* 呪 縛 * 7
姿を見せたといえば、やはり昼間の卓球場の処での不倫らしきカップル。
これは、襲うというより、ただの自縛的な霊。
この世に念を残したまま逝った二人。
もし、旅館の関係者全員がこの世の者でないにしても、これも地縛霊か浮遊霊。
旅館の関係者という位置付けがはっきりしているので、地縛霊ということは確信があった。
あくまで、私の経験からの勘だけれど、悪意なき霊と判断することが出来た。
あの僧侶も同じ。
黙って私たちの前を通りすぎたということは、私たちに気付いていないか、あるいは“悪さ”をしようとした訳ではない。
もしかしたら、実在の僧侶かもしれないし……勘であっても何であっても、実在かそうでないか判断がつかないくらい、その存在自体が薄かった。
残るは、あの温泉で鈴木先輩と一緒にいた白髪の老婆。
あの老婆だけが、私たちを襲う感じだった。
先輩を連れ出そうとした私へ、「ツレテイクナ」と……追い掛けて来た。
そして、夕食の前、フロントへ内線を入れたはずの受話器からの「ソコニイロ」の声は、あの老婆が「ツレテイクナ」と言った声と同じだった。
この旅館に着いてからの様々なことが一気に頭の中に蘇り、臭いと音と声が、私の中で老婆と完全にリンクした瞬間だった。
あの老婆によっての支配!
ということは、数々の怪現象の背景に、あの老婆の取り巻きのような霊がいないことから考えても、相当な強い霊であることは、もやは否定する余地がなかった。
鈴木先輩が無事であったのも奇跡なくらい。
ただ、私たちが、この旅行を企画してから、あの老婆は私たちを待っていたということ。
この旅館から逃れる術は!?
私などが持っている非力では、到底、敵うものではない。
森田先輩にしても、除霊が出来るくらいの人でも、“やられた”くらい。
ここから出ることが出来ないの!
「香里ちゃん!」
森田先輩の大きな声がした。
「しっかりしなさい!」
様々な思いを巡らせ、呆然となっていたであろう私を叱咤するような声で我に返った。
「すみません!でも、先輩!出ないと!」
我に返ったとは言っても、頭の中は支離滅裂状態の私。
口に出た言葉は、先輩たちがフロントへ行った目的そのもの。
「わかってるって」
呆れ顔の森田先輩。
少しだけ、笑みのような表情を浮かべていた。
呆れた笑み……だったけれど。
「これしかないか!」
突然、鈴木先輩の少し大きな声。
「なに?」
森田先輩と私の同時の言葉だった。




