表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
144/264

第百四十三話 異常な場所(一)

 リリナとラーミアを送り出して五日。ハーグを捕まえてから三日が経った今日。我輩は、ディアムとともに街を歩いていた。

 目的は一つ。あの時のレディに聞いた、異常な場所とやらに行くためだ。一応、『騎士の詰め所の奥にある建物』であり、『地下』であることまでは分かっているものの、どうやら、『騎士の詰め所の奥』というのが具体的にどこなのか分かりにくいとのことで、我輩、再度詳しく情報を聞き、ディアムをそこに案内する役割を申し付けられたのだった。



「にゃあ(むむ、マウマウはやはり多いのだ)」



 マウマウを素早く撃退しながら、我輩、前にレディとミィに出会った場所へと向かう。しかし……。



「にゃ……(都合良く居るわけがなかったのだ……)」



 そこには、あのレディの姿も、ミィの姿もなかった。



 確か、あの時、レディは上に同胞達が住んでいると言っていたな……。



 そう考え、我輩、上を見上げる。



「にゃ(高いのだ)」


「? タロ?」



 さすがに、この高さの建物を、何の足場もなく一気に飛ぶのは無理だ。……無理、のはずだ。



 我輩、自分の身体能力を詳しく知らないのだ。



 この世界に来てから、我輩、自分の身体能力が上がったことだけは知っている。ただ、それがどれほどのものなのか、全て確認できたわけではない。とりわけ、ジャンプ力となると、ついつい高いところが怖いと加減してしまうため、自分でどれだけ飛べるのかが分からない。



「にゃ……(ここは、試すべきか……)」



 立ち止まって鳴く我輩を不思議そうに見るディアムの視線に、我輩、とりあえずバルディスへと連絡を入れることにする。



《にゃにゃ(バルディス、これから我輩、自分の限界に挑戦してみるのだ)》


《は? なんだ? 藪から棒に》


《にゃーにゃ(ディアムには、もし我輩が登れたら、ここで待っていてほしいと伝えてほしいのだ)》


《……変なことをするんじゃないよな?》


《にゃ(ただ同胞に会いに行くだけなのだ)》


《分かった。伝えておく》



 そんな言葉を聞き終えると、我輩、助走をつけるため、少し後ろに下がる。そして……。



「にゃっ(行くのだっ)」



 おもむろに走り出した我輩は、日本に居た頃では考えられない、地面から建物の屋上へのジャンプを決行したのだった。



「にゃっ(ほっ)」


「……え?」



 ディアムの呆けたような声が聞こえる中、景色はどんどん下に流れていき、とうとう建物のてっぺんを…………悠然と追い越していく。



「……にゃ? (……う、む?)」



 下を見れば、辿り着く予定だった屋上は、少し小さく見える。……それどころか、この勢いだと、屋上を飛び越えて別の場所に行ってしまいそうだ。



「ふにゃあぁぁぁぁぁあっ!!! (ひゃあぁぁぁぁぁあっ!!!)」



 我輩、あまりの高さに悲鳴を上げながら、落ちて行くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ