「名コンビの名前」
「僕たち、名コンビです」
あるふたり組が挨拶に来ました。太ったコロコロとした男と、痩せ細ったヒョロヒョロな男です。
自分たちのことをいきなり「名コンビ」なんて、ちょっと変わってます。
ーでは君たち、なんて言う名前かね。
「僕は太井です」細い男が言いました。
「ぼくは細井です」太った男が言いました。
「ふたり合わせて、、、」
ーちょっと待て、それじゃあまるっきり逆じゃないか。
「でも僕たち、そういう名前なんです」
「面白いでしょ」
「ふたり合わせて『ギャップ』です」
ー確かにインパクトがある。だが、名前と本人の印象が違うってのは、オシイもんだね。
その後、彼らと何かを話したのですが、内容はもう覚えていません。覚えているのは、見た目と名前の違和感だけでした。
ー本名じゃなくていいから、分かりやすい名前を考えて来なさい。
名コンビは宿題を出され、すごすごと帰って行きました。
次の日、またふたりがやって来ました。
太った細井君は赤の服を、細い太井君は緑の服を着て歩いてきました。
ー考えて来たかい?
「はい、ぼくは赤井です」細井君が言いました。
「僕は緑井です」太井君が言いました。
「ふたり合わせて『クリスマス』です」
ーなるほど、見た目通りで分かりやすい。だが、『クリスマス』というのは、君たちの存在が季節限定になってしまわないか?
ふたりはアレコレ言っていましたが、赤と緑がチカチカして、何を言っているか分かりませんでした。
ーそしたら、1週間あげるから、ゆっくり考えて来なさい。
そして、1週間が経ち、ふたり組が現れました。
ーお、太井君。思い付いたかね。
細い男はニヤッと笑って、
「いいえ、ぼくは細井です」と言いました。
ーすると?
「僕が太井です」太った男が言いました。
「ふたり合わせて『見た目通り』になりました」
1週間で鍛えて、食べて、タイシタもんです。
ーううん。そうだな、、、。非常に申し訳ないんだが、君たち元の『ギャップ』の方がいいなあ。意見をコロコロ変えて、悪いね。
「あっ、分かりました。」細井君がひらめき顔で言いました。
「僕が太井と名乗ればいいんです」
ーああ、そうか。ええっと、すると細い君が太井で、本当は細井君、、、。いや太井君か?
「いいえ、僕が細井になる太井です」太った太井君が言いました。
ーええっと、君が太ってるから太井君でつまり、前は太かった細井君だったか?
「いいえ、細かった太井です」
話せば話すほど、ややこしくなります。
ー分かった。私の負けだ!君たちやっぱりからだも名前も元に戻ってくれ!
こうしてふたりは元に戻りましたとさ。
さて、細い男が自分の名前を言いました。
「ボクは、、、」
細井君でしょうか?それとも太井君でしょうか?
ああ、お話しするのも、ヤヤコシイもんです。
書き終えてから、何度も間違ってないか確認しました。間違っていましたら、また、もっといいコンビ名がありましたら、教えてください。