伍
「嘘だっ!だって、吾が輩はさっきまで…」
聖は口篭った。
私は証拠として、この町のパンフレットを渡した。
「ここ、読んでみてください」
「『ここ、椿町は鬼椿横丁という商業が盛んな町でした。また、商業だけでなく鬼や妖怪の伝説も有名です。』」
聖は頭を抱え、くしゃりと前髪を掴んだ。
「どうなっているんだ…。伝説って、仲間は…」
聖はパンフレットをもう一度読み返した。
「翠、鬼や妖怪を見たことあるかい?」
いいえ。
私は首を横に振る。
「吾が輩一人なのか?」
「聖さん、鬼?妖怪なんですか?」
「あぁ」
全世界が停止されたかと思った。
というのは冗談で、何となく予想はついていた。話の流れ的にね(苦笑)
「妖鬼椿総長赤鬼ノ聖」
これが本名らしい。何か、お経みたい。読み方は「あやかしおにつばきそうちょうせつきのひじり」
長いよね(笑)
「翠、君は人間?」
「そうです」
「吾が輩を退治するの?」
「いいえ」
聖は微笑んだ。時、ボスがやって来た。
「赤鬼ノ聖!鬼椿総長西園寺寿の名にかけて、お前を封じる!」
ボスの読み方は「おにつばきそうちょうさいおんじことぶき」
二人して何なのかな…。
「翠は下がれ」
聖は囁いた。
「刀を抜け、決着をつける」
ボスは少々興奮気味で言った。
何これ…。何が始まるの?