第六十七話 美形の救い主
おほんっ。私の名前はデイブ。決して、真ん中の文字を取ったり、消したり、隠したりして呼んではいけない。そんなことをすれば、私のハートにザックリと傷ができてしまう。何度でも言おう。私の名前はデイブです。デイブ。
さてさて、そんな私はしがない行商人です。今は、妻と娘を連れ、砂漠越えの真っ最中。しかし、そんな時に現れたのは、『砂漠の覇者』と呼ばれ、恐れられているジャイアントスコーピオンでした。もはやお先真っ暗の絶望的な状況に、私、心臓がバックンバックンと破裂しそうな思いをしました。
サンドホースと呼ばれる砂漠で活動する灰色の馬を繋いだ馬車を走らせ、私達は必死に逃げました。しかし、世の中は無情。サンドホースは、無茶な走りを続けたせいで倒れてしまいます。ついでに馬車も倒れて、私はボフンっと外に投げ出されてしまいました。
「ニーナ! ソフィア!」
砂漠の覇者が迫る中、咄嗟に思ったのは、最愛の妻と娘を守らなければということ。私と同じように馬車から投げ出され、意識を失ったらしい妻と娘の名前を呼び、二人を庇うようにして私はその身を投げ出します。私のこのポヨンポヨンなお肉を食べて、満足してくれることを祈って、必死に砂漠の覇者の前に立ち塞がります。
迫る砂漠の覇者に、私はこれまでかと、目を閉じました。
……しかし、私のその認識は、すぐに覆されることとなりました。視界が悪い中、私は、確かに、砂漠の覇者が頭から地面に埋もれる瞬間を見たのですから。
「タロ、そのままそこに居ろっ! 『紅蓮弾』」
「では、私の番ですね。『大滝』」
「『影斬』」
次々と何者かの声が聞こえ、突風が吹き、私はそこで太い足に力を入れて踏ん張ることに精一杯でした。そして、ようやく風が収まり、砂で覆われた視界が晴れてくると、信じられない光景がそこには広がっていました。
「ジャイアントスコーピオンが……あの、砂漠の覇者が……」
細かく切断され、事切れた砂漠の覇者。その傍らには、ターバンを巻いた美しい男女が三人と、どこか体型に親近感を覚える紳士服を着た白猫。
どうやら、私達は助けられたようでした。それも、信じられないくらいの強者によって。
私は、ひとまず倒れた馬車を土魔法で持ち上げて元に戻し、妻と娘をその中に連れて行きます。サンドホースの様子も確認して、しばらく休めば問題なさそうだと分かれば、私がするべき大切なことはあと一つ。美形集団へのお礼を言うことです。
「あ、あのー?」
美形集団は、どこか急いでジャイアントスコーピオンの肉を回収しており、少し話しかけづらかったが、思いきって無駄に大きなお腹から声を出す。
「ん?」
「にゃ?」
「はい?」
「?」
猫まで返事をしたのには驚いたが、近くで見ればますますこの美形な方々が輝いて見える。
「助けていただき、ありがとうございましたっ」
あまりの輝きに、直視できないとばかりに、私はお辞儀をしてお礼を告げる。
「「「誰?」」」
「にゃ?」
しかし、返ってきたその思わぬ言葉に、私はそのまま硬直してしまうのだった。




