1話 『異世界召喚』
「どうりで上手くいかないわけだ……」
両親は医者で、弟は成績優秀、それに対して俺は勉強も運動も出来ずに引きこもっている。
挙句の果て両親に ”私達の子供じゃないの” と告げられた。冗談だと思ったが、どうやら本当らしい。
突然、謎の男が赤ん坊だった俺を抱き抱えて家にやってきては、ネックレスと一緒に母さんに渡し、その場で倒れ、死んだとのこと。
男の身元も分からず、引き取ることになったという。
彼は鏡の前に立つと、青く濁った石が埋め込まれているその例のネックレスを首にかけた。
「ははっ……似合わねえな」
鏡に映った自分を見つめ、自傷気味に笑う。
不意に、首に冷たく気持ちの悪い鉄の感触を得て、やっぱり外そうと手をうなじに伸ばそうとするが、突如ネックレスが輝きだし、
鏡で反射された何筋もの青い光が瞳孔を刺激し、思わず目を瞑った。
部屋が揺れ、机の上にたまったカンやペットボトルが床に落ちる。
やがて揺れは収まり、何事もなかったかのように収束した。
「なんだったんだ……」
突然の出来事に呆気に取られていたが、足の裏に違和感を感じ、下を向いた。
そこは見知った自室の床ではなく、青く透き通った綺麗な水面に変化していた。
刹那、視界が暗転していた。
苦しい……息ができない……
目を開け、水面から射し込む光を見つけると、急いで水面へ向かって浮こうとする。
水面から顔を出し、辺りを見渡す。
「救世主様きたあああああああ!」
「ひゃああああああああ!」
俺が気づくと周りは人だらけ。しかも何故か俺だけ泉の中。
そしてこの歓声。何が起こってるか理解が追い付かない。誰か教えてくれ。
「救世主様、早くこちらへ」
――これが広瀬 綾汰の異世界召喚だった。
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