溶けあう二人
突然ケノの目が光った。
「システムオープン。ファイナルモードに移行します。ターゲットを確認。これから融合します」
とケノは機械のような声で言った。
「なんや。ケノ。どんなボケやねん。収拾つかへんようなボケするなや。後で回収困る奴やで」
と俺は叫んだ。
ケノの身体が俺に近づく。
すると俺の胸の辺りが開き、中から神経のような糸が無数に飛び出し、ケノの光る体を包み込んだ。
「これからインストールします」
とケノは言った。
「なんやねんこれ」
と俺は叫んだ。
そして世界は真っ白になった。
気が付くとケノは消えており、
俺の胸には「最強」という漢字が刻まれていた。
「ケノ、どこ行ったんや。そして最強って何が最強やねん」
と俺は一人森の中で叫んだ。
そうして俺は一人ぼっちになった。
鬱陶しいなと思っていた。
小さいオッサンも、気が付けばもう仲間になってたのかもしれない。
「急におらんようになって、寂しいやんけ」
と俺は呟いた。
すると頭の中に声が響く。
「ほんま。モテる男はつらいわ」
ケノの声がする。
「ケノ。お前どこにおんねん」
と俺は辺りを見渡した。
「お前の胸の中や」
とケノは言った。
「何いい話にしとんねん」
と俺は言った。
「いや。ほんまやねん。お前にインストールされてん。
なんか知らんけど、そういう仕様らしいわ」
とケノは答えた。
「なんや。仕様って、出てこられへんのか」
と俺は尋ねた。
「出られへんっぽいな。まぁええわ。小さい身体不便やったし」
とケノは答えた。
「ちょっと待て。ほんならこれあれか?離れられないってやつか」
と俺は尋ねた。
「うふ。ふつつかものですが……」
とケノは言った。
「何がうふやねん。あと嫁入りか」
と俺は突っ込んだ。
「まぁ一つに溶け合うんやからな。嫁より深いわな」
とケノは照れくさそうに言った。
「まぁでも。入ったもん。しゃーないな。とりあえず街に行くか」
と俺は言い、焚き火を片付け歩き出した。
数十分ほど歩くと、村が見えてきた。
村の周りを、盗賊たちがぐるりと囲んでいる。
モヒカン、長髪、ボウズ、モヒカン、長髪、ボウズ、モヒカン、長髪、ボウズ、
極端な髪型の男たちが、舌をべろべろ出して、村に押し入ろうとしている。
「ケノ。これは助けないといけないやつやろ。俺覚醒したし、助けに行くわ」
と俺は言った。
「ちょっと待っとけ。ええから5分だけ待っとけ」
とケノは答えた。
「そんな悠長な事は言ってられない。今すぐ助けに……」
と俺は言った。
(ひゅーん ボカ……アギャー)
(ひゅーん ボカ……ギャー)
(ひゅーん ボカ……ホギャー)
盗賊たちがどんどん倒れていく。
「なぁ言うたやろ」
とケノは言った。
「これはどうなってんねん」
と俺は尋ねた。
「あれは投石機や。
なんかどこぞの勇者かなんかが、村人に投石の仕方を教えてな。
それから盗賊に襲われる村は激減してんって」
とケノは答えた。
「じゃあ冒険者や騎士が村を守るイベントとかは?」
と俺は尋ねた。
「もうそんなんないわ。時代遅れやで」
とケノは笑った。
「ほんまか……、ほんなら冒険者とか今なんの仕事してんねん」
と俺は尋ねた。
「冒険者はあれやな。盗賊より強い者とかと戦う感じやわ」
とケノは答えた。
「めっちゃ危険やん」
と俺は言った。
「そやで3Kや」
とケノは笑った。
「危険、汚い、キツイか……」
と俺は呟いた。
俺たちは、村が盗賊に襲われそうになっているのにイベントが、まったく起こらなかった村を横目に、町に向かう。
すると、神殿らしきところから、
(かーんかーんかーん)
と音が聞こえる。
ふと見ると、真っ白い服を着た男が、大きな木に人形を釘で打ち付けている。
俺が見ているのに気が付いたのか。
男がこちらにやってきた。
なんかヤバい奴見てもた、ごまかそ。
俺は瞬間的にそう判断した。
「みーたーなー」
と男は低い声で言った。
「何がやねん。何かしとったんか?
それより、俺の眼鏡知らんか?
あれないと全然見えへんねん。
なぁ探してくれへんか」
と俺は答えた。
「ホンマに見とらんかったんか」
と男は怪訝そうに見る。
「なんや、う〇こでもしとったんか?」
と俺は尋ねた。
「しとらんわ。見てへんのやったらいい」
と男は答えた。
「ちょっと待ってくれ。俺の眼鏡探してーや」
と俺は言った。
「しらんわ。じゃあな」
と男は去っていった。
「あぁ去っていったわ。助かった。アホで良かったわ」
と俺は呟いた。
「いや良かったな。あいつはヤバイ奴やで。大魔導士や。バレたら終わりやったわ」
とケノは言った。
(ぴろん、ぴろん、ぴろん、ぴろん、ぴろん、ぴろん)
なんや、なんや。
ビックリした。
また通知みたいなのが来たで。
ステータスか?
「ステータスオープン」
(ぽよん)
開いた開いた。
なになに。
名前:ミック
年齢:18歳くらい
職業:伝説級の荷物持ち
レベル:64
体力:ものすごい
知力:ものすごいアホやけど狡い
攻撃力:ものすごい
防御力:ものすごい
魔力:ものすごい
力:ものすごい
魅力:ものすごい
素早さ:ものすごい
器用さ:ものすごい
運:ものすごい
経験値:マシ
HP:ものすごい
MP:ものすごい
所持金:10G
アイテム:荷物袋、薬草、パン、水、
魔法:ハル※※ドン
----
あれなんか上がってへんか?
さっきナンボやった。
レベル64になってるやん。
ものすごいアホが
ものすごいアホやけど狡い
になっているやん。
ちょっと待てよ。
レベルが上がるって、
ピンチを切り抜けただけでもええんや。
「なんかまたレベル上がったわ」
と俺は言った。
「ほんまか。よかったな」
とケノは言った。
俺らはまた歩き出す。
しかしいくら歩いても街は見えない。
「なぁ、どこまで行ったら街に着くねん」
と俺は尋ねた。
「こっち行ったら街にはつかんで」
とケノは答えた。
「そんなん早く言うていや」
と俺は言った。
「聞かれへんかったし、まぁいいかと思って」
とケノは笑った。
「それでどっちやねん」
と俺は言った。
「えっとな。太陽の方角や」
とケノは答えた。
「なぁケノ。もしかして、街に上手くつくときと、つかんときがあるんちゃうか?」
と俺は尋ねた。
「なんで知ってんねん。半々や」
とケノは答えた。
「お前太陽動くの知ってるか?」
と俺は尋ねた。
「そんなもん。知っとるわ」
とケノは言った。
「ほんならな。朝と夕方では太陽のある方向違うやろ」
と俺は尋ねた。
「せやな。違うやろな。ようわからんけど」
とケノは言った。
「あかん……、お前が間違ってるのはわかるけど、なんで間違ってるかが説明できへんわ」
と俺は諦めた。




