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壱
借金取り達の姿が見えた。「おじいちゃん、借金取り達が来た!」
「そうかい。んじゃ、あとは頼んだ」
白いあごひげを撫でながらおじいちゃんは店を出ていった。借金取り達に見付からないように裏口からそっと。
「おい、じーさんっ」
借金取り達が怒鳴り込んできた。
「祖父は今留守ですが」
借金取り達はギロリと私を睨んだ。その内の一人、借金取り達のリーダーと思われる整った顔立ちの男がポッと赤くなった。
「じ、じーさんは何処に行った?」
「分かりません」
男はますます顔を赤らめる。何だ、お前?
「お、お前はじーさんの孫か?」
「はい、そうですが」
「名前は何だ?」
「翠」
男は「なるほど」と頷く。何がなるほどなのだろうか。
「よし、翠。じーさんが帰ってくるまで俺達を待たせろ」
嫌だ。
返事をしていないのにも関わらず、借金取り達は店の奥に上がりこんだ。
「翠、じーさんが帰って来なかったらお前を人質として連れて行く」