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レインボーロッジ

 トライバイテックでは新しい情報に混乱していた。

 情報局長であるロン・レインボーロッジは、その情報の重要性について重大な判断を下そうとしてた。情報局は兵器開発会社であるトライバイテックの中にあって秘密実験を行う部門でもあった。そして情報操作、他社への妨害などを行う実行部隊さえ持っていた。エツコ捕獲計画を立てたのも情報局であり、この局面にあって方針の転換を迫られていた。

 ロンにとって、会社の利益にならない因子は取り除かなくてはならなかった。

 新たな実験材料もまた日本人だというのは面白い偶然だったが、だからといって判断に影響は及ぼさない。そしてまた、エツコと接触した影響から能力が発生した可能性も依然として存在したが、トライバイテックが欲しいのは超能力者の集団ではない。ただ一人の実験材料が手に入りさえすれば、他はむしろ邪魔なだけだった。

 そこまで考えてロンは結論を出した。

 新たな材料で研究を続行する。ただちにパースへ電話を掛けた。まだ治療が必要だったとしても一刻も早くセルティックコーポレーションの近くから離さなくては安心して眠ることさえ出来ない。

出来るだけ早くにシドニーへ空輸する必要があった。その日本人の名前はリョウという。トライバイテック傘下の病院に入院中だったが、適当に理由をつけてシドニーへ輸送させよう。それから例のインド人には新たな任務を与えよう。あれはターミネーターのようなものだ。トライバイテックの人体強化プロジェクトで作られた兵士。強化された骨格、増強された筋肉。その肉体が兵器その物だった。

 電話を取り上げると直轄の部下であるインド人の携帯を呼び出した。

「コード、2485972。作戦終了。ただちに新たな任務へ移行する。新たな任務はエツコのデリートだ。抹殺を命ずる。コード、5799022」

 無機質な声で命ずると、そのアンティーク風の電話機をガチャン、と切った。それから目を閉じた。計画は数日の遅れが出たが、来週中には遅れを取り戻せるだろう。それにしても、とロンは考えた。

 抹殺計画を命ずるのは、何度やっても気分が高揚するものだ。


 パースでは、怪しい二人連れがスワンリバーで釣りをしながら話していた。

 一人は小柄でスペシャライズドと書かれたMTBのそばに座って釣竿の先をじっと見ていた。もう一人は釣竿を脇に置いたまま何かをしゃべっていた。

 その内容はわからない。だが、赤い対戦車砲と呼ばれた秘密結社が動き出したという情報はサニーの耳にも届いていた。その目的はわからないままだったが、赤い対戦車砲という組織自体、何を目的とする秘密結社なのかわからなかった。ただ、どうやら東洋の秘密結社であることは確かで、中東テロリストグループとの関わりは無さそうだ。

 サニーはコンピュータをパタンと閉じた。目的さえわからない組織が、何をしようとしているかなんて考えたって仕方が無い。

 それよりも、とサニーは顔を上げた。マリアが不機嫌そうな顔で部屋の中を行ったり来たりしていた。

「マリアちゃん、落ち着いて座っていようよ」

 マリアはきっとサニーを睨んだ。

「アベさん、ちゃんと頼んでおいたのにエツコ連れ出して何処行ったね?」

「大丈夫よ、すぐに帰ってくるって。それにこの島は安全やから」

「そんなのわからないね。エツコ、連れ去られるのはダメね」

 サニーは微笑んだ。

「マリアちゃん、どっちかというとアベさんのことが心配なんでしょ」

 マリアはサニーから顔をそらした。

「そんなこと、ないね。マリア、仕事しないアベさん、嫌いね」

 そういうとソファーにどさっと腰を下ろした。

「しかたないね。待つね。あとでアベさんに怒ってやるね」

 それから近くにあった雑誌を手に取るとページをめくる。旅行雑誌だった。だが、サニーには、ページをめくる早さと左足がイライラしている感じから、マリアがそれをちっとも読んでいないことがわかっていた。

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