第8章 ホントに彼女?(未来サイド)
自分の番が来る頃には、しっかり頭も冷やされて、いい感じに集中して臨めた。
彼女の姿が視界に入るまでは、、、。
あと1本という所で、入り過ぎた力みを取るように、誰を見るともなく少し視線を観覧席に向けた時だった。
三ツ矢さん、、、。
来た時に見かけたのは、やっぱり彼女だったんだ。
まさか、とは思ったけど。
こちらを見ている、と言うより、何故か私を見ているようで、まともに視線がぶつかってしまう。
すると、三ツ矢さんの顔が気持ち赤くなって、イタズラがバレた子供みたいに、恥ずかしげにモジモジし始めた。
誰だ、あれ?
学校での他人を寄せ付けないような、周りに憧憬を込めて畏怖される冷酷姫『時雨様』は、どこにもない。
ホントに、あの三ツ矢さん?
余りの衝撃からか、心臓がバクバク言い始める。
ヤバい、まだ試合終わってないのに。
無理矢理に顔を的に向けて、一瞬目をつぶって思考をシャットアウトさせる。
あと1本、集中しなきゃ。
息を乱さぬよう、慎重に弓を構えた。
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「最後、どうした?的に当たらないなんて、未来らしくもない」
勝利を持っていったマキが、ニヤニヤしながら話しかけてきた。
「うっさい。こんな日もあるんだよ」
クラスメイトを見かけたせいで、集中力を欠いたなんて知られたくない。
「普段はたやすく挑発に乗っても、射場では冷酷サイボーグなくせに」
「そんな呼び方するのマキだけだから」
「ま、何にせよ今回の勝負は頂きってことで。サイボーグに隙を与えた誰かさんに感謝だな」
「は?誰かって?」
「さあてね。んじゃ、また来週な!」
言うだけ言って、こちらが反論する暇もなく去っていく。
やっぱ、マキは食えない奴だ。
弓道場を出ると、マキが4人の女子高生に囲まれていた。
マキと同じ制服だから、きっと同級生だろう。
その中でも一際背の低い子がマキの腕にしがみついている。
これが女子校特有のスキンシップか。
なんか凄いな。
うちは共学だし、伝統校というのも影響しているのか、特に決まりはなくても、恋人同士が気安くイチャつける雰囲気じゃない。
女の子同士だって、腕を組んだり手を繋いだりとかは、あまりしてないと思う。
『私は彼女持ちだよ』
試合前のマキの爆弾発言を思い出した。
まさか、あれが例の『彼女』?
そう思ってみると、なんかそういう雰囲気かもしれない。
しかも他の3人のうち、カッコいい系女子と美少女系女子の距離もやたら近くて、同じような雰囲気を出してるような、、、。
彼女って、付き合ってるって事だよね。
つまりは、恋人。
って事は、、、。
モヤモヤと頭にあられもないイメージが浮かびそうになって、必死で打ち消した。
このまま彼女達を視界に入れたら、マジでヤバい。
しかも、何故か三ツ矢さんの柔らかに微笑む顔まで浮かんできて、頭がおかしくなりそうだった。