第四十五話 陰謀説
「はぁ……それじゃあ、どうするかを考えるか」
「えぇ、そうですね」
タロが扉から出て行って、バルディスはしばらくその扉を見つめていたが、そうしていても埒が明かないと思ったのか、本題に入るべく声を出す。
「? ディアム、どうしましたか?」
「……タロ、引き入れなくて、良かった?」
「そうですね。タロは勇者で少し強いかもしれませんが、ただの猫です。このまま私達に関われば、良いことなんて一つもありませんわ」
どこか思案している様子のディアムに問いかけられ、ラーミアは丁寧に答える。それに対して、ディアムは少し顔をしかめたが、それ以上反論することはなかった。
「さぁ、それでは、状況整理と方針決定を行いましょう」
「……なら、俺から。エルブ山脈調査結果。アルトルムから派遣された騎士、何者かに撃退された。その者達は、やはり、帝国の者。目的、パクの花採取の妨害。俺達が行った日、襲撃してこなかったのは、先に、スラムの方に打撃を与えたせいだと思われる。早急な対応、必須」
ディアムの説明に、ラーミアは大きくうなずくと、次はバルディスの方へと視線を向ける。
「それじゃあ、俺はさっきのタロからの情報だな。タロは、この国の姫が何者かに唆されて、明日、国王たる父親を殺すよう言われた場面を目撃している。タイミングからして、恐らくは、その何者かは帝国の間者だろう。姫は毒の影響で部屋に閉じ込められているらしく、国王が特効薬を自らに使わないことに対して不満を覚えているらしい」
「それは、高確率でその何者かが特効薬の存在を姫に教えたのでしょうね」
「あぁ、俺もそう思う。そして、ここからは前回の調査結果を照らし合わせて考えたことだが……ミルテナ帝国は、アルトルムの民にファルシスへの不信感を持たせることで、自らの国に対する注意を散らしているのではないかと思う」
前回のスラム街における調査で分かったことは、ミルテナ帝国がアルトルム王国を攻めようとしていることだ。そこから考えるに、この意見は妥当なもののはずだった。
「それに加え、もし、アルトルムの民が弱ったところでミルテナ帝国が攻め込み、アルトルムの民を救ったとなれば……必然的に、民にとって悪は病に対処できなかったアルトルム王家と、病を蔓延させたファルシスとなる」
つまりは、いずれ、アルトルム王家を滅ぼし、ファルシスを攻めるための布石として、アルトルムの民を苦しめているという見解だ。
「しかも、敵には魔族が居る。姫が国王を殺そうが殺せまいが、姫を操った者が魔族だというような演出をされてしまえば、確実にファルシスへの不信感が強くなる」
それはもちろん、エルブ山脈でパクの花の採取を魔族が妨害しているように見せかけられても効果はあるが、より効果的なのは、やはり王族の目に触れることだろう。つまりは、この姫君の件も早急な対応が望まれるということだ。
「では、これからの方針はどういたしますか? バル」
今、分かっている情報と、考えられる事態とを述べたところで、ラーミアは話を進める。
「そうだな……まずは今日中にエルブ山脈の襲撃者を全て撃退する。その上で、パクの花をある程度採取し、薬を作る。翌日の朝までには、その薬を姫のところまで持っていき、どうにかして飲んでいただき、ナイフも取り上げる。後は、姫を唆した者を炙り出し、捕らえる、といったところか?」
「そうですね。では、細かいところの詰めは後回しにして、まずは襲撃者をどうにかしましょうか。ディアムもそれでいいですね?」
「承知」
そうして、バルディス達は即座に動き出す。
それを、何者かが聞いているとも知らずに
……。




