第2章 冷淡な姫(未来サイド)
うー、次の授業は数学かー。
かったるいなあ。サボるかなあ。
あー、でも席立つのも面倒くさい。
、、、適当にやり過ごすか。
休み時間もそろそろ終わる。
周りがざわめき始めて、ガタガタ椅子を引く音がする。
全てが騒音でしかない。
ヘッドホンで耳を塞いで、何も聞かずに済めばいいのに。
この学校は、携帯の所持こそ禁止されていないものの、色々と厳しくてイヤホンの持ち込みが禁止されている。
一人の世界に引きこもっているなって事らしいけど、そんなんで生徒が皆んな仲良くなるとか思ってるなら茶番もいいとこだ。
伝統あるってだけで、父親が「宗方家の子女たるものこういう学校が相応しい」と、訳のわからない事を言い、勝手に推薦入学の手筈を整えてしまった。
抵抗しようものなら、高校生にもなれず、放逐されそうだったので、渋々入学したのだ。
そんな成り行きなのに、学校に1年間通いきったのは表彰ものだと思う。
「おー、席につけー。授業始めんぞー」
出た。
クソチャラ教師。
意外と授業は難しいんだよなあ。
あー、何か公式ばっかで頭パンクする。
「、、、じゃあ、次の問題を三ツ矢。お願いな」
コラッ。
何ヤラシイ目つきで見てんだ。
エロ教師が。
「はい」
クラスの、というか学年でも一際目を惹く女子が、颯爽と黒板に向かうと、あちこちから、羨望に満ちたため息が聞こえてくる。
彼女の名前は、三ツ矢時雨。
冷淡にもとれるほど常に無表情で、正直何考えてるか良く分からない。
確かに目を見張るほどの美人だけど、ちょっと近づきがたくて自分の好みじゃないな。
私なんかに好かれたくもないだろうけど。
まあでも、騒がれるのも分かるな。
髪とか手ぐしで梳いても、全然引っかからなさそうだし、透き通るような白い肌は、ちょっと触るだけで痕がつきそう。
漆黒の瞳は吸い込まれそうだし、唇は禁断の果実のようだ。
一度味わってしまったら、多分もう離れられない、、、。
って何考えてんだ。
エロ教師じゃあるまいし。
誰が見ても美少女って言うのは本当にいるもんなんだな。
私みたいに誰が見てもダサい奴がいるように。
ま、どうでもいいけど。
「正解だ。さすがだな、三ツ矢」
褒められた当人は、ニコリともせず、ほんの少し頭を下げて席に着いた。
さて、見るものもなくなったし、来週の大会に向けてイメトレでもしとくか。
極力前髪で顔を隠し目を閉じると、意識は一気に授業から遠ざかっていった。