プロローグ 世界を飛んで
まーたロボです、Z.O.N.E.も一緒に書いてます
また、Z.O.N.E.と大きく設定を共有していますが、それはZ.O.N.E.の話が進めばわかるかと思います
夕暮れの教室、多くの人間が一人の少年を見下している
「気持ち悪い…なんで学校に来るの?」
「ほんとにな…行こうぜ」
「…死ねよ」
そんな声が響く中、一人の少年が悲しむ
「…」
それを見て、何もできない少女はただ謝罪する
「ごめんね…」
「未莉のせいじゃないよ」
「でも…」
「あと一年だから」
「…ごめんね」
『……ザーッ…ザッ コッチヘ・・・コイ…ザッ…』
突如、スピーカーから流れ出す声、それを皮切りに周りの僕から離れていたクラスメイトたちが倒れていった
「なにが…?」
「数馬!」
『コッチヘ・・・コイ』
その声に、僕は抗うこともできず暗闇の中へ落ちていった
「……ん…」
意識を失ってから、目を覚ましたがいいが、あの時からの記憶が無い
「おや、起きたみたいだね」
「!?ここは?」
記憶に無い部屋、医務室のようで、どこか乱雑に薬品が配置されている
「こんな手段でこっちに呼んだことを謝罪させてくれ、だがそうしなければ我々は早々に死ぬことになる」
「なんのことなんです!」
突如、立てかけてあった無線機らしきものから、声が響く
『被験者が目覚めた、コレで最後だな』
「わかった、これより適性試験判断を行う、被験者たちをこちらに」
『了解』
ブツ、と無線が切れる音に、いらだちを隠せずに僕は叫ぶ
「なんなんです!わけわかんない事になって、わけわかんないこと言われて!ここはどこなんですか!」
そう叫ぶも、彼は申し訳無さそうな顔をして紙を取る
「本当に済まない、我々のために、君たちを殺すことになるかもしれない」
「はぁ!?わけわからないこと言わないでくださいよ!」
彼の意味不明な声に困惑し、大きな声で叫ぶ
その時、扉の前よりも声が聞こえる
「試験監督官アーバー・トレイス、到着しました」
何だ?ここは日本じゃないのか?
「入りたまえ」
「失礼します」
扉が開かれ、白い服に包まれた白髪の男が現れる
その姿につい、真っ白すぎるだろ、と思うもその威圧感に気圧されてしまう
「あっ!檜原!てめぇ説明しろよ!なんでこんな事なってんだよ!!」
突如、その後ろから特徴のなさそうな少年が現れる
「知らないよ…」
「はぁ!?使えねぇ!」
その声に苛立ったのか、試験監督官かなにかが彼の制服の首もとを掴む
「タダオ!やめるんだ」
「……だいたい町田はなんでここにいるんだよ」
「しらねえよ!突然倒れて、目が覚めたらこっちにこいって言われたんだよ!……お前だったら知ってるかと思ったしよ…」
町田は、僕をいじめてる筆頭だ
昔は、仲が良かったのに
「さあ、適正確認を始めるぞ、ある程度はわかっているがな」
その突然な言葉を遮る
「まってください!適正ってなんですか」
「……私達は今絶滅しかけている」
「はぁ?なんでだよ」
バカにしたかのように町田が笑う
「宇宙より現れた、『トレート』に…私達は、ただ戦うことしかできない」
「はぁ?そんなの聞いたこと無いぜ」
「そうですよ、なんなんですか、その…トレートって」
「私達はやつらに抗うため、ある兵器を開発した、それがトレート対策軍の精鋭兵器、タクティカルフレームだ」
「戦術…骨格?」
「ああ、これはパイロットの骨髄に機体の信号をつなげることで体を拡張したようにフレームを動かせる装置だ」
その説明に疑問に思い、僕は彼に聞いてみた
「しかし…戦車や航空機では行けないんですか?そっちのほうが早いし、攻撃性能も高いと思いますが」
「……むかしは、そう思っていたが、奴らは人の心を読む、詳しくは人の動きをだ」
「…?つまり…?」
その質問に、悔しがるように彼は語る
「奴らに、二度と同じ攻撃は効かない、無尽蔵にいる奴らに、私達人類は蹴散らされていった、だが思考は読まれない、人間を戦闘機に接続することは不可能だが、おなじ人型ならば抵抗は少なく運用できる、それに一体化すれば人間としての動きは読まれてもフレームの動きは読まれない、これならばトレートと戦闘できる」
「はぁ!?じゃあ俺らはなんなんだよ」
「……ここは本来君たちのいるべき場所じゃないのは、わかってるだろう」
その声に、町田と共に同意を示す
「だが、君たち、パラレルワールドからきた人類はコレに対する適正が高いんだ、だから、君たちを連れてきたんだよ」
今まで黙っていた医師らしき男が口を開く
「君たち以外にも、君たちの近くに居た者達は連れてきたが、君たち二人はその中で最も適正値が高かった」
「待てよおい!俺達にお前たちのために死ねっていうのか!?」
「私達の!私達の持つ取引材料は、君達の親友達だ、彼らが死んでもいいなら、君たちを元の世界に返してやろう」
涙を流しながら、試験監督は叫ぶ
「……は?なんだよそれ」
町田は、恐る恐る僕を見る
「なあ、檜原、あいつら見捨てるわけねぇよな、俺お前にたくさんひどいことしたよ、あいつらも一緒にしてた、だけど、見捨てないよな」
その声に何を今更、と思う
「……」
「数馬!頼むよ!あそこには、つくしがいるんだよ!お前だって幼馴染だったろ!?」
大蔵つくし、町田の幼馴染で、僕の幼馴染だ
活発な少女で、いつでもクラスの女子をまとめていた
そう、まとめていた
「数馬!頼むよ!今まで悪かった!だから、だからつくしを…」
その伸ばされた手が肩をつかむ
「……わかった」
その瞬間、町田の顔が明るくなる
「…フッ、決まりだな」
「ただし条件を付けさせてください」
その声に、試験監督が聞く
「なんだ?可能な限りは聞こう」
「彼らの中で、戦いに参加したいと思う人間だけを参加させてください、ほかは戦わないようにして欲しいんです」
「数馬……」
僕の言葉に町田が泣きそうになっている
「お前がさ、僕を見て嘲笑ってたのはしってるよ」
「……ごめん」
だけど
「だけど、俺はお前がそんなやつじゃないって知ってるから」
「……数馬…!!」
「守るよ、お前の守りたい奴らを」
「………ありがとう…!!」
泣き出す町田を見て、試験監督が笑う
「まったく……カズマとか言ったな、お前が先だ、ついてこい」
その背中についていき、部屋を出た僕は、ある程度医務室らしき部屋から離れたところで彼に話しかける
「……お前は、甘いな」
「何がですか?」
その声にやれやれ、と彼は返すと続けた
「いじめられてたんだろ?普通あんなことできないさ」
「こっちの世界でも、あるんですか?」
「……まぁな、こんな時なのに、悲しいことだよ」
「……僕は、信じてますから」
彼はそうか、と言うと無言のままあるく
「ここだ、準備はいいな」
「はい!」
その真紅の扉が開き、僕はそこへ突き進んだ
『よし、コクピットには乗り込んだな、この機体の特徴は自分のように動かせながら、スラスターを意識のままに動かせる、これで航空機ほどじゃなくても高速で動ける、まあそこは機体によりけりだ、コレはテスト用の機体だからそこまで早くはない、まずは慣れてみろ』
「わかりました、えっと…どうやったら…」
『まずはシートベルトとアンチG装置を起動しろ』
「えっと…シートベルトはこれか」
コクピットの座席の上から垂れ下がるシートベルトを接続する
『シートベルトは戦闘中に外れることも極稀にだがある、そのとき体を支えるためにもコンソールレバーがある、コンソールレバーをすべて同時に押せばアンチG装置が起動するはずだ』
「これか…よし」
全面に張り巡らされたこの土で広げられた世界が映るモニター、正面のモニターに現れるAnti-G systemの文字
「起動しました!」
『こちらでも確認した、優秀だな、接続の説明をする、接続は右のコンソールレバーを二回連続して引け、その後に左のコンソールレバーを三回押し出せば接続できるが、痛むぞ』
痛いのは嫌いだ、そう思いながら言われたとおりにレバーを動かす
その瞬間、足元の装置が展開し、太もも、そして首に電極が刺さる
「うっ…!」
突如、自分が巨人になったかのような感覚とともに、モニターに多くの文字が現れる
『接続完了だ、延滞もほぼ無い、適性だけではないか……』
一瞬ふらついたように思うも、自分自身がそこにいるように感じる
『カズマ、きこえるか、まずは歩行からだ』
「わかりました」
『ゆっくりでいい』
右足を、踏み出す
『なんて正確な動きだ…』
「このまま走ります!」
『おいまて!』
その感覚が嬉しくて、僕は機械の巨人としてその大地を駆けた
刹那、鳴り響く警報
『警報!?トレートだ!戻ってこい!』
「わ、わかりました!」
慌てて戻ろうとするも、目の前に緑色のなにかが落ちてくる
『カズマァ!!』
「なんですかコレ!」
そう言うと、その緑色のなにかが突然伸びて、左手を切り裂いた
「がっあああああアアアアアアア!!!」
『カズマ!後退しろ!』
痛い、痛い!
『機体と必要以上に痛みを共有するな!今兵装を射出する、何とか持ちこたえろ!』
突如、モニターの右に表示されるHFB-47の文字
『高周波ブレードだ!いま出せるのはそれしか無い!とにかく時間を稼げ!今別の部隊が向かっている!』
『数馬!…別の機体はないんですか!』
『何をしている!危険だから戻るんだ!』
『あいつが俺の大切なモノを守るって言ったのに、俺がなにもできないなんて…!』
その瞬間、地面に突き刺さる短剣のような物
『いまはそれしか無い!飛んでくるのはそれで防げ!』
『ちょっと!俺にできることは…!』
左手が痛む…痛みを消さないと…
『左手にとりつかれたぞ!脱出装置を…!』
「こうなった…らああああああああ!!!」
覚悟を決め、自分の左腕を無理矢理切り裂き、ボロボロに成った取りつかれた左手を捨てる
「あああああああああ!!!」
痛い、けど!
「よくわからない奴らに、殺されてたまるかぁあぁぁ!!!!」
そのまま、右手のナイフを左手に突き刺す
『もう一本送る!コアの位置もだ!それで殺せ!』
突如、画面下に現れるCG情報
「そこかぁあああ!」
今度は飛んでくる短剣を空中で掴み、そのままCGの赤い部分めがけて突き刺す
カウンターのように、腹部を刺される
「残念…でしたァ!!」
首元にコクピットがあるこの機体、ならばそれ以外は、ただの犠牲にしかならない!
パキ、とナイフが割れる
それと同時に、緑色の生命体は突如灰色になり、赤い球体を残して砂になった
「は、ぁ、はぁ、勝っ……た?」
『なんて判断だ……動きも、覚悟も、並の人間じゃない……最高だ…本当にお前は……!』
『すげぇ……すげぇよ!数馬!』
「やった、やったぞ!」
生きた!生き延びた!こんな世界で、生きることができたんだ!
『基地守衛部隊です!トレートは!?』
突如扉を爆発して現れる紺色の機体が4つ
『ああ、やってくれたよ、新人、檜原数馬が……』
『なんてことだ……単機で、しかもシーナ2本……それどころか実質一本のようなものだぞ……』
驚いたような声に、僕は安堵しながらシートにもたれかかる
『シーナって……?』
町田の疑問に監督官が答える
『ああ、現場での呼び方だ、アレは多くの機体の内蔵兵器なんだが……ハイフリーケンシーブレード 四十七、通称シーナだ』
『そのまんま、なんですね』
『細かく言うよりもそっちのがわかりやすい、数馬、素晴らしい戦いだった、初陣にしては少々きついが、よく生き残ってくれたな、ガレージに収納後、コクピットを回収する、戻ってこい』
「了解、帰投しますね」
ガシン、とロックされる音、それと同時に接続が解除される
そのすぐ後、後ろに動かされるような感覚が起こる
『ハッチ開くぞ』
その言葉の後に、コクピットブロックの上部のハッチが展開される
そのハッチに手をかけ、コクピットブロックから出る
「よう、異世界人」
突然声をかけられ、後ろを振り向く
「俺は第4守衛部隊所属アーク・クレインっつーんだ、よろしくな」
その男は、どこか気さくな感じの…言っては何だが、オッサンだった
「カズマです、よろしく」
「ああ、さっき戦闘してたところを見たんだが…ありゃすげーな、初陣の動きじゃねぇぞ、ああ、それとさっき出てたのは第2守衛部隊だからサボってたんじゃねーぞ」
「はぁ……」
彼の流れるような言葉に何も言えずにただ答えるだけだった
「まぁ、こんな世界に来ちまったなんてな、俺らの事情に巻き込んで、すまねぇな」
「…いえ、もうどうとにもならないですから」
「大丈夫だ、お前たちが戦わないようにさせるのが俺達守衛部隊の役目だからな。 つっても、もう戦っちまったがな!ハハハ!」
「は、はは」
元気な人だ、そう思うと彼は突然気が付いたように手首の時計を見る
「やべっ時間だ、じゃあ元気でな!可能な限り守ってやるが…死ぬなよガキンチョ!」
……嵐みたいな人だったな
「数馬、素晴らしい戦闘だったな」
「トレイスさん……」
「突然実戦になってしまったが……このままある程度訓練して実戦にも参加できるだろう、あとは君の覚悟だけだ、どうする」
「決まってますよ、仮に大っ嫌いな奴らでも、そこには30人もいるんです、誰かを守れるなら、それが傲慢だったとしても僕は、守りたいんです」
その答えに喜んだようにトレイスさんは微笑む
「よく言ったな、だがまだ動きは甘い、ある程度はキツイ訓練が待っている、が……今日はまあ休め、明日からお前の大っ嫌いな守りたい奴らに会う、大丈夫か?」
彼の心配するような言葉に、僕は答える
「……大丈夫です」
「…わかった、今日は休んでおけ、それと……私達の事情なのに君たちを巻き込んで、命の危機にまで……本当に済まない、君のクラスメイトを人質にとってる私達が言えることではないが…謝罪させてくれ」
その言葉に従い、僕は地図に書かれた部屋へと向かう
「……生きて帰れるように、努力しますよ」
去り際の、彼の申し訳無さそうな顔が、とても目に、焼きついた
至らない描写などがあればご教授ください