第二百二十八話 黒装束との取引(一)
ディアムが帰ってきて、バルディスが説教を受けた。バルディスは大きな体を縮こまらせて謝罪を繰り返している。
……しかし、そろそろ黒装束の者達が起きそうなのだが?
説教の途中で、我輩、黒装束の者達が身動ぎするのを目撃する。
現在、黒装束の者達はラーミアと同じように『操術』を完全に解くわけではなく、いわば無効化状態にしており、青年の方は死んだことにするべく、しっかり解除していた。もちろん、騒がれないようにするために、それぞれ縛り上げてはいるものの、傷つけるような意思はない。
「……ぅ……こ、こは?」
そうして、ついに黒装束の者の一人が目を覚ましてしまった。さすがにディアムも、その様子を見過ごすわけにはいかなかったのか、バルディスへの説教を一時中断する。
「バル、説明」
「……できれば、全員目を覚ましてからにしたいんだが……仕方ないか」
とりあえず、いつまでも正座という体勢のままでいるのは辛かったのか、バルディスは足を崩して立ち上がろうとして……なぜか諦める。よくよく見てみれば、どうやら足が痺れるという現象のせいで立てないらしかった。しかし、それでもこのままではいけないと思ったのか、ディアムに椅子を持ってきてもらいどうにかこうにかそこへ座るのだった。
「あー、まずは、俺を襲ってきた黒装束ども、記憶はあるな?」
『俺を襲ってきた』という言葉に、ディアムの目がスゥッと細められるが、ディアム自身は後で話を聞くことにしたらしく、口を開くことはなかった。
「っ、あんたはっ! って、あれ? 自分の意思で動ける?」
「あぁ、それは、タロが……ここに居る俺の使い魔がお前らにかかってた『操術』を限定的に解いたからだ」
「そう……じゅつ……そうだ。俺は、俺達は、あの怪しい人間を調べようとして、聖騎士長に襲われて、意思を封じられたんだ」
蒼白な表情でそう言った黒装束の男は、周りに自分と同じ境遇の者達を見つけて混乱しているようだ。
「とりあえず、続けるぞ。その『操術』は、今、お前達を縛る力はない。命令は伝わってくるだろうが、それだけの状態だ」
「……なぜ、俺達を助けたんだ?」
「そうだな……最初は、どういう意図があって襲ってきたのかを調べるためだったが、今は、俺達に協力してほしいと思っている」
そう、協力だ。我輩とバルディスが話し合った結果、我輩達は協力した方が効率が良いだろうということに行き着いたのだ。
「協力?」
「そうだ。お前達を操った奴を、捕らえるか殺すかするための協力だ」
我輩達の目的は二つ。一つは我輩の欠片集めのために、聖騎士長を助けるということ。もう一つは、魔族であるマギウスを捕まえるか殺すかして、魔族への悪感情をこれ以上拡大させないということ。今までは、本当に魔族が関わっていないにもかかわらず、酷い風評被害に遭っていたが、今回に関しては本当に魔族が深く関わっているため、それしか方法を取れない。
「……あんた達は、いったい何者なんだ?」
ゴクリと唾を飲み込み、問いかけてきた黒装束の男は、思いっきり我輩達を不審な目で見ている。ここは、我輩が甘えることでその空気を壊すべきかと思案したものの、それより先にバルディスの方が動いた。
「俺達は、お前達を操った奴に捕まって、操られたラーミアの仲間だ」
そう言えば、黒装束の男は固まるのだった。




