表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/17

番外編②  姉妹で映画鑑賞~GWの出来事~

前回の番外編からの続きです

 僕たちは家を出て、近くのショッピングモールにやってきた。地域最大級のモールで、若者にとっての憩いの場になっているこのモールには映画館やカフェ、様々なブランドのショップが入っている。開店と同時に入ったので、まだまだ時間はある。



「今日はどうしようか?」

 僕が真帆に尋ねる。真帆は入口近くの映画のポスターを指さす。

「映画を見よう!この映画、めちゃくちゃ面白かったって」

 真帆が指さした方向を見ると、高校生の男女がでかでかと書かれたポスターが貼られていた。男女が階段でぶつかり、入れ替わる恋愛映画らしく、半ばその体験をしている僕にとっては実体験を語ってあげたい気になる。



映画のポスターの隣には観た人の感想がところ狭しと書かれている。よっぽど感動したのか、筆圧を強めすぎたたせいで紙を貫通させてしまっているものもある。



 僕たちは真ん中の席の映画のチケットを買い、売店へと向かう。

「なに飲む?」

「どうしよう。真帆は、飲み物はいいかな」

「なんで?」

 僕が聞き返す。今回の映画は3時間近くの大作らしく、その間なにも飲まないなんて、下手したら熱中症になってしまう。



「ほろ、トイレに行きたくなってしまうし」

「そしたら、僕が大きい飲みのを頼むからシェアしよう。飲みたくなったら飲んでいいよ」

 僕たちは朝ごはんも食べずに来たので、かなりお腹がすいている。少し迷った挙句、僕はストローが二口つけられる大きな飲み物とポップコーン大、それにチュロスも頼む。

 映画館の席に着くと、思ったより人が入っていて驚いてしまう。

「人多いな。さすが真帆の友達が勧めただけある」

「そうでしょう」

 真帆が嬉しそうに返事する。

「館内少し寒くなってきたな」

「そう?お姉ちゃん、冷え性だからね」



 僕たちは少し話しながら、映画が始まるのをまつ。お腹がすいてしまっているせいで、チュロスをすぐに食べきる。真帆もお腹がすいているようで、映画が始まる前からポップコーンに手を伸ばし、その手が止まらない。



 序盤から見逃せないシーンの連続で、すぐにそのストーリーに引き込まれてしまう。食べるのも飲むのも忘れてしまうほどだ。映画も終盤になり、あちらこちらですすり泣く声が聞こえてくる。隣の真帆の席からも、切ない吐息が聞こえてくる。真帆も泣いているのか気になり、ポップコーンを食べる流れで真帆をちらりと見る。真帆が唇をかんで、足をそわそわさせている。



 僕がポップコーンに伸ばした手は空を切る。底のほうに気持ちばかりのポップコーンを見つけ、口に含む。飲み物を飲もうとストローに口をつけるも、いくら吸おうとしても何も口の中に入ってこないので合点がいく。ポップコーンを食べて、飲み物を飲む、そのコンボが強烈に発動したんだな。真帆を見ると、先ほどよりも真に迫った顔をしている。僕の視線に気が付いたのか、真帆が哀願するように僕の目を見て、口を動かす。辛うじて「トイレ」が読み取れ、僕が足を引く。



 真帆が立ち上がろうとするも、荘厳な旋律が流れ始める。映画のクライマックスが訪れ周囲が一心にスクリーンに目を奪われるのを感じる。僕と真帆はお互いに顔を見合わせる。この場面で席を立つのはまずいと思ったのか、真帆が席に深く座り、両足を必死に閉じる。その顔は苦悶の表情でいっぱいだ。



 真帆の表情を見てこれはまずいと思い、僕は真帆の手を取る。僕の手が冷たかったせいか、真帆がビックっとする。「いくよ」と唇の動きで伝えて、二人で席を立つ。ぎこちなく歩く真帆の手を握り、刺激をあてないように優しく真帆の手を取り、席を離れる。周囲からは冷笑の視線を浴びせられるが、何とか廊下まで出る。あとは降りるだけというところで、歩幅が極端に狭くなっていた真帆の態勢が崩れ、僕に倒れかけてくる。



 必死で倒れてくる真帆の腹部を抑えるが、「あぁ……っ、ぃや」と真帆が苦悶の表情でその場に座り込む。周囲の視線が僕らに注がれる。これではまずいと思い、真帆を背中に背負う。太ももに僕の冷たい手が当たっためか、「ひゃあ“、ぁおねぇ……、んンン」と声を出す。態勢の崩れる真帆をなんとかおんぶし、トイレへと連れていく。

 トイレから帰ってきた真帆は安どの表情を浮かべており、この世の苦悶から解放されたかのようだった。

「真帆も今なら悟れるかも」



 すでに映画が終わっていたので、ごみを片付け映画館を出る。

「ありがとうね、お姉ちゃん」

「気にしなくていいよ。大変だったね」

「ご、ごめんね。映画最後まで見れなくて」

 真帆が顔を赤らめながらいう。

「大丈夫だよ」

 僕が真帆の背中を「ポンポン」と軽くたたく。

「ポップコーンをたくさん食べたみたいだけど、お昼食べられる?」

「少しなら」

「そしたら、ケーキでも食べようか」

 僕たちはカフェへと目的地を決めて、歩き始める。



「本当はポップコーンもそんなに食べるつもりはなかったの。でも、お腹が鳴ってしまって、それを止めようとポップコーン食べ始めたら止まらなくなって」

 真帆の言い分が可愛くて僕は笑ってしまう。

「おいしい物でも食べて元気出して」

「むむむ、子ども扱いばっかりして。少しは怒ってもいいんだよ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ