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第百十七話 帰らない猫

 タロとリリナを送り出して三時間。タロもリリナもなぜか帰って来ない。タロに関しては、念話をしても通じない。これは、何かあったと見るべきだろう。


 そう考え、俺は眉を潜めてドームの外をにらむ。


 未だに保たれている砂のドームを見る限り、死んだということはないにしろ、良くない状況であることは確かだ。すぐに、ディアムに引き上げるよう連絡を入れた俺は、ひとまずドームの中でどっかりと座り込む。



「心配ですね」


「……あぁ」



 今はレジスタンス内での混乱も収まり、それぞれがドームの中で過ごしている。俺達もその例に漏れず、俺とラーミアの他に、本来タロとディアムも居るはずのドームで待機中だ。


 ロッダとノルディはまた別のドームで、今は俺達と同じようにリリナ達の帰りを待っている。



「ただいま戻りましたよー」



 と、そんな時、暗がりの中で随分と陽気な声が響く。それは、俺達の待ち人ではなかったものの、聞き覚えのある声。ジルクとかいう人間の声だった。



「ジルク副隊長。どこに行っていた?」



 ドームを出て確認してみると、ロッダとノルディも同時に出てきて、ジルクを問い詰める。



「んん? 言ってませんでしたっけー? 火事が起こったみたいだから、僕が様子を見てきますって」


「聞いてないの」



 剣呑な目でジルクをにらむノルディ。しかし、ジルク本人はといえば、飄々としていて反省している様子がない。



「それよりも、町に行っていたなら、リリナとタロを知らないか?」



 ヘラヘラとしているジルクを見るのは不快だったが、こちらの用件の方が先だ。目撃情報さえあれば、捜しやすくなるのだから。



「へっ? リリナさんとあの猫ですか? 町に居たんですか?」



 ただ、キョトンとしたその表情を見る限り、こいつはリリナもタロも見かけていなさそうだった。



「そうか。なら、ディアム待ちだな」



 ディアムには元々、この火事の原因究明と魔族がミルテナ帝国と通じていないことの証拠探しを命じていたのだが、途中でタロがリリナと別れ、そのタロの行方も分からなくなっている。余計な仕事が増えた分、ディアムが得た情報も少ないだろう。本来なら、情報が少ないことを嘆くべき場面である。しかし……情報よりも何よりも、今はタロの無事が気になった。あんな大福みたいな猫でも、仲間の一員なのだ。

 機密性保持のために、念話で情報のやり取りをすることはない。だから、今はまだ、タロの無事すらも分からなかった。

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