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ロージス商会の食客

書き溜めはここまでです

ロージス商会はその源流を辿れば王侯貴族の一人であるアルフレッド・ロージスにまで遡る。

建国初期の、法も整備されていない混沌とした時期に於いて、ガルテ王国の商業の基盤を気づいた人物であり、現在では商人に縁起のいいものとしてアルフレッドが好んだ青い薔薇を持つ商人も少なくはない。


だが、その青い薔薇をシンボルとする商会はロージス商会だけだ。

初代当主アルフレッドから六代先、アルセイ・ロージスは政治的な争いの末敗北。ロージス家は貴族の位を失い凋落した………と思われていたのだが、恐らく初代の頃から流れていたのだろう商人としての才覚が覚醒し、晩年のアルセイは王国の財政の半分を握っているに等しいと言われるまでの大商人となった。

そこから百数年、今でもロージス商会は王国でも指折りの商会として今日も青い薔薇のシンボルを掲げている。


そんな、実績と伝統を併せ持つロージス商会本店の客間にて、ミツキは汗を流しながら沈黙していた。


目の前にはにこやかに笑うミツキよりも若い少女、その後ろにはアリュエが控えている。

明らかに戦えるようには見えない、戦闘力の欠片もなさそうな少女ではあるが、その恐ろしさをミツキは短時間で存分に味わわされていた。


話は少し前に遡る。








「………なるほど、つまり君は荷物を別の場所に収納する「能力」を持っている、と。」


「ええ………ものがものだしあんまり明かしたくはなかったんだけど………」


「確かにな……とはいえ、無意識に使ってしまうのは用心が足りないと言わざるを得ないがな。」


ミツキはここに来た時と同じように馬の背に乗って、前で手綱を握っているアリュエに黙っていた事を謝罪する。アリュエも驚きこそすれ、このことを大っぴらにすればどうなるか分かっているようで理解を示してくれた。


「荷物を持っていなかったのはそう言う理由だったのだな。」


「川に落ちたのは本当なんだけどね……」


「…………プッ」


「わーらーうーなー」


流石に上空数千メートルから減速無しで叩き付けられました、とは言えないのだが。

サラブレッドをもうすこしマッチョにした感じの馬に揺られながら、ミツキ達は青い薔薇を象った看板が取り付けられた建物へと向かって行く。


「あそこ?」


「ああ。あれがロージス商会本店、私の本拠地だ。」


「へぇー……」


流石に見た目のインパクトはサルファード冒険者組合には劣るが、それでも豪奢な建物だ。

巨大モンスターの骨遺骨を文字通りの骨組みにした組合とは違い普通の石造りの建物だが、壁に使われている石はよく磨かれ、手入れされているのか日の光を浴びて白く輝いている。

商会を囲うように広がる庭では、看板にも使われている青い薔薇が美しい花弁を広げている。地球では青い薔薇は色々と手を加えなければ出来ない物だったが、この世界では普通に存在するようだ。


「少し待っていてくれ。」


アリュエは門番と一言二言ほど言葉を交わしていたが、一度こちらを指差し、なにやら説明すると門番は門を開いた。


「では行こう。」


「えぇ。」


ミツキは馬を人に預けたアリュエに連れられ商会の中へと入るのだった。


「ねぇアリュエ。」


「なんだ?」


「どこか……一服できる場所はあるかしら?」








ミツキは豪華な調度品の数々に、優しげな風貌の男が描かれた絵画の飾られた応接間に案内された。


「主を呼んでくるからここで待っていてくれ、ここなら喫煙も可だ。」


「りょーかーい」


琥珀色の灰皿(鼈甲べっこうではなかろうか?)も置かれているのを見る限り、喫煙する客も多いのだろう。

早速ミツキは宿場で手に入れた分解葉巻を取り出し、煙草を摘まんで煙管の火皿へと入れる。


自動的に煙草に火がつき、か細い煙が起つ。


「……ふぅー…」


煙管は三口程しか吸えないのだが、割と満足感はあるので女性のミツキには丁度いいと言えた。


(ここ商会って言うし後で煙草をまとめ買いできるか聞こうっと。)


そんな事を考えながら口から煙を出していると、突如視界が何かに塞がれる。


「え、何?次視界が開いたらナイスバディのおねーさんがいたりする?」


「お望みなら用意致しましょうか?」


返ってきた声は高く、幼さを残している。

最初はアリュエかと思ったが、彼女がこういうことをするとは思えないし、何より声が違う。

目から手が離され、視界を取り戻したのでミツキは下手人の姿を見るため振り返る。


「初めましてミツキさん、アリュエを助けてくださってありがとう。」


若い。中学生程度の年齢だろうか?無駄な装飾の無いフリル付きの白いワンピースを着たその少女は、歳不相応なな柔らかな笑みをミツキに向けている。

何か香水を使っているのか、柑橘の爽やかな香りがミツキの嗅覚をくすぐる。今、ボブカットの髪につけられた青薔薇の髪飾りが彼女の動きに合わせて僅かに揺れた。


「ロージス商会々長ミューラシャルハ・ロージスと申します。ミューラとお呼びくださいな。」


「ミツキです、宜しくミューラさん。」


自分よりも幼い少女がこの商会の領袖であることに内心驚きつつ、何かしら事情があるのだろうと納得する。互いに会釈した後、ミューラはミツキの対面のソファに腰を下ろす。


「では改めて……この度は我が商会専属のアリュエの危機を救っていただいたこと、ロージスの長として感謝させていただきます。」


「いえ……私も偶然通りがかっただけですし、そもそも打算あっての行動でしたから。」


「ふふ……アリュエから聞いていますわ。道に迷ったから人を捜していた、と……」


「ええ、お恥ずかしながら……」


「ふふふ……高名な魔法使いでも道に迷われるのですね。」


魔法使い?と首を傾げるミツキだったが、後ろに控えるアリュエが申し訳なさそうな顔をしているのを見て何となく察する。おそらく彼女は自分のことを全て伝えたのだろう。確かに、目の前で虚空からものを出し入れできるのは魔法にしか見えないだろう。しかし、アリュエには魔法ではないと言った筈なのだが……


「いえ、あれは魔法とかではなく生まれつき使えるよく分からない能力と言いますか……」


「そうなのですか?」


「ええ、昔から何故か使えたものでして……便利ですし、荷物を持つ手間が省けるので旅では重宝しています。最も、中にあるのは日用品ばかりでここに来るまでは文無しだったので……結果的にアリュエさんに出会えなければ大変な事になってましたね。」


「三つですね。」


「え?」


「今の台詞……三つ程真実を偽っていますね?」


ミツキは一瞬何を言われたのか理解できなかったが、今自分が言った言葉を思い返し、顔が引きつる。


「え、ええと……なんのことでしょう?」


「どうやら、貴女は嘘をつく時に目を細める癖があるようですね。これは推論ですが……

その能力を使えるようになったのは最近である。

貴女は日用品以外のものも持っている。

そして貴女は文無しなどではない。

……ですかね?」


「え、いや、その……」


「アリュエの話を含め推測するに……貴女は自分が何をどこまで出来るのか分かっている人ですね。友人を捜しているそうですが……貴女は友人と連絡を取る手段を持っている。

アリュエは獣人と言ってましたが……それも少し怪しいですね、獣人は煙草の煙をあまり好まないと言います。仮に貴女が例外だったとしても私が今つけている香水は獣人が嫌うタイプのものです。それを顔一つ顰めない時点で貴女は獣の耳と尻尾を持つ何か違うものという事になりますね。もしかしてお伽噺の魔族かしら?

それも気になりますが私としては貴女の出身地が気になりますね……私も立場上様々な土地の文化を見てきたつもりですが、そのような服装は見た事がありません。ブローデック大陸やセベロスタ諸島群の出身かもしれませんが、それでしたらここから砂漠に向かうのは違和感がありますね?なにせここに来るよりも大陸西部に行く方が近いんですもの。

何か事情があるのかしら?例えば……転移の魔法でここに飛ばされてきた、とかでしょうか?もしや何か巨大な陰謀に巻き込まれているとか?そこのところどうなんです?」


「え、えと、あの……」


「そのパイプは魔法道具の類いですか?いえ、アリュエの話では古代技術の秘薬を持っておられるそうですしそっちかしら?うーん、反応からして違うようですね……良い職人の仕事が感じられますがオーダーメイドですか?……違うみたいですね。となると量産品?……いえ、貴女自身も分かっていないという感じですね……あ、そういえばこれも聞いておきたかったんですが」


「すいません勘弁してください。」


「該当項目は五つ、ですかね。」


マシンガントークもかくやという怒濤の勢いで質問攻めをするミューラに圧倒されるミツキ。更に驚くべき事に、いくつかはミツキの秘密に該当しているのだ。このままでは自分の秘密の核心にまで届いてしまうかもしれない。


「ミューラ様、ミツキを追いつめるのはやめて頂けませんか……」


「あらアリュエ、追いつめるだなんてとんでもない……貴女が評価した彼女を私も知りたかっただけよ。」


これ以上の情報漏洩プライバシーのしんがいを防ぐべく、ミツキはなんとか引きつった笑みを浮かべつつ沈黙するしか無かった。



……………………


………………


…………


……




「すまなかったミツキ。あれはミューラ様の悪い癖でな……」


「熊より恐い……」


あの後、「少し用意がありますので、一旦失礼させて頂きます」と部屋を出て行ったミューラ。扉が閉まったのを確認したミツキは若干白目を剥きながら机に突っ伏した。アリュエは申し訳なさそうに謝罪している。


アリュエ曰く、ミューラはその異常とも言える推理力と頭脳を以てして並みいる跡取り候補達を全員叩きのめし、今年で十四という若さでありながら今の地位にいるらしい。それっぽいものから現実離れしたものまで、矢継ぎ早にまくしたてる情報の奔流による相手の表情の変化、指先の動き、呼吸の変化、特定の単語に対する反応、それら一つ一つから「アタリ」と「ハズレ」を割り出し相手の内情を探り当てる。

その精度は凄まじく、五分あれば今を見抜かれ、十分あれば過去を掘り起こされ、一時間あれば未来を宣告されるらしい。そしてその凄まじき才覚に畏怖を籠めてつけられたあだ名は【支配者】。


「なにそれ……怖い………」


占いの技術にコールドリーディングというものがあったはずだが、彼女の技術はそれを数倍凄まじくしたもの、なのだろう。


「しかし……今回は一段と凄まじかった。いつもの三倍はまくしたててたな。」


「そんな赤い彗星は嫌だ………」


「その赤い彗星とやらがどういった意味なのかは分からないが……恐らく原因は私にある、すまない。」


「………どういうこと?」


メンタル面をメッタ刺しにされたミツキは、返答次第では制裁も辞さないと視線で訴えかける。


「……実はだな、私はミューラ様にミツキを雇わないか打診していたんだ。」


「雇う?目的あっての旅だし一カ所に定住するつもりは無いのだけど……」


「ああいや、私のように雇われになれ、という意味ではなくてだな……」


「お待たせいたしました。」


「!!!!!!!」


ビックゥゥゥゥゥ!!と最早隠す事無く震えるミツキ。本人の動揺に連動した尻尾もピンとまっすぐ硬直している。

ミューラは、メイド(メイド!!)にティーセットと、ティースタンドにお菓子を乗せたものを運ばせてきた。ミューラ本人はなにやら紙とペンを持っているが。


「実はお菓子作りが趣味でして……お口に合うかどうかは分かりませんが、如何ですか?」


「イタダキマス……」


逆らえば、恐らく前世まで毟られる。そう直感したミツキはぎこちない笑みのまま好意に甘える事にした。

淡い色で着色されたスコーンのような菓子のうち、薄桃色のものを摘んで一口齧る。


「………おいしい。」


「ふふ、それは何よりです。」


シロップやジャムが無い時点で小麦のぱさぱさとした味しか無いと思っていたが、どうやら何かを生地に練り込んでいるようで、ほのかな甘みがする。それに食感も良い。外は歯で噛む度にさくさくと小気味のいい音をたて、中はしっとりとしている。お菓子作りが趣味というのは本当らしい。


「ミツキさん、アリュエから話は聞いていますか?」


「……むぐ。ええ、私を雇う、という事は。ですが私は目的あって旅をしている者。アリュエのようにここに居を構えるつもりは……」


「嘘一つ。そこまで切羽詰まっている目的では無いのでしょう?ここに定住するつもりは無いようですが……」


(もうやだこの子。)


嘘発見器どころではない。YES,NOどころか5W1Hまで完璧に見抜かれかねない精度だ。


「雇う、と言っても一時的なものです。この度我がロージス商会は新たな取引先として大陸中央のヴァルン公国の先、ザガラス帝国との通商ルートを構築する計画を立てています。

その為の経路を模索しているのですが……どのルートを通ってもモンスターの生息地にぶつかってしまうのです。」


「つまり、そのモンスターを退かすための人足という事?」


「ええ、そういうわけです。無論報酬は支払いますよ。」


渡された書類に目を通す。これは文字を読解できるかのテストでもあったのだが、文体は見た事の無いものでも理解する事は出来た。

内容は要約すると「期限は一ヶ月、モンスター退治に力を貸して頂いた場合、当商会は契約期間中は契約者を食客として歓待し、モンスターとの戦闘によって生じる全ての損害の補填を約束する。」ということだ。


「随分と気前が良いのね。」


「何ぶん命のやり取りですから、依頼者として最大限の支援をさせていただきますわ。」


にこやかに笑うミューラ。その佇まいはまさしく大商会を率いる領袖に相応しい威厳を兼ね備えていた。


「ふむ……返事は明日でいいかしら。」


「………一応理由を聞いておきましょう。」


「ふふふ、貴女なら私の顔を見て分かるんじゃないかしら?」


特に理由はない、ということが。

その日はミューラの好意により、商会に宿泊することとなった。










【たらこ天狗 さんが入室しました】


【深月 さんが入室しました】


『深月:あ、たらこ天狗』


『たらこ天狗:深月さん!こっちでは初めてですね』


『深月:そうね、大変だったって?』


『たらこ天狗:ええ……本当にもう、酷い目に……スニーキングミッションは性に合わないのに……』


『深月:まぁ生きてるなら儲けもんよ。』


【ZASHIKING さんが入室しました】


『ZASHIKING:おっす』


『深月:おっすおっす』


『たらこ天狗:どもですー』


『ZASHIKING:お前ら二人が来てたから来たが……なんか重要な話でもしてたか?』


『たらこ天狗:いえ、特には。』


『深月:そういえば、私はガルテ王国ってところにいるみたい。』


『ZASHIKING:俺は砂漠のキャラバンに拾われたから場所が固定できん。合流は暫くは無理そうだ。』


『たらこ天狗:絶賛サバイバル生活中です。暇な時か危険な時しか無いのでここが唯一の癒しです』


『ZASHIKING:うれしいこと言ってくれるじゃないの』


『深月:お礼に良い事を教えてあげよう。ハードラースベアとかいう熊は爪と牙が固いから気をつけろ。』


『たらこ天狗:それって黒毛だったりします?』


『深月:なに、もう戦ったの?』


『たらこ天狗:大体三十分くらい前に二頭暗殺しました』


『深月:【速報】たらこ天狗、予想以上にサバイバー【アサシン】』


『たらこ天狗:笑い事じゃないですよぉ!!』


『深月:まぁ……私は可憐な美少女にプライバシーを侵害されまくってたよ。』


『ZASHIKING:何それ裏山』


『深月:1の情報から100の真実を探り当てる化け物クラスのMs.ホームズなんだけど?』


『ZASHIKING:何それ怖い』


『たらこ天狗:それは熊より恐いですかね』


『深月:如何なる発言であっても即座に嘘か本当かを見抜いて隠してる事を素っ破抜きにされる気持ちを味わってみるかい?』


『たらこ天狗:遠慮しときます……』


『深月:んで、私しばらくここで食客やるんで二人を捜すのは無理そう。』


『ZASHIKING:あー、それなんだがよう。ぶっちゃけ俺ら合流する理由あるか?』


『深月:無いわよ、そもそもネット上でしか認識の無いメンバーなのに。しかも通信手段もあるのに。』


『ZASHIKING:なら何故報告したし、と言いたいがまぁ分からんでも無いからなぁ……』


『ZASHIKING:とりあえず狐帝待ちだな。あいつだけ一度も連絡がねー。』


『たらこ天狗:この中で一番レベルが高い人でしたし死んでる、という事は無いと思いますけど……』


『深月:チャットのアラームに気づかないような場所にいるのか、気づいても開き方が分からないかのどっちかね。』


『ZASHIKING:だろうな……まぁ、何か分かった事があったらここに書いて行く事にしよう。』


『深月:りょーかーい』


『たらこ天狗:分かりました』









「食客の件、謹んでお受けさせていただきます。」


「それは何よりですわ、ミツキさん。」


翌日、アリュエに食客の件について、契約を受ける旨を伝えるミツキ。ミューラもミューラで、昨日の時点でミツキが断らないことを察していたのか、起こるべくして起きたことを受け入れている様子だ。


ミツキは己の名と血判を押した羊皮紙をミューラに手渡す。


「ミツキさん、これを。」


「これは?」


書類を受け取ったミューラは、青い薔薇を模したペンダントをミツキに差し出した。


「我が商会の食客であることを証明するためのものです。なくしても次を用意しますが、アリュエか私と同伴でなければここに入れなくなりますのでお気をつけください。」


「了解。」


最早ばれていることなので、遠慮なく二人の前でペンダントを道具アイテム欄へと入れる。


「では早速なのですが、アリュエと共にマッドクロブの狩猟をお願いいただけますでしょうか。」


「マッドクロブ?」


「沼地に生息する甲殻種のモンスターだ。小型のやつは食用にもなるが、今回の討伐対象はその沼地の主でな。開けた場所がそこの沼しかないから退かす必要がある。」


「分かった。じゃあ準備ができたらちゃっちゃと行きましょうか。」


こうしてミツキはロージス商会の食客として、その力を振るうことになったのだった。














ミツキが準備のために(煙草を買いに)部屋を後にし、応接間にはアリュエとミューラの二人となる。


「ミューラ様、如何でしょうか?」


「えぇ……彼女は「大当たり」よ。それも近年稀に見る、ね。ちょっと警戒心が薄いけどね。」


ミューラはミツキのサインが入った書類を丸め、微笑む。


「無知故か豪胆故か……私があそこまで問い詰めても私を避けようとはしない。苦手意識はあるみたいだけど忌避されないのは久々ね。

それにマッドクロブの狩猟に対して眉一つ動かさない。マッドクロブからすれば突然殺されるということなのに、半端な情けを持たずに彼女は働いてくれるでしょう。

最初、アリュエからハードラースベアの首を一撃で叩き折った女性がいる、と聞いた時は幻覚作用のあるキノコでも食べたのかと思ったけど……」


「流石に路傍の茸を不用心に食べたりはしませんよ……」


「ふふふっ、アリュエは相変わらず冗談が通じないわね。」


自分が振った冗談に対して、真面目に返答したアリュエを笑いつつ、ミューラは机の上に地図を広げる。


「通商ルートの開拓は我が商会にとって最優先事項、アリュエが絶賛したそのお力、存分に貸していただくとしましょう……」




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