第七十二話 元サナフ教国
砂塵が煙る闇夜。土壁でできた箱形の家々が疎らに建ち並び、重い静寂に支配された場所。何者をも拒絶する高い塀で囲まれ、ポツンと存在するそこは、元サナフ教国。現在はミルテナ帝国の侵略を受け、植民地と化した場所だった。
そんな場所で、我輩達は素早く行動する。高い塀をわざわざ乗り越えてきた我輩達は、この国で、なすべきことをなすために、夜陰に紛れて走っていた。
ふぅむ。しかし、クーデターを起こそうとしているレジスタンスを見つける、というのは、難しいのではないだろうか?
コソコソと動き回る我輩は、無表情で走るバルディスをチラリと見やり、そんなことを考える。
デイブを見送った後、我輩達は話し合った。次に通過地点として予定していた元サナフ教国でどのような行動に出るのかを……。
「分かってるとは思うが、話を聞いた以上、俺はファルシス魔国に対する誤解を解きたいと思っている」
「そうなると思いましたわ」
「同意」
「にゃあ(それは構わないのだ)」
砂漠を進む、砂のドームの中で、我輩達は同意を示す。
アルトルム王国であれだけ必死に誤解を解こうとしていたバルディスのことだ。こうなるのは必然というものだろう。しかも、もしかしたら我輩の探している欠片もあるかもしれない。そうすると、協力しないわけにはいかなかった。
「にゃーにゃ? (しかし、我輩達は何をすれば良いのだろうか?)」
ただ、問題になるのは、我輩達がどう行動するかということ。誤解を解くために、どう動けば良いのかなんて、猫の我輩には予測がしづらい。
「まずは、レジスタンスを見つけようと思う」
「レジスタンス、ですか……妥当ではありますが、危険ですね」
「困難、でもある」
「にゃにゃ? (レジスタンス?)」
我輩だけが話についていけない中、ラーミアとディアムが難色を示す。そして、我輩が理解できていないことに気づいたバルディスは、我輩にレジスタンスの意味を説明してくれた。
何だか、こうしていると仲間として認められていると思えるのだ。
「レジスタンスのクーデターを成功させるのはもちろんのこと、同時進行で、魔族がどう関わっているのかも調べておきたい」
「そうですね。それが一番良さそうですね」
「にゃあ(我輩、情報収集を頑張るのだっ)」
「諜報、俺の専売」
そうして方針を決めた我輩達は、デイブと別れて一週間経った今、夜闇に紛れて元サナフ教国に侵入し、そのレジスタンスとやらと接触しようとしていたのだった。




