夜更かし
ただ繰り返されていく日常。それを壊す前兆。
夕暮れ時、紅みがかっていく教室に独り、残らされた。
「葉桜、なんで頭がいいのに宿題をよく忘れて来るんだ。成績が下がっていいのか?」
先生は私に問い詰めてくるけれど、まあよく答えようとするような正直な子はこの学校には少ない。そもそも先生があんまりいい評判じゃないから。秋木先生とか、良い先生だっているけどやっぱりこの学校には少ない。この学校自体いい評判じゃないらしい。あまり詳しくは知らないけれど。家から出ないから近所の噂話なんて聞かない。うーん...。そもそも噂話自体聞かないんだって。そういったこと言う友達がいないからかもしれないけど。回ってくる時は大抵大掛かりに仕立てあげられてるんだよね。
なんて考えてたら手が止まっていた。
「おい!手が止まってるぞ!」
「はーい...。すいませーん。」
何だよ。少し考える事してただけじゃないか。ぶー。
ため息、一つ。
まあ、早く帰りたいし、考え事後にして終わらそー。
と思ったと同時に、
「今日はもう時間だ。もう帰っていい。」
「あ...。」
うう...。なんでだよ。この私が珍しくやる気を出しったっていうのに。そんなことを考えたって無駄かな。まあ早く帰ろ。
素早く荷物をランドセルに入れて、後々の楽しみを思い出して脳内がぐるぐるになった。少し挙動不審になってしまった。
「ありがとうございましたー。さよーならー。」
適当に挨拶して教室を出る。先生の返事は聞く気がなかったので聞こえなかった。
よーし。やっと帰れる!いいねー、この開放感。この瞬間からはすごくこの世界が素晴らしいと思えるんだよね。あぁ、楽しみ♪よし!小走りで帰ろう!
軽く小走りしてコンビニを通った辺りで、
「きあー。こっちー。」
「あー。いふ姉。」
隠したけれど隠しきれなかった歓喜の中、母親のクルマに駆け寄る。
「いふ姉、来てくれたんだ。ありがとー。」
えへへ。と笑う返事。
「まあ。偶然通りかかったらきあを通り越しちゃって。そして急いで戻ろうか考えたけど、近くにコンビニがある事思い出したから。」
べつにいーよー。と笑顔を返す。
「でも宿題やってなかったってことでしょ?」
いふ姉のスマホを額に当ててきた。それじゃ見えないよ、いふ姉。
少ししたら話してくれた。
――4時。
あ。
「もう、こんな時間なんだよー。こんな時間なら居残り以外ありえないからー。」
ごめんなさい。って返事する。
「だって、友達に勝ちたいんだもん。」
怒られる覚悟をしてたから、言い訳をした事に怒られると思った。
「友達は残ってなかったんでしょ?だったらもっと夜遅くまでやってるかもしれないよー。別にいつまでに寝なさいなって言ってないから。ただし、夜零時までには宿題を終わらせるよーにね。」
「ありがと!いふ姉!」
誇れる母親に感謝してクルマのドアを開ける。ひんやりと冷たい空気のお出ましか。急に来るとびっくりする。
「じゃあほんのり急ぎでかえりまーす!」
「おー!」
ほんのちょっとだけ速くなった。
「一番乗りー!」
行き良いよくドアを開けた。靴は脱ぎ捨てて、ランドセルは放り投げた。
が、全部音もなく回収された。
「ランドセルは部屋に置いといてー。」
どきどきしたけど、怒られなかった。なんか今日はやけに甘い様な...。気のせいかな?
直ぐにゲームを始めちゃっていたら、
「夜ご飯作ってあるから、あとー、風呂の用意もしてあるから。頑張って!友達に1回でも勝つんだよ。じゃあもういくからねー。」
なんてやさしい...!なんで今日に限って。今日に限っているのかはもう忘れちゃったけど。
そして起動音やら効果音やらが響いた後、
「あ、宿題...。」
――0時。
やらなきゃ!
と言っても毎日こんな時間まで起きていたわけじゃなかったから、眠気にあっさりと負けてしまった。




