プロローグ
「魔物が攻めてきたぞ!」
そんな声が村中に響き渡る。
村の者は皆、必死に魔物が現れた方から逃げて行く。
子供の泣き声や大人の怒号。叫び声。
その行き先は一つ、村の外へ逃げるわけではない。
救世主の下へ集まっているのだ。
その救世主もまた、ようやくといった感じで立ち上がる。
「さぁて、救世主様の初めての魔物討伐と行きましょうか!
行くぜ魔物共! 死ぬ準備は出来てるか!」
村の至る所から炎や煙が上がっている。
救世主は地に伏し、息も絶え絶えの状態へとなっている。
「ぁ……はぁ、はぁ……なんだよ、これ」
地に伏した状態から顔だけを上げて状況を確認する。
俺は救世主だったはずだ。それなのに何も出来やしなかった。
現実世界と一緒で、何の力も持ってなかった。救世主様なんてものではなかった。
「なんだよ、なんだよ……俺は救世主なんだろ。俺には凄い力があるんじゃなかったのかよ……!」
悔しさに任せて地面を叩こうとしても体がそれを許さない。
血がだらだらと零れ、動く力すら無いと警報を鳴らしている。
これ以上血が零れたら死ぬんじゃないか、そういった感触を感じる。
それでも魔物に噛み千切られた胴部から血が止めどなく零れる。
「ぁ、ぁ……」
視界が揺らぎ、意識を失いそうになる
――もうダメだ。
その瞬間、何かが解放される感じがした。
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