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異 空 間  作者: 本城沙衣
3/78

* 迷 路 * 3


そのまま走っていれば、あの昔ながらの商店街があっていいはず。


ところが、窓の外には、また、あの「○○温泉へようこそ」の看板が。


しかも、その横には、赤い屋根のレストラン。



「ちょ、ちょっと……何、これ」



今度は車を止めることなく、鈴木先輩は小さな声で言っていた。


助手席の森田先輩を見ると、顔がこわばっているというか、青ざめているようにも見えた。



それから、何処へ行くつもりなのか、鈴木先輩は車だけは走らせているものの、前の席にいるふたりの先輩は無言が続いていた。



「私がどうにかしないと!」



理由は判らなかったけれど、ふいにそのような考えが浮かび、ふたりの先輩へ声をかけた。



「あの……さっき、次の交差点を右に曲がって、こういうことになっちゃったから、今度は左に行ってみたら……どうでしょう……ね」



「あ、そっか。その手があった!」



少し元気な声を取り戻してくれた鈴木先輩は、唯一あった交差点の手前で左へのウィンカーを出した。



“唯一あった交差点”



そう……交差点がひとつだけしかないというような単調な道だった。



普段、都会の複雑な道路を運転し慣れている鈴木先輩が、そのような道に迷うはずもなく……。


たぶん、わたしでさえ迷わない。


地図で見る限り、そんな道筋であった。




「もう、やだ!」



突然、大きな声を出したと同時に、車を急停車させた鈴木先輩。


窓の外を見ると、また「○○温泉へようこそ」の看板と、あの赤い屋根のレストランが。


時計を見ると、もう午前10時を回っていた。


計算からすると、2時間以上も彷徨っていたことになる。


しかも、狭い土地の中で……。



「ちょっと、あのレストランの人に聞いてくる!」



鈴木先輩は、例の赤い屋根をしたレストラン横にある『駐車場』と書かれた案内板に添ってそこへ車を動かし始めた。



「行くなら、ここへ止めていけばいいじゃない」



そう言った森田先輩の言葉も聞かずに、鈴木先輩は黙ったまま、その駐車場へと車を移動させていた。




「香里ちゃん……」



森田先輩が私の方を見た。



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