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じぶんだけの宝物

作者: S.S

いよいよ都内に就職が決まった。

アパートを借り初めての1人暮らしのため、実家で荷造りをしている。

狭いアパートなので、今あるものを全て持っていくことはできない。


僕は自分で思っていた以上に多くのモノがあることに戸惑いながらも

ひとつひとつを手に取りながら、遅々として進まない作業に没頭していた。

明日の午前中までにはまとめないと引っ越しに間に合わない。


頭ではわかっているのだけれども、1つ手に取るたびに

「こんなの持っていたんだなぁ」

なんて思い出が浮かんでくわけだから時計の針ばかり進んでゆく。


机の引き出しの奥を手で探ると、

塗装が剥げて、所々に擦り傷、切り傷の目立つ二つ折りの携帯電話を見つけた。

外側の液晶はヒビが入って、もう判別できない。


そういえば中学生になって初めて買ってもらった携帯電話がこれだったな。

父と母に頼んで、当時としては最新機種を選んだ時、父から


「3年間は大切に使うんだぞ」


と言われ、まわりが新機種に変わるのを少しうらやましく思う時もあったけど、

それでも父との約束を守ったことが脳裏に蘇る。


何となく裏蓋を外してみると、そこには買った時の日付がマジックで書いてあった。

こんなことしたら売る時に査定が下がるんだけどな。

だけど、それぐらい好きになれるものだったから長い間大切に使えたのだ。


これから始まる新生活で、形あるものでなくとも

「これだ」

と思える好きなもの、コトに出会えるといいな。


ボロボロの携帯を真新しいバッグに入れる。


どうやら僕の引っ越し作業はゴールが見えてきたようだ。

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