表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/93

第一章 11

 目的地のビルのすぐ裏の入り口前に車を横付けし、利沙の立てた計画通りにタカシとシンがビルへ入り、ユウがビルの入り口に見張りに立っていた。


 その間、利沙は一工夫した監視カメラの映像に見入っていた。


 当然三人の目から利沙は外れるが、逃げ出せる状況になかった。

 と、いうのも、足の傷もあるが、両足をくくられ、その上から、ロープが巻かれて車に縛られた。

 動かせるのは、手と顔だけだった。

 しかも入り口に横付けされている事で、見張りのユウが、利沙の見張りを兼ねていて、どうにもならなかった。


 利沙の見ているカメラ映像は、警備会社の監視カメラの映像だが、これは、現在のもの。

 警備会社の警備員が、今見ているのは、利沙が警備会社から仕入れた過去の映像で、都合のいい所を切り貼りしたものを見せていた。


 要は、だましているわけだ。


 このビルの周辺は、ファッションビルの立ち並ぶ一角にあり、昼間は若者達で賑わっているものの、夜は一転、人通りがぱったり途絶え、静まりかえっていた。


 これも利沙の作戦の一つ。

 夜中にうろついているのは、警備員か、強盗だけだろう。


 警備員も午前一時の巡回を終えると、次の四時の巡回までこの辺りにはいなくなる。

 利沙達が現場に来たのは、午前二時。

 次の巡回まで、ぎりぎり二時間ある、それだけあれば、十分だ。


 ビルの裏口に車を横付けし、入り口の電子ロックを解除、侵入するまで時間はかからなかった。

 三人が思わず、

「早ぇ」

 と、感心したほどだった。


 警備映像に細工したとはいえ、どこまでごまかせられるか。

 それは警備員の質によるだろうが、何とかなりそうな予感が利沙にはあった。


 この警備会社は、モニター監視に、あまり人員をさいていないスケジュールになっていたからだ。

 でも、油断は禁物。


 二店舗行くとなると、時間の問題があるが、電子ロックの入り口や、ショーケースの鍵など、必要な物の場所をの利沙の指示を、ユウが携帯電話で繋いだまましていた。


 二人ともなんとか順調に作業を進めていき、午前三時を過ぎて二人を車に帰ってくるように伝えた。

 二人の持つ荷物に大量の収穫がある事は、すぐに見てとれた。


「行くぞ。ユウ、早く出せ」

 利沙は、二人が車に乗ったのを見て、裏口の入り口をロックした。

 それを見たタカシが、


「何してる。警察に連絡してるんじゃないだろうな?」

「ちがう。……入り口をロックした。それなら少しは、時間がかせげる。それに、警備システムをカメラ映像以外、元に戻しただけ。捕まりたくないでしょう?」


 利沙は少し早口で話したが、納得した様子で、

「……それで、終わったんだな?」


「終わったよ。もう、いいでしょう? 私を帰してよ。この事は絶対に話さないから」

 しかし、タカシから意外な言葉が聞かれた。


「今度は、違う店に入ろうと思う。さっきシンとも話したが、この調子なら他の店も出来そうだろ。お前さえいれば」


 ユウは、驚いたようだが、バックミラーの中で頷いていた。

 それを見て、


「だから、まだまだ、する事はたくさんあるよ。帰すわけにはいかないな」


 そう言いながら、利沙の手を後ろで縛って、嫌がる利沙の口にテープを貼った。


「変な事考えても、無駄だ。こんなに上手くいくとは思ってなかったから。これからが、楽しみだ。覚悟しとけよ。俺等はまだまだいけるぞ」


 車の中は興奮していた。

 工場に着いて、利沙は再び抱えられて、二階の部屋に連れられた。

 利沙は、手と足を縛られたまま、横になっている状態だが、足の痛みと少しずつ続いている出血で、体力に余裕がなくなっていた。


 そこへ、ユウがパンとジュースを持って現れ、利沙の体を無理やり起こし、手のロープをはずし口のテープを剥がした。

 利沙は思わず、足と口の痛みに唸った。


「いいか。これ食ったらまた縛るから、さっさと食えよ。今晩もう一回行くぞ」

 と、伝えた。

 三人は、集まって、なにやら話し合っていた。

 

 今は、午前六時。


 ここに戻ってすぐは、あまりの興奮にわいわい騒いでいたが、落ち着いてきていた。

 

 利沙は、手の紐がほどかれた事で、自分で足の紐をほどき、足をさすりながら、ここから逃げ出せないかと考えていた。


 食欲はないが、強いのどの渇きを感じ、与えられたジュースを一気に飲み干した。

 あまりにも勢いよく飲んだので、最後に少しむせた。

 その事は、三人には気づかれなかった。


 このままの状況が続くと、また同じ事をさせられる。


 そう考えた利沙は、どうしても逃げ出したかった。

 そんな事を考えているうち、ユウが、やってきて、


「なにしてる。ロープほどきやがって。逃げるつもりだろう」

 その声を聞いて、シンとタカシがやってきた。


 タカシは、利沙を押さえ込んでいるユウをどかしてから、利沙の傷を思い切り踏みにじった。


「ぎゃぁっ。……」


 利沙は、大きな声をあげた。

「なにしてんだよ」

 タカシは、強く冷たく言って、


「ロープかせ、俺が縛ってやるよ」

 タカシは、今まで以上にきつくしばった。

 利沙は、悲鳴をあげたが、それにかまう事はなかった。

 縛り終わると、利沙の前にかがみこみ、


「何度も言わせるな、お前は、俺等の言う通りにしてればいい。余計な事をするんじゃない。そうでないと、どうなっても知らんぞ」

 ナイフを利沙の目の前に突きつけた。


 利沙の口にテープが貼られ、利沙は、何もできなくなった。

 三人はその後、盗んできたものをじっくり見ながら、色々話をしていた。


 利沙は、その間も痛みに耐えた。

        


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ