第三十九話 作戦と実践(三)
すみません、遅くなりました。
とりあえず、更新です。
「にゃー(すまないが、少し良いだろうか)」
「うっ、猫?」
「にゃーにゃにゃあ(師匠ー、ちょっと待ってくださいー)」
とりあえず、話すのに邪魔な手紙は地面に置いて、我輩、宮廷薬師のひょろ長い男性、エイル・ゴートという名の者に声をかける。
「にゃあ(貴方には、薬を広めてほしいのだ)」
そう言いながら、我輩、エイルの足に体をスリスリと擦り付ける。
「みにゃあ(なるほど、擦り寄れば良いんですねっ)」
我輩の様子を見ていたチャーは、すぐに納得して、我輩と同じ行動を取る。チャーもやはり、人間には擦り寄ることが効果的だと知っているのだ。
「にゃあにゃ(どうか、薬を広めて、病に倒れたとされる者を救ってほしいのだ)」
「にゃー(お願いします)」
そう言って、手紙を口にくわえて見上げてみると、何だかエイルの顔が青白いことに気づく。
「た、のむから、鳴かないで、くれ」
頭を押さえて絞り出すように声を出すエイル。それを見て、我輩、ピタリと声をかけるのを止める。そして、今一度、『探索』と心の中で唱えて、エイルの情報を読み取ってみる。
『エイル・ゴート
男。
二十八歳。
ゴート子爵家次男。
宮廷薬師として十五の頃から勤めている優秀な人材。現在、マリス毒に侵されて頭痛、吐き気を発症中』
うむ……顔色が悪いのはこのせいだったのだな。
何度か検証していくうちに、この『探索能力』は、我輩が知りたいと思った情報を優先的に表示することと、状況の移り変わりによって表示内容に変化が表れることが分かった。今回も、最初の『探索能力』による表示では見られなかったエイルの現状が書かれており、それはきっと、エイルの顔色が悪いことを我輩が気にしたからなのだろう。
「? これ、は?」
ゴチャゴチャと考え込んでいると、エイルは我輩がくわえている紙に気づいてくれたらしい。
『この紙を受け取った者は、猫の案内に従ってください』と書かれているはずの紙を渡した我輩は、何やらブツブツと呟いて考え込むエイルを眺める。
「分かった。行こう」
しばらくして出たその結論に、我輩、返事をしかけて、鳴かないように頼まれたことを思い出し、口を閉じる。そうして、チャーと目配せした我輩は、スルスルと教会へ向かって歩き出した。




