追 章 2- 1/11 高校一年生・初夏
利沙がまだ高校に通っていた頃の話です。
まだ、高校生でいられた頃、平和な日が続いていた。
純粋に普通の生活が、そこにはある。
高校一年生の中間試験が終わり、期末試験はまだ先。
季節は、初夏といったところか。
1
その日は、陽射しが強くなってきたなと、嫌でも感じてしまう程の天気の良さだった。
つい先日まで、厚い雲とうっとうしい雨粒に空気を支配され、
足元から目線の高さまでこの時とばかりに、紫陽花のピンク色の花が咲き誇っていたにもかかわらず、
今ではひまわりの茎が、日々成長を続けている。
「なんなんだよ、この天気の良さは!」
「何も、ここまで晴れなくてもいいのに」
「まったくだ、暑いのにも限度ってあるだろう」
こんな会話が、だれ彼となく口から出てくる。
それ程の暑さ。
だからこその、この会話? になる。
しかも、口に出さずとも、この場にいればそう感じて仕方ない状況である。
暑い日である事実は、もういいとして。
こういう日はとにかく人のやる気を削いでいくもので、このクラスも結構な割合で、ダラダラしている。
「あ~あ、もうこんな日は授業なんてしてられねえよ。帰ろうぜ」
「へえ、なんかお前が、どっかの先生みたいだな?」
「……そうか? 俺が先生なら、今日は休校だ!」
「それ、いいな」
なんて言いあっているうちに授業は普通に始まり、
生徒達の思惑通りにはいくはずもなく、
昼休みになると、エアコンの良く効いた食堂は、同じ目的の生徒で溢れ返っていた。
「なんなんだよ。こんだけ集まったら、せっかくのクーラーの意味ないだろ!」
たしかに、かなり広めの食堂も、ごった返している。
エアコンの機能を抑制しているのだ。
それでも、人気の食堂は、休み時間中は生徒でにぎわっていた。
そんな中、教室では生徒数が極端に少なくなって、妙に風通しが良くなったのか、
ちょっと涼しい風が吹き込んでいた。
「いい感じだよね、これだけ人がいないと、こんなに涼しくなるんだ」
「このままがいいよね? せめて半分くらい、いなくてもいいよね」
「本当、それいい!」
この会話は、食堂に行かずに教室で昼休みを過ごしていた女子達だった。
「そうだね、静かだし、風通し良いし、男子がいるといないでこんなに違うんだね?」
「こんな感じだと、めっちゃ集中できるもんね」
「言えてる、それいい」
「さっきから、言いたい放題だな」
そんな会話に入って来たのは、少し離れた所にいた男子。
「いい加減しろよ。ここは、お前ら女子のたまり場か?」
「うるさい! 暑苦しいのはいつも男子。昼休み位のんびりしたいでしょう?」
「それは、こっちのセリフ。いつもいつもぺちゃくちゃうるさく言ってんの、誰だよ」
そんなやり取り間に、その集団に近づいてきた二人組がいた。
「ちょっといいか? 頼みがあるんだけど……」
そう言いながら声をかけたのは、二人組の男子だった。
これからもうしばらくは、生徒同士の話です。




