第百九話 我輩の散歩(四)
「ヂューッ」
「にゃおーんっ! (猫流奥義、クルクルアタックっ!)」
「ヂヂューッ」
「にゃおーんっ! (猫流奥義、ガリガリっ!)」
ミィ達と別れてだいたい二時間後、我輩、ただ今マウマウ達との戦闘中なのだ。ミィのことを見て、庇護欲を持った我輩は、マウマウをできる限り排除せねばと考えたのだ。
「にゃおーんっ! (猫流奥義、ガリガリプラスっ!)」
しかし、あのレディに拒絶されたことは、当然だと分かっていながらも、我輩の心に傷を与えていた。だから、マウマウ狩りも今は楽しめない。
一通りマウマウを倒し終え、二つの山を築くと、我輩、またマウマウを探して走り出す。せめて、あの母娘が安全に暮らせるよう、マウマウを狩り尽くすつもりだった。
「ヂューッ」
「ヂュッ」
遠くで、またマウマウの声を聞いた我輩は、即座にその方向へと走る。ただ、走っていて、我輩、その場所に見覚えがあることに気づいた。
これは……さっきミィと通った道なのだ。
母親の元へと案内してくれたミィ。その時に通った道と、今通っている道は、どうやら同じであった。そして……。
「みー……(かか……)」
かろうじて、だったが、我輩の耳は、ミィの声を捉える。最悪なことに、マウマウどもが居る方角で。
「っ、にゃあっ(っ、急ぐのだっ)」
不味い。これは不味い。ミィでは、あの幼子では、マウマウ達に太刀打ちなどできない。逃げることさえ、きっとままならない。
我輩、速度を上げて猛スピードで走り抜ける。そして……。
「みにゃあっ(ミィ、逃げなさいっ)」
「みー(かかぁ)」
「「ヂューッ!」」
我輩が見た光景は、今まさに、マウマウどもが母娘に襲いかかろうとする姿だった。
「にゃおーんっ! (猫流奥義、ガリガリプラスっ!)」
「「「ヂヂュッ!?」」」
我輩、マウマウ達を背後から強襲し、母娘に襲いかかろうとしていたものを切り裂く。
鮮血が舞う中、我輩、とにかく母娘を後ろに庇い、立ち塞がる。
「ふしゃー(我輩が相手なのだっ)」
「みーっ(おじしゃんっ)」
「みにゃ……(あ、あなたは……)」
チラリと母親であるレディに目を向けると、彼女はフラフラとしていて、立つのもつらそうだった。怪我をしている様子はないことから、きっと、原因はその痩せ細った体に関係があるのだろう。
「にゃあにゃ。にゃー(お二人とも、ここで待っていてほしいのだ。すぐに、片づけてくるのだ)」
我輩、頭の中でキングコッコーの肉がまだ大量にあったことを思い浮かべながら、さっさと戦いを終わらせるべく、毛を逆立てて、魔力を解放するのだった。




