4話 『贈り物』
次に向かったのは市場の様な場所だ。
馬車が荷台を引いてるような光景なんだが……引いてるほうが可笑しい、
昔、恐竜図鑑で見たような小さめの恐竜が荷台を引いてるのだ。何あれチョ〇ボ?
「…………」
「どうしたの? アヤタさん?」
「いや、なんでもない。大丈夫だ」
なるほどね、あれがこの世界の馬車なのか。面食らってしまったな。
それにしても中々広い村だな。時代は中世と少し似ているが、魔法陣についてる文字のようなモノが書かれている看板が
あちこちで見かける。さすが異世界、字が読めないな……何故か言葉は通じるこれも異世界の謎だ。
市場…というより商店街のように、いくつかの店が集合しているように見える。
「此処では色んな食べ物とかが売られてるんですよ! 困ったらここに来れば大抵の物は揃います!」
所謂スーパーって所か。パッと見たところどれも新鮮でおいしそうだ。
今度ふらっと来てみるのも悪くないかもな。
「野菜や果物が主に売られているんだなー」
「そうですね。この村は、野菜や果物などの作物の栽培が中心になっています」
「なるほどな。この赤いトマトみたいなのはなんだ?」
「トマテですね。アヤトさんの住んでいる地域ではトマトというのでしょうか?」
「そうだな、その他にナスやキュウリ、色々あったぞ!」
「聞いたことのない作物ですね!」
アヤタに顔を近づけ、目を輝かせて話しにくいつくリア。
「ま、まあ……いつか食べさせてあげるよ」
日本とこの異世界を行き来できればの話だが……異世界に召喚された原因であろうこのネックレスは、
つけても触れても何にも起こらない。
「それは楽しみです! 約束ですよ」
「おう、料理もマスターして俺がリアに最高の野菜料理をご馳走しよう!」
約束ときたか……
アヤタは罪悪感を感じながら約束を交わした。
「せっかく来たので、何か買っていきますか?」
「いいのか? 俺はお金を持っていないのだが……」
ここは格好良く男の俺がお金を出してあげたいところだが、この世界のお金という物を持っていない。
異世界に持ってきたものは、村長の家で干されているであろうTシャツと短パンとパンツくらいだ。
せめてスマホでも持って来とけば良かった。いや、どちらにせよ水没していたか。
「大丈夫ですよ。私が持ってきました!」
「何から何まで悪いな……この恩は数倍にして返さないと」
にこっと微笑むリアに見とれつつアヤタは申し訳なさそうに応える。
「食べ物も悪くないですが、アヤタさんはこの国や魔族のこともあまり詳しくなさそうで、大変危なっかしいので……」
そう言うとリアは、小さめのバーのような店に入る。
「失礼しまーす…」
そこは薄暗く、色んな向きに配置されている棚に、水晶や飾り物が沢山並べてある。
こういう店もあるんだなぁと周りを見渡すと、奥の方でスタンバってる店主らしき人と目が合った。
本当に店主なのか。かなり筋肉質で俺よりも十数センチほど背が高くごつい。
ここは挨拶をして好感度を上げないと……
「こんにちは」
「よう、兄ちゃん。見かけねえ顔だなぁ」
「あ、ダリヤさん! こんにちは、この方は、救世主のアヤタさんですよ!」
リアが店主の声に反応して先に応える。見知らぬ人に救世主ってなんだか恥ずかしいな
「ほぉ…アンタが救世主か。よろしくな! おれはダリヤだ」
「よろしく、俺は広瀬 綾汰だ」
歩み寄り、ダリヤと握手を交した。大きく硬い掌に潰されているような感覚がした。
この人は筋トレが趣味なのか……
「そうそう、アヤタさん! こんなのどうでしょう?」
彼女が手に持っていたのは、銅のような金属でできた腕輪だった。古代文字のような掘り込みが施されており、真ん中には赤く輝く丸い石
が埋め込まれている。
「なんだか高そうだ……大丈夫なのか? リア」
「はい! 問題ないですよ! これは、レストといって魔除けの効果があったり、魔力を上げたりすることができます!」
身につけるもので魔力アップとかあるのか……異世界凄いな
「どうぞ。私からの贈り物です。お守りとしてつけてて下さい!」
彼女は支払いを済ませ、細く白い指でアヤタの手を握り、腕にレストを着けた。
「ありがとうリア。大切にするよ!」
ごつい店主とお別れし、外に出ると、日が沈み始めていた。
夜から突然、昼になったんだ。そう思うと急に眠気が襲ってくる。
「日が暮れてきましたね、そろそろ帰りましょうか。宴の準備ももうすぐ終わるかと思います」
「なんだかもらってばっかりだな、罪悪感を感じるよ」
「そんなことありません! これからアヤタさんには、この村を、この世界を救ってもらうのですから!」
そんなに期待されているのか俺は。村どころか世界を救うレベルなんだな…全く実感が無いんだが
本当に特殊な力が備わっているのか……?
「俺に期待しすぎないでくれよ。特殊な能力とやらが通用しなかったら、もともとのステが低い俺はスライムレベルだぞ…」
「最後の方よく分かりませんでした」
そんな会話をしながら二人は宴の会場へと向かった。
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