表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/93

第一章 2

 今、面接スペースにいるのは、杉原・真鍋の二人の捜査員と生徒指導の住田先生・教頭先生と利沙の五人だけになった。


 そもそも、面接スペースは色々な事に使用される。

 進路指導・授業の補足・生徒からの質問に対する説明など。今回のように警察官との話し合いに使われた事はない。

 完全な個室ではないが、奥まった所にあり衝立が空間を仕切っているせいか、ここでの会話は外へもれにくい。

 意識して聞いていれば聞こえなくはないが、そうそう漏れ聞こえる事はないといっていい。

 しかし、中で話す者が、大きな声を出せば別問題ではあるが。


 そんな空間で、五人のやり取りが始まった。

 手探りで話を始めたのは、住田先生。

「私達、ここにいてもよろしいですか?」

 二人の捜査員に向かって聞いている。それには杉原が、

「構いません。別に、彼女……友延さんをいじめるつもりはありませんから。二・三質問に答えてもらいたいだけですから。友延さんも、それでいいね?」

 杉原は、利沙に向かって、確認を取るように聞いた。


 利沙もその事に、あえて触れようとはせず、

「私は、何度も言うけど、用事はない。だから、教室に戻ります」

 再度、利沙は、立ち上がろうとして右腕をつかまれ、座らされた。


「なら、この質問に答えてもらおうか? 関係ないと判断できれば、教室に戻ってもらっていいよ。昨日、学校でパソコンは使ったかどうか。それだけ、確認したい」

 そう言うと、じっと顔を利沙に向けた。

 利沙は、それに対して少し考えてから、


「昨日? なんで?」

 少し驚いて聞き返した。ちょっと驚いたのには訳がある。

 昨日なら、授業でパソコンを使用した。もし、それに問題があったとしたら……、と考えたから。

 しかし、捜査員がそんな様子を、見逃すはずもなく、そこを突いてきた。真鍋の方だ。


「昨日使った? 学校で」

「…………」

 利沙は、一瞬言葉に詰まった。そこをすかさず、


「ナ・ニ・を・し・た」


 妙に冷静な声が響いた。少しの沈黙の後、声を出したのは住田先生で、

「昨日は、授業でパソコンを使用してます。その事で何か?」

「記録は、どうなってますか? メモリー管理はされていますか?」

 との質問に、住田先生は、


「メモリーは個人で管理させています。しかし、一年生に関しては、現在作成中のもののみですから、何をお調べかは分かりませんが、目的のものはないと思われます」

 と、説明して、利沙を立たせようとした。が、そこで杉原が、


「申し訳ありませんが、友延さんと直接話させて頂けませんか。ここには、いて下さって構いませんから」

 と、先生の口を閉じさせた。そこで、杉原は、


「久しぶり、今日はたいした事はない。ある事案に関係ないと示してくれれば、教室に戻っていい」

「そんな事言っても、私は何かの容疑をかけられてるんでしょ? 無実の証明が、一番難しいんだよ」

 利沙の反論、これは正しい。すると、

「それは、良く分かっているよ。それに、私達は利沙が関わっているとは、考えていない。だから確認に来たんだ」


 利沙は、そんな事を言われても納得できる事なんてない。

 だったら、学校になんて来ないで、違うどこかですればいい。

 と、思いながら、口に出さずにいると、杉原は、


「利沙の言いたい事は分かる。違う所でいいだろ、って思ってるよな? 何も学校に来なくてもって」

 少し笑みを浮かべて言ってきた。利沙は、よほど不快感が表情にでていたらしい。


「だったら、なんで学校なんかに来たの? 私を疑ってないならここまで来る事ないでしょう。他にいくらでも聞ける所もある。わざわざ、学校まで来るって、嫌がらせか、逃げるとでも思ってなければ、来ないでしょう。違う?」

 利沙は、興奮して、一気に捲くし立てた。立ち上がった利沙を先生達がなだめて座らせた。


 そして、住田先生が、

「いったいどういった要件でしょうか? 先ほどからはっきりと聞かされていませんが。……捜査に協力させて頂きます、でも、何を調べているんですか? それが分からないと、協力出来ません」


 きっぱりと言い切ると、捜査員達も顔を見合わせて頷き、

「では、単刀直入に話します。実は、昨日ある企業の被害届を受理しました」

 今度は先生達が、顔を見合わせた。


「被害届? ですか」

 二人の先生が同時に聞いた。先生達はお互いに驚き、今度は教頭先生が、

「そ、それが、……何の関係があるんですか?」

 半分動揺しながら、なんとか口にした。それに対して、杉原は、

「はっきり関係があると分かった時点で、お話します。今はまだそこまでしか話せません。すみませんが、もう一度、友延さんと話してもよろしいですか? もしかしたら、友延さんには、心当たりがあるかもしれませんがね」


 それを見て、杉原は利沙に向き直り、

「利沙、改めて聞く、昨日はパソコンを学校で使った?」

「使ったよ。授業以外は何もしてない。それだけ。……心当たりなんて、あるわけないでしょ?」

 落ち着いて答えるが、どこか、冷たい。

「メモリーは?」

「あるよ」

 そっけない。こんなやり取りを、二人の先生がじっと見ていた。

「で、それを使った具体的な時間と、場所を教えて」

「ここのパソコン室。時間は、……。二時間目だから十時くらいだと思う。具体的には、見てみないと分からない」


「そう……」

 と、言いながら、杉原は先生に、

「パソコン室を見させていただけますか?」

「いいですよ。ただ、パソコン室が空いているか、見てきます」

 と、住田先生は席を立って行った。しばらくして戻ってきた住田先生は、

「パソコン室空いていますので、今からすぐに行けます。どうされますか?」

「では、行きましょう。利沙はメモリー持ってきて」

 と、捜査員二人は立ち上がり、利沙に声をかけた。

「メモリーは持ってる。このまま行く」


 そこで、五人はパソコン室へと向かって、職員室を後にした。


投稿順に間違いがありました。

申し訳ございません。こちらが、2話目です。

これからは気を付けます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ