第7話
部屋に満ちた光が、時の流れをゆっくりと進ませる。
男の手から漏れる光が、クレアの体に触れると、徐々にクレアの腕にある黒い痣が消えいく。
この一か月、レヴァンはこの痣を見る度に引き裂かれる様な感覚に襲われた。
段々と弱っていき、今にも死んでしまいそうな儚い表情で優しく笑う彼女を救いたいと何度もそう願った。
光が痣を消していくまでの、その時間、光に包まれるクレアを見つめながら、レヴァンはそんなことを思い出していた。
それから何時間たっただろうか、光が段々と弱まっていき、首筋まで伸びていた痣はまるでそこにあったのが嘘だったかの様に消えていた。
あまりに美しい光景に目を奪われ、立ち尽くしていたレヴァンだったが、光が消えたことに気が付き、我に返る。
「…終わったのか?」
〈失敗した〉
男の口からそう聞こえればレヴァンにとっては全てが終わってしまうこの状況で、レヴァンは恐る恐る結果を聞いた。
恐怖に染まったレヴァンの顔を横目で見ながら男は新しい煙草に火を着ける。
そして
「あぁ終わりだ。これでもう、この子は死なない」
レヴァンがずっと望んでいた、クレアの死を否定する言葉を男が口にした瞬間、レヴァンは慌ててクレアの眠るベットに駆け寄り、声を掛けた。
「おいっ!クレア!?」
眠っているクレアはレヴァンの声に返事をしなかったが、 穏やかな呼吸と、少しだけ明るくなった表情、そして握った手に生きていると感じさせてくれる暖かい感触を感じ、レヴァンの目から、涙が流れた。
その場で立ち上がったレヴァンは乱暴に顔を擦り、男の方を振り返ると
「…ありがとう」
笑いながら涙を流すレヴァンは真っ赤になった顔を手で覆いながら、絞り出した様な掠れた声でそう言った。