。



 続けてアスフィーは、何故か俺をぎゅーっと抱き締めて言った。



「私が殺してあげました。首チョンパですっ」



「……うん。だよね。知ってる。怖い表現を可愛い笑顔で言わないで」



「かっ!かかかか!可愛い!?そんなっ!」



 激しく動揺しながら、顔を赤面させて照れたアスフィーだった。



 もうここまで訳の分からない事が続いて混乱すると、人は怒りを超えて悟りのようなものが開く。


 それに今はどんな美少女に抱き着かれても、微塵も何も感じない。

 頭が色々と追い付かない。



 俺の胸部に顔を埋めていたアスフィーは、俺の顔を見上げで続きを話しだした。



「ここは死んだ人間が通る、霊界と呼ばれる場所です。貴方は今までの世界で、役目を果たすことなく死亡したので、その役目を果たす場所へ転生してもらう事になっているんです。ここまでで何か質問はありますか童貞くん?」



「山程あるわボケ」



 まず何から質問していいものか……!


 

「ーー俺が死んだ……いや、お前に殺された。この事実は多分……確かなんだよな?」



「はい。間違いありません」



 それじゃあ目の前の、俺に抱きついている殺人者に更に質問だ。


 もうどうせ俺は死んでいるんだ。

 そう考えたらこの女も何も怖くない。


 

「役目ってなんだ?俺はどうすればいいんだ?」



「人間ーー動物は皆、次の子孫を残すために生まれ、全てを託して死ななければなりません。そうやって継承され、時代は動いています」



「……それで?」



 かなり嫌な予感がしたが、その答えをアスフィーは、笑顔で直球に言い直した。



「はいっ!童貞を卒業してください!」



「……え!?」



「童貞くん。貴方はあのまま強盗さんに殺されて、童貞を……性行為を誰ともしないで短い人生を終えるはずでした」



「わざわざ言い直すな」



「ですのでせめて、可愛い女の子の手で終わらせてあげたと言うわけです」



「理不尽だな!サイコパスかよ!」



 俺はすぐにこの場から逃げ出したかった。


 しかしこの異様な空間の中、逃げ場は何処にも見当たらなかった。



「ですので貴方は、ここで童貞を私で捨ててーー晴れて経験者として、異世界へ旅立つのですっ」



 恍惚とした表情を浮かべ、俺を押し倒すように迫るアスフィー。


 アスフィーの柔らかい素足が、俺の体と絡み合う。

 

 白雪を想う俺は、恥じらいながらもアスフィーの身体を跳ね除けた。



「は!?異世界!?ここで童貞を捨てる!?お前何言ってんだ!?そんな下心丸出しな異世界転生聞いたことねぇよ!!」



「楽になってください。己の欲望のまま、理性なんて捨てて、獣のように、日々の溜まった性欲を私で満たしていいんですっ……!」



「で、でも……!俺には白雪がっ!」



「白雪さんは死にました。”向こう”で貴方のことなんて忘れて、楽しく幸せに暮らしています。ですので貴方は私とーー」



 そこまで言ったところで、俺は突然出た謎の発言を聞き逃さなかった。



「向こう!?向こうってなんだ!?」



「……あっ、いえ、なんでもありません」



 分かりやすく動揺したアスフィーだった。


 

 目を逸らし、縮こまるように身体を凝縮させる……その仕草。

 俺はそれを知ってるいるーー


 散々嫌という程、こうした人間をこの目で見てきた。



 この女は”嘘”をついている。



ーーそういえばさっき、アスフィーは”異世界”とか言ったな……!?そして白雪の話で出てきた”向こう”というワード……!その二つがもし実在するなら……!



 俺は大きな博打に打って出ることにした。


 どうせ死んだ身体だ。

 賭けの支払う代価は無いに等しい。



「……なぁアスフィー?異世界ってもしかして、あのラノベやゲームでよくある、剣や魔法や冒険のある……あの異世界なのか?」



「えっ……?いきなりどうしました?」



「いや凄いじゃん!!まじかよおい!!異世界に行けるのか!?すげー!!異世界転生ってやつ!?俺ずっと異世界とか夢見てたんだよね!!それをこーんな美少女と一緒に行けるとか最高かよ!!」



 少し大袈裟に、”夢踊る鼻の下を伸ばしたオタク”を演じて見せた。


 勿論全て”嘘”だ。



 まるで俺の興味は、あたかも異世界転生の事で頭がいっぱいであるということーー


 そして目の前のアスフィーの事で夢中になっているということーー



 これにより、白雪あかねの存在を話の論点から強引に外し、浮かれさせやすいよう誘導させた。


 滅多に使わない、美少女という単語も混ざて強調させた。



 アスフィーがそれを聞いて、疑いの無い満面の笑みで言った。



「あぁん……童貞くん可愛い……!異世界に転生したら、私と一緒に魂が枯れるまで気持ちいいことしてあげますからねっ!」



ーー食らいついた!!



 アスフィーの目的は、何故だか分からないが、俺の童貞卒業ーーそれを自分自身で叶えるという変わった趣味の持ち主。


 そしてその後の異世界ーー転生の詳細。



 これについて、アスフィーの表情を伺いながら、慎重に探りを入れていく。


 俺が異世界転生と、アスフィア・リ・コンソラトゥールという女にワクワクウハウハであるという事を、声と表情で演じながらだ。



「ありがとうアスフィー!すっごく楽しみだよ!うわぁ嬉しいなぁ!きっと夢いっぱいの冒険が待ってるんだろうなー!」



「そうですよっ。けど冒険ばかりではなくて、私と一緒に暮らすんですからね」



「当然!冒険があるってことは、モンスターとかダンジョンとかあるんだよな?それと……ギルドとか?」



「勿論です!でもギルドなんて入らなくても、童貞くんは私とパーティ組めばいいんです!」



「そうだねーあはは」



 ギルドの話を肯定したーーつまり、俺たち以外に人がいるということの確約。


 もし、死んだ人間が俺のように異世界転生するのだとしたら、白雪も向こうとやらの異世界にいる可能性がある。



ーー白雪にもう一度会える……!?



 俺の頭は、白雪ともう一度会うという目的で固まった。



「……なぁアスフィー?どうやって異世界の方に行けるんだ?ここには何も無いが」



「大丈夫です。作りますから」



 そう言ってアスフィーはーーマントの内側から、あの大きな黒い鎌を取り出した。


 マントの下は異次元なのか、とても隠していたとは思えないほどの大鎌だった。



「なっ!?マントの下から鎌が!?」



 鎌の鋭利な曲線を描く刃を、後ろに引くように構えーー



「ーー私はアスフィア・リ・コンソラトゥール。童貞くん専属の……”死神”です」



 突然出た”死神”というワード。


 しかしこの霊界と言う世界と、彼女の持つ大きな鎌を見せつけられた俺は、それを信じるしかなかった。



「なっ!?死神!?」



「そしてこのデスサイズは、物体以外に次元や空間をも切り裂きーー繋げます」



 孤をを描くように、鎌の刃を一回転させた。


 すると刃の通った空間が切り裂かれ、そこに大きな次元のゲートが出現した。



「……すげぇ」



 常識外れの光景に、俺はただ圧巻するばかりだった。


 アスフィーは満足そうに言った。



「よしっと。これでゲートの完成です。ここを潜れば、異世界に行けます」



「……な、なるほど」



「はいっ。ですがその前に、せっかく二人だけのこの空間にいるんですから、貴方の童貞を私がいただきーー」



 アスフィーがそこまで言ったところで、俺は最後の行動に打って出た。


 ここまで来れば後は嘘はいらない。


 実力行使だ。



「悪いアスフィー」



 俺はアスフィーのデスサイズを奪い、ゲートに逃げるように駆け込んだ。



「えっ!?童貞くん!?」



 アスフィーの声を振り払うように、ゲートを潜りすぐさま反転。



ーー次元や空間を切り裂く鎌だって言うんなら、こういう事も可能なはず。



「ほんとごめんアスフィー!今度必ず詫びるから!」



 自分が通ったゲートを、異世界側から思い切りぶった斬った。


 ゲートは二つに引き裂かれ、すぐに跡形もなく消滅した。



 これでアスフィーはこちらの世界に来れないはず。


 死神を嘘で騙し、挙句に鎌を盗むという奇行。

 そんな事をした異世界転生者は、俺の他にいるだろうか。


 どんな重罪を果たそうが、俺はあいつに会えるなら何だってやってやる。



「待っててくれ白雪……!今逢いに行く!」


次回投稿は11月7日予定です!

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