第五十四話 タロという猫
遅くなりましたが新たな更新です!
全くもって予想していなかったタロの実力。あの、普段ゴロゴロしているばかりの大福みたいな猫は、思いがけない俊敏な動きと強大な力で仮面の魔族を圧倒した。
守るために遠ざけたのに、守る必要を感じられない強さを持っていた猫。紳士を目指しているという変わり者の猫。勇者として呼び出されたという異常な猫。タロには、いつもいつも驚かされてばかりだ。
「侵入経路、この道」
そして現在、俺達は、アルトルムの城へと侵入しようと、ディアムが入手した城内図で位置の確認を行っていた。
「にゃあ(我輩、よく分からないのだ)」
「にゃ(同じくです)」
ちなみに、タロとチャーも連れていくことになった。タロは実力を見たから良いとして、チャーまではどうかと最初は思ったものの、何かあった時に自分が出ていけば人間の目を誤魔化せると、必死に力説するチャーを見て、考えを改めた。…………決して、ウルウルとした目にやられたわけではない。
少しばかり、ラーミアとディアムの視線が痛い気もしたが、それはそれだ。作戦に支障はない。
「タロ達は、俺達について来ればいい。侵入は夜の内に行う。内容としては、姫と王の安全確保を俺とタロ。凶器の確保をディアム。密偵の確保をラーミアに行ってもらう」
「にゃあ(お、俺は?)」
「……チャーは、騎士の引き付けという任務だ」
「にゃーにゃあっ(おぉっ、俺が引き付けてる間に、師匠達が活躍するんですねっ)」
「そういうことだ」
目を輝かせてやる気満々なチャーを見て、少しだけ罪悪感が胸の中に残る。本当は騎士の引き付けなど必要ない内に、全てを終わらせる予定なのだから、チャーは必要ないのだ。
しかし、チャーを置いていって泣かれるのも、また何者かに利用されるのもいただけない。この選択が最善だと信じるしかなかった。
「にゃっ(師匠っ、俺、頑張りますっ)」
「にゃあにゃ(うむ、互いに頑張ろうぞっ)」
「では、二時間ほど休憩を挟んで、すぐに出発ですね」
ミルテナの騎士や仮面の魔族を相手にしたのは午前中だったが、今はもう外も暗くなってきている。普段ならまだ活動しているくらいの時間ではあるが、今回は徹夜で作戦に挑むことになるため、休める時に休んでおいた方が良いだろう。
「にゃあ。にゃにゃあ(ところでバルディスよ。我輩、まだささみ肉をもらってないのだ)」
……タロにささみ肉をあげてから、休むことにしよう。
そうして、闇が深まり雨がポツリポツリと降り出した頃に、俺達は動き始めた。




