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追 章  2-  10/11 高校一年生・独り語り

 ここからは、利沙の兄・駿一による独り語りです。利沙に対しての思いや、家族の関係が少しずつ明らかになって行きます。

 

             6


 利沙は家に帰って来た。


 警察から連絡が来た時、僕は、もう無理かもしれないと思っていたのに、帰って来た。

 ほっとしたけど、ますます利沙の居場所は、無くなっていた。


 僕がまだ高校生の時、三歳下の妹の利沙が、ハッキングで逮捕された。


 一ヶ月程して帰って来た時、両親の利沙への接し方には大きな変化があった。

 まるで利沙を、厄介者を扱うみたいに、時には無視したし、部屋からも出さないようにしていた。


 でも、僕は、利沙が好きだったし、だから余計に、利沙に関わりたかったんだ。


 利沙は、家に帰っては来たものの、学校には通えなかった。

 二年生の間は自宅謹慎だったし、三年生になってからも、人より遅く行って人より早く帰ってきた。


 しかも、課外学習は一切できなかった。

 学校しか行けなかったんだ。


 帰ってきてからも、外出は禁止されていた。


 僕は思った。

 利沙は、こんな生活で楽しいのだろうか? 

 帰ってきてからも、ずっと部屋から出てこなかった。


 どうも、僕と関わるのを、母が禁止したらしい。


 利沙がどんな思いで、ここで暮らしていたんだろう? 


 変だ。


 利沙は本当は、いい子なんだ。

 優しいし、良く気がつくし、勉強だって出来るし。

 その子のどこに問題があるんだ? 


 ちょっとパソコンが器用に出来るからって、利沙を苦しめる必要はないと思う。

 本当に、いい子なんだ。


 でも、利沙が捕まってからは、家の中がギクシャクしていた。

 特に母は利沙を監視していた。


 高校に入ってすぐの事件からは、利沙は、本当に学校しか外に出られなくなった。


 母は登校する時に靴を出し、帰ってきたら靴箱に戻し、鍵をかけていた。

 母は、利沙を全く信じていなかった。


 利沙はそんなことしなくても、約束は守ったはずなのに、そこまでしていた。


 そんな中、一学期中に、警察から連絡が来て、三日も警察から帰って来なかった。


 もう、母や父には利沙が何を考え、どう行動するのか、判らなかったらしい。


 そこで、考えた結果、警察には行くが、迎えではなく、

 利沙を預かってもらえないかと、お願いしてみることにした。


 もう、ここでは利沙を監視出来ない。

 もうこれ以上、一緒に生活は出来ないと、伝えるらしい。


 僕は、もう利沙とは暮らせなくなるのかと、寂しかった。

 でも、両親が真剣に悩んで決めた。

 そう思って諦めるしか、その時の僕には出来なった。


 だって、あんなに悩んでいる両親に、僕がどう言っても、きれいごとにしかならないと思ったからだ。


 それでも、利沙が帰って来た時は嬉しかった。


 でも、本当に良かったのだろうか? 

 利沙は、今まで以上に厳しい条件でこの家に居たんだ。


 利沙は、決められた時以外、部屋からも出られなかった。


 しかも、母は、利沙を本格的に無視したかったらしい。

 家に居ても、極力会わないようにしていた。

 顔を合わすのを、あんなに避けているのは、本当に感心してしまった。


 母は、利沙をどう思っていたのだろう。


 僕は、やはり母は、利沙を信じたかったんだと思った。


 でも、顔を合わせると、どうしても現実がある。

 利沙が警察にお世話にならなければならない現実が。それを認めたくなかったのだろう。


 時々、夜、押し殺した鳴き声が部屋から漏れ聞こえてきた。


 それに、母に笑顔がなくなった。

 もう、母は笑わないかもしれない。


 そう思っていたのに、母に久しぶりの笑顔が見えた。


 夏休みだ。


 利沙は、夏休みの間、平日の何日かを学校での用事で出かけた。

 母は、その利沙の部屋で写真を見て微笑んでいた。


 その写真は、まだ僕らが仲良く出来ていた時の、家族で撮ったものだった。

 みんな笑顔で写っている。


 そこには、幸せな時間があった。

 そこは、まだ誰も傷ついていない。


 母は、笑えるのだと、本当に安心した。


 母は、弱い人だ。


 僕に力を入れて、利沙を忘れるようにしてるんだと思う。

 現実から逃避するしか、自分を守れないんだろう。


 たぶん、利沙もそれを分かっている。

 だから、どんなに厳しい条件も受け入れたんだ。


 利沙は、本当に賢いから。



 でも、それが決定的になった。


 利沙が起こした事件で、家族がどれほど傷ついていたか、それを本編では、まったく触れませんでした。と、いうか、省きました。一度は本編として書いていたものを、ここで書かせていただきました。これで、利沙がなぜ家族を顧みずに先に進んで行けたか、それをご理解いただけたらと思います。

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